ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『はだかの刑事』1993

2019-03-19 12:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY




 
1988年の春にスタートしたテレビ朝日系列の『はぐれ刑事純情派』がヒット&ロングランした事により、刑事ドラマ業界はにわかに人情路線へと傾いて行きました。

それまでの主流だったアクション路線が視聴者に飽きられてしまった事と、バブル崩壊による製作費の削減が、その傾向に拍車をかけたものと思われます。

だけど、結局はどれも成功しませんでした。石原プロが『ゴリラ/警視庁捜査第8班』をアクションから人情へと路線変更し、続けて『代表取締役刑事』『愛しの刑事』と押し進めても、視聴者を呼び戻す事は出来ませんでした。

そもそも『はぐれ刑事純情派』が当たった理由は、主演=藤田まことの魅力と実力、そしてターゲットを年輩層に絞った戦略の勝利であって、別に世間が人情路線の刑事ドラマを求めてたワケじゃ無いんですよね。

当時の舘ひろしファン(若い世代)は人情ドラマなんか観たくないし、人情ドラマのファン(年輩層)は舘ひろしに興味が持てない。皆がそうとは限らないにせよ、企画としては見当外れだったと言わざるを得ません。

じゃあ、松方弘樹さんならどうだろう? 好評だった『刑事貴族』シリーズの視聴者(若い世代)と、時代劇や任侠映画ファン(年輩層)の両方を呼び込めるんじゃないか?

……っていう発想から生まれたのかどうか分からないけど、日本テレビ系列・金曜夜8時『刑事貴族3』の後番組は、松方弘樹の連続主演による人情刑事ドラマになりました。東映の制作で1993年4月から9月までの放映、全30回でした。

先に結果を言えば、やっぱりコケたみたいですw 視聴率は振るわず、テコ入れとして今度はアクション路線に戻って行くという、前述の『ゴリラ』とは真逆の経過を辿る事になりました。それなら最初から『刑事貴族4』にすれば良かったのに!

松方さんはともかくとして、もう1人の主役が世良公則さんですからね。舘さんと同様、世良さんの人情刑事なんか誰も見たくない。だけど舘ひろし→郷ひろみ→水谷 豊→世良公則っていう『刑事貴族』の流れなら、少なくとも私は食いつきました。

まぁしかし、アクション路線に戻ったとは言え『刑事貴族』レベルで銃を撃ちまくったり、カーアクションを見せたりするだけの予算は、残念ながら無かったのでしょう。だから『刑事貴族3』は予定より早く終わっちゃったワケだし。

とにかく人情路線としてスタートした『はだかの刑事』に私は興味が持てず、当時は完全にスルーしてました。観たのは近年CATVで放映されたのを、ほんの2~3話だけ。

私が観たのはちょうど1クールが過ぎてアクション路線にシフトしつつあった、中期のエピソード。これより前はもっと地味な人情路線で、これより後は爆破シーンもある派手めのアクションになるんだそうです。だから言わば過渡期なんだけど、私にとってはちょうど良いバランスだったかも知れません。

率直に言って、石原プロの『代表取締役刑事』『愛しの刑事』より、この『はだかの刑事』の方がずっと楽しめました。

理由は明白です。人情路線の刑事物なんて、設定の違いは多少あれども、やる事はどの番組も一緒ですから、何が見所になるかと言えば「キャストの魅力」に尽きると私は思います。

『はだかの刑事』のレギュラー陣は、松方弘樹&世良公則を筆頭に、橋爪 功、室井 滋、七瀬なつみ、勝村政信、野々村真、そして樹木希林と、地味ではあるけど以後も息長く活躍される実力派揃いです。

一方、石原プロの2作品は、確かな演技力を持ったレギュラーキャストが(言っちゃ悪いけど)ほとんどいませんでした。この差はやっぱり大きい。めちゃくちゃ大きいですよ。

やってる事はだいたい同じでも、『はだかの刑事』の場合はキャスト陣の演技を観てるだけで惹き込まれます。ほんと当たり前の事だけど、ドラマは良い芝居があってナンボなんやなあって、あらためて認識させられます。

石原プロは「演技力なんか無い方がスターは大成する」なんていう昭和の都市伝説を、本気で信じてたんでしょうか? 意図的に演技力の弱い人ばかりキャスティングしてましたよね。ひたすらドンパチやってる内はそれで通用しても、人情ドラマとなるとそうはいきません。

なんだか最近、石原プロの悪口ばっかり書いてる気がするけどw、これも愛着があればこそ。無視出来ないから色々言いたくなっちゃうワケです。今さら言っても仕方がないんだけど。

一方、東映制作の『はだかの刑事』は、女性刑事コンビ=室井さん&七瀬さんの掛け合いや、勝村さん&野々村さんのヘタレぶり、そして松方さんがうだつの上がらないヒラ刑事役というミスマッチぶりが実に楽しいです。それも演じる俳優さん達の力量があればこそ。

あと、なんといっても世良さんの銃さばき(みんなニューナンブを使ってるのに世良さんだけガバメントw)がやっぱり絶品で、しつこいようだけど『刑事貴族4』として観たかったなあ……

私は見逃しましたが、日本の刑事ドラマとしては極めて珍しい「女性刑事の殉職」が描かれた事もトピックかと思います。第20話で室井滋さんが刺殺されました。

代わって翌週から登場するのが布施 博さんでw、ますます「だったら最初から『刑事貴族4』にしてよ!」って思わずにはいられません。

この『はだかの刑事』終了をもって、1972年スタートの『太陽にほえろ!』から実に21年間続いて来た、日テレ金曜夜8時の刑事ドラマ枠も消滅する運びとなりました。同時にアクション路線の刑事ドラマも、引いてはフィルム撮影によるTVドラマ自体も、いよいよ絶滅の時が近づきます。

