ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#060

2019-03-23 12:00:16 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第60話『新宿に朝は来るけれど』

(1973.9.7.OA/脚本=鴨井達比古/監督=竹林 進)

ある朝、新宿公園で中年男の刺殺死体が発見されます。殺されたのは防災対策研究所の生真面目な学者=中原(大塚国夫)。

そのYシャツに付着した口紅の持ち主を探るべく、ジーパン(松田優作)とシンコ(関根恵子)がカップルを装い、中原がよく呑みに行ってたバーに潜入。そこでヤクザ達に連れ去られそうになったホステス=恵美(桃井かおり)を、無我夢中で助けるジーパン。

そんなジーパンを自分達の「仲間」だと直感した恵美は、あっけらかんと言うのでした。

「人、殺しちゃった」

人懐っこい恵美と瞬時に意気投合し、一緒に呑み歩きながら彼女の無邪気さに惹かれていくジーパン。

「こんな子が、人を殺すだろうか? こんな子が……」

ただの冗談であって欲しい。そんなジーパンの願いも虚しく、死体に付着した口紅は恵美の物である事が立証されてしまいます。

将来の事など何も考えず、とにかく今この時を楽しんで生きようとする恵美は、夜の新宿をウロつく若者たちを象徴するような存在で、ジーパンもまたそんな若者の1人であり、だから「仲間」だと感じたんでしょう。

一方、防災対策研究所でずっと地震を研究して来た中原は、いずれ首都を襲うであろう直下型の大地震=東京の破滅を恐れるあまりに、現実から逃避しようとしてた。

そんな時に恵美と出逢い、愛し合い、全てを忘れ、楽しい数日間を過ごした中原は、ふとこう言ったのです。

「こんな想いのまま死にたい」

だけど彼には仕事があり、家族もいる。後ろ髪を引かれながら現実社会に帰って行こうとする中原の胸に、恵美は店から持ち出したナイフを突き刺したのでした。

「どうして? 新宿って夜はあんなに怖いのに、朝はどうしてこんなに優しいの?」

早朝の新宿公園でそう呟く恵美の横顔を、黙って見つめるジーパン。やがて同僚たちが歩み寄り、彼女の腕に手錠を掛けた瞬間、ジーパンは無我夢中で走り出し、子供みたいに泣き叫ぶのでした。

このエピソードを初めて(夕方の再放送で)観た時、私はまだ中学生のガキンチョゆえにピンと来ませんでした。だけど大人になって社会に出てあれこれ経験し、いつしか「破滅です」が口癖になっちゃった今の私には、中原さんの耐え難い絶望感と、それゆえに恵美みたいな女の子に溺れちゃう気持ちが、ホント痛いほどよく解ります。

ジーパンにもきっと、同じような資質があるんですよね。拳銃を持った犯人に丸腰で突っ込んで行くのって、言ってみりゃ自暴自棄そのものです。

そして、ただ刹那的に生きる若い仲間達とは違った魅力を中原さんに感じ、ひたすら楽しい2人の「今」、その時間を永遠に止めようとした恵美の気持ちも、解らなくはない。

でも結局、その為に選んだ手段こそが彼女の楽しい「今」を永遠に奪っちゃうワケで、先の事はいっさい考えない生き方が招いた悲劇とも言えましょう。

1973年当時は『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』等の大ヒットで終末論、つまり「破滅」が一種のブームで、それが色濃く反映されたエピソードなワケだけど、いま現在の方がより胸に突き刺さって来ますよね。

こんなこと言うと不快に感じる方もおられるでしょうが、今やこの世に夢も希望も持てなくなった私自身、恵美みたいな女の子に刺されて死ぬなら本望かも?なんて、ちょっと思ったりします。

それはともかく、当時23歳の桃井かおりさんがハマり役で、本当に素晴らしいです。

デビューして2年、既に映画主演で注目を浴びてたけど、文学座の1期後輩で呑み仲間でもある優作さんの為にゲスト出演されました。(ついでに、恵美のフーテン仲間達の中に無名時代の阿藤 快さんの姿も見られます)

桃井さんの儚げな存在感と自然体の演技、息の合った優作さんとのコラボレーション、尚且つクォリティーの高い脚本と演出で、『太陽にほえろ!』屈指の名エピソードの1本に挙げられるかと思います。

切ない内容ながら2回に及ぶジーパンvsヤクザ軍団の立ち回り、更にショベルカーで敵アジトを丸ごと破壊しちゃう等、マカロニ時代よりもスケールアップされたアクションシーンも見られます。

