1971年の10月から1972年の元旦まで、NET(現テレビ朝日)系列の土曜夜8時枠で全13話が放映された、なんと小林 旭 主演によるアクションドラマ。
制作はNET&東映、音楽は山下毅雄。こんな番組があったことを私はつい最近まで知りませんでした。
警視総監によって選抜された4人(スタート時は5人)の秘密捜査官たち=通称ターゲットメンが、犯罪組織に潜入してテロ事件を未然に防ぐ、刑事物というよりはスパイ活劇に近い内容で、大ヒット作『キイハンター』(TBS系列) の影響を受けた数ある番組の中の1本。
その『キイハンター』が同じ土曜日の夜9時枠でまだ放映中で、明らかにその視聴者層を狙っての企画なんでしょうけど、やはり裏番組(ドリフ)が強すぎたせいか僅か1クールで終了、つい最近まで再放送もソフト化もされない幻の作品になってました。
ターゲットメンに扮するのは小林 旭を筆頭に、上月 晃(初期3話のみの特別出演)、若林 豪、奈美悦子、大石悟郎。悪くないメンバーだけどドリフに対抗するには渋すぎたかも知れませんw
ストーリーはあって無いようなもんで『キイハンター』に日活無国籍アクションのムードをミックスさせた西部劇テイスト。本作が終了した'72年の夏にスタートする『太陽にほえろ!』との共通点は「日活出身のアクション大スターが主役である」ことの1点のみ。
ただし基本は電話番だった『太陽~』の石原裕次郎さんに対して、こちらの小林旭さんはかなり身体を張ったアクションを毎回見せてくれます。初回では走行中のトラックにしがみつき、後の『レイダース/失われたアーク』におけるハリソン・フォードを彷彿させるハードアクション(元ネタはジョン・フォード監督の『駅馬車』)も披露してくれました。
キャラクターの掘り下げは一切ありません。何しろ小林旭さんは拳銃でビリヤードの球を撃って百発百中でゲームに勝つというw、あり得なすぎるスーパーマンとして描かれてます。
とにかくミッションを遂行するターゲットメンの活躍を華麗に描くこと、それのみに徹したストーリーに感動の涙は1滴も流れませんw 石原プロの『ゴリラ/警視庁捜査第8班』をさんざん「ドラマが無さすぎる」って批判しましたけど、本来アクションドラマってのはそういうもんなのかも知れません。
ただし、この時代の番組はドンパチ(銃撃戦や爆破)よりも肉体アクションに力点が置かれており、ドラマ性は薄くても見応えがあります。その違いは(少なくとも私にとっては)かなり大きい。
しかもTVドラマへの出演が極端に少なく、たまに出ても時代劇が中心だった小林旭さんの、これは唯一の現代アクションドラマですから、一見の価値は絶対あります。
全身全霊でカッコつけてる旭さんのチョー昭和的な二枚目演技が、日活映画をあまり観て来なかった私にはかえって新鮮で、正直めっちゃ笑えますw
そんな旭さんの番組が短命に終わり、あくまで自然体の裕次郎さんや格好悪さをカッコよく見せちゃうショーケンさんによる『太陽にほえろ!』が大ヒットしたのは、新たな時代の到来(カッコ良さの定義と演技スタイルの大変革)を象徴してるように思います。
観る機会はなかなか無いかも知れませんが、もし万が一あれば一度試しにご覧あれ。若き若林豪さんも無論カッコいいし、まだ初々しい奈美悦子さんも可愛くて、萌えますw