日本のテレビ業界は熱い青春期を終え、良く言えば円熟、悪く言えば老化の一途を突き進む事になるのでした。
 
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『愛しの刑事』1992~1993

2019-03-19 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1992年10月から翌年3月まで、テレビ朝日系列の日曜夜8時枠で全20話が放映された、今のところ石原プロモーション最後の連続ドラマです。

前作『代表取締役刑事』にはまだ、舘ひろしさんが初めて役職付き(係長)の刑事を演じられた事に新鮮味があったし、市川森一さんの参加(脚本)や豪華ゲストの出演といった見所もありました。

それが今回、舘さんはまたヒラ刑事に逆戻りなんだけど、スタイルも言動も(いつもの事だけど)ちっとも変わってない。役作りはYシャツを色付きに変えた程度w

渡 哲也さんと谷川 竜さんも『ゴリラ』『代表~』とほとんど同じポジションとキャラクターで、前回も前々回もパッとしなかった谷川さんは、今回もやっぱりパッとしませんw

ただし他のメンバーは総入れ替えとなり、舘さんの相棒ポジションに宅麻 伸、紅一点は懐かしの高樹 澪、お茶汲み婦警にボインボヨヨ~ンな細川ふみえ、若手ツッパリ刑事に坂上 忍、コメディーリリーフ役の係長に井上 順、といった布陣。

前作よりちょっと華やかになった気はするけど、やっぱり「舘ひろしとその他の皆さん」っていう構図は変わってないです。つまり今回も、次期社長に就任予定だった舘さんをとにかく全面に押し出し、俳優としての格を上げることを目的とした、あくまで石原プロによる石原プロの為の番組づくり。

オープニング・テーマがエンリオ・モリコーネ作曲による『奴らを高く吊るせ』をカヴァーしたもので渋いんだけど、ドラマの中身はほんとフツーの地味な人情刑事物。

舘さんにフツーの刑事というか、人間らしいキャラクターをやらせる事にこそ意味があったんでしょう。ついでに谷川さんをパッとさせるのとw

だから、刑事物というジャンルに石原プロが特別な愛着を持ってたワケじゃなく、ただ視聴率を取り易いパッケージをチョイスしただけの話なんだろうと思います。前作で使った車両や小道具を使い回せるぶん制作費も削れますからね。

谷川さんはついに最後までパッとしなかったけど、舘さんはやがてアクション以外のフィールドでも活躍されるようになりますから、一応やった甲斐はありました。

もはや「また1発、当ててやろうぜ!」みたいな気概は無く、舘ひろしが普通の人間も演じられる事を世間にアピール出来さえすればOKベイビー、って事なんでしょう。

にしても前作とあんまり一緒じゃマズいから、舘さんに「相棒」を設ける事によって新しさを出そうとした。よもや、性懲りもなく『あぶない刑事』の二番煎じを狙ったワケではなかろうと思います。

しかし宅麻伸さんは……別に悪くは無いんだけど、強烈すぎる個性を持つ舘さんの相棒役としては、どう見ても弱いですよね。フツーじゃない二枚目の横にフツーの二枚目が立っても埋没するしかありません。それなら神田正輝さんの方がまだバランスがとれてました。

舘さんに相棒をつけるのだけは、もうホントやめた方が良いです。やっぱり柴田恭兵さんはタダモンじゃなかったって事です。

後はまぁ、井上順さんが浮きまくってましたねw 自分が笑いを取らなきゃって事で一生懸命やられてるんだけど、いかんせん’60~’70年代の人ですから、舘さんのスタイリッシュさとは水と油だし、渡さんの浪花節とも釣り合わない。

若手刑事を演じた坂上忍さんが、今になってバラエティー番組の世界でブレイクされてるのには驚きました。「毒舌キャラ」がウケてるんだそうで、俳優としては複雑な心境かも知れないけど、まぁどーでもいいですw

高樹澪さんは色っぽかったですね。アミューズ製作でサザンオールスターズが音楽を担当した映画『モーニングムーンは粗雑に』のヒロイン役でデビューされ、『愛しの刑事』の後は『ウルトラマンティガ』でシリーズ初の女性隊長役もやられてました。

だけど顔面麻痺を患って一時期は失踪状態になり、清掃のアルバイトをして暮らした時期もあったそうです。周囲の励ましを受けて一念発起、手術を受け、リハビリを経て近年復帰を果たされました。

そして細川ふみえさんのオッパイにはインパクトがありました。世間で「巨乳」や「爆乳」という形容詞が使われるようになったのは、細川さんの登場がキッカケだったように私は記憶します。『愛しの刑事』とは何の関係もありませんw

なお『代表取締役刑事』と『愛しの刑事』の間には、東宝制作による『真夏の刑事』全20話が同じ枠で放映されました。時任三郎&別所哲也のコンビによる人情系ドラマで、藤田朋子、柳沢慎吾、阿藤 快、矢崎 滋といったメンツが同僚刑事を演じ、課長が中条静夫、署長が布施 博と、他局のヒット作にあやかろうとするキャスティングが裏目に出たのか、これもヒットしませんでした。

'92年は他に、セントラルアーツ制作によるドタバタコメディ『俺たちルーキーコップ』(萩原聖人、鷲尾いさ子、仲村トオルetc)、鎌田敏夫脚本による異色作『眠れない夜をかぞえて』(田中美佐子、三田村邦彦、笑福亭鶴瓶etc) といった刑事ドラマ(いずれもTBS系列)が放映されてました。
 
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