また、中原さんが愛したレコードとして登場し、長さん(下川辰平)に「何だこりゃ?」と言わしめたフォークソング『プカプカ』は知る人ぞ知る名曲で、桃井かおりさんや福山雅治さん等にカヴァーされてます。

桃井さんは後に第199話『女相続人』にもゲスト出演、やはり文学座の後輩であるボン=宮内 淳さんと共演される事になります。
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『太陽にほえろ!』#053

2019-03-23 00:00:08 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第53話『ジーパン刑事登場!』

(1973.7.20.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=高瀬昌弘)

マカロニ(萩原健一)の衝撃的な殉職を経て、いよいよ2代目新人刑事=ジーパン(松田優作)が登場します。

前夜、刑事昇格を祝して仲間と呑んだくれ、気がつけば無一文。無銭飲食でぶち込まれ、留置場から初出勤という登場シーンこそコミカルだけど、事件の内容は鎌田脚本らしいハードなものになってます。

何しろセレブ女性ばかりを狙った連続殺人で、怨恨や金目当て等の明確な動機が無く、ただ金持ち連中への漠然とした妬みや、美しい女性への歪んだ性愛をこじらせた、サイコパスな青年(谷岡行二)と新米刑事が対決するワケです。その犯行に使われる凶器が、警官から強奪した拳銃なんですよね。

ジーパンは、警官なのに拳銃を所持せずに撃ち殺され、殉職扱いにもされなかった亡き父親への想いから、自分も拳銃を持とうとしない。

母子家庭となって苦労を強いられたジーパンは、優雅に暮らす金持ち連中を憎む気持ちは理解しながらも、拳銃を持って強くなったつもりでいる犯人が許せない。

一方、マカロニが殺された事でナーバスになり、拳銃に弾丸を込めない主義を返上したゴリさん(竜 雷太)は、銃を持った犯人に丸腰で立ち向かうジーパンの、文字通りの無鉄砲さが許せない。

だけど、怒りのゴリパンチを浴びようが頑なに拳銃所持を拒否し、あくまで素手で犯人と対峙し続けるジーパンの姿を見て、再び自分の拳銃から弾丸を抜き取るんですよね。

あの当時の刑事ドラマで動機なき殺人を描いた先見性といい、新米刑事に影響されて先輩刑事側の意識が変わっていく逆転の発想といい、鎌田敏夫さんの非凡な才能が光る一編です。

さて、本作は新シーズンの幕開けって事もあり、女優陣の顔ぶれがとっても華やかです。

まず、青木英美さんが初代マスコットガール=クミちゃんこと永井久美としてレギュラー入りし、早速ミニスカートで自慢の美脚を披露してくれます。

「スカートが短すぎる」ってボス(石原裕次郎)から注意されても「(むさ苦しい刑事部屋で)せめて眼を楽しませてあげようと思って」なんてケロッと言っちゃう、明るく奔放なキャラで人気を集める事になります。

そんな青木さんの加入は、シンコ=関根恵子さんが映画出演のため登場回数が減っちゃう事の穴埋めとも思われますが、今回はシンコもしっかり登場し、クミちゃんに負けじとテニスウェアでHなナマ脚を披露してくれます。

更にもう1人、熟女が登場しますw ジーパンの母親=柴田たき役で、大ベテランの菅井きんさんがセミレギュラー入り。番組終盤まで同役でたびたび『太陽』に登場される事になります。

そしてそして、連続殺人の被害者たちの顔ぶれが、これまた豪華なんです。

まず1人目が『ウルトラセブン』のアンヌ隊員役や『プレイガール』等でも知られる、ひし美ゆり子さん(当時26歳)。

そして2人目がTVドラマ初出演と思われる、デビューしてまだ間もない秋吉久美子さん(当時19歳)。

お二人とも登場してすぐに殺されちゃうけど、ひし美さんはヘソ出しルックの超セクシーなお姿で、秋吉さんはまだあどけない超キュートなお姿で、新人俳優=松田優作の記念すべきデビュー作に花を添えられてます。

『太陽にほえろ!』の長い歴史の中で、これほど華やかな顔ぶれが揃ったのは空前絶後かも知れません。

以降、2年目に突入した『太陽』は視聴率が30%を超える大人気番組に成長し、ゲストの知名度に頼る必要が無くなったせいか、マカロニ時代に比べると有名女優のゲスト出演が激減しちゃいます。

なので、この「女優列伝」もどんどんペースアップして行く事になりそうですw
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする