1990年の春から秋まで、テレビ朝日系列の日曜夜8時枠で全23話が放映された刑事ドラマ。東宝の制作で、メインライター(脚本監修)が小川 英さん、音楽が大野克夫さんと、テレ朝なのにやたら『太陽にほえろ!』(日テレ) 濃度が高い作品だったりします。
『太陽~』の後継番組『NEWジャングル』で新米刑事を演じた江口洋介さんがレギュラー(しかも第10話で殉職!)だし、その『NEWジャングル』で江口さんの先輩刑事だった(それ以前に『太陽~』でDJ刑事だった)西山浩司さんが第2話のゲストだったりもします。
更に、同じくレギュラーの中村繁之さんと、第11話から加入する小西博之さんが揃って後の『太陽~』平成復活版スペシャルで七曲署メンバーになるのも、たぶん偶然じゃないだろうと思います。もしかすると女性刑事が榊原郁恵さんなのも『太陽~』のラガー刑事=渡辺 徹さんと結婚されたのと無関係ではないかも?
とにかく、それら全てが偶然であったとしても『太陽』フリークとしては無視できない作品です。
なのに、本放映当時の私は完全スルーしてましたw まず『ザ・刑事』っていうタイトルが『走れ!熱血刑事』並みにダサいし、何よりVTR撮影による安っぽい映像が私にとっては致命的。(当時のアクションドラマはまだフィルム撮影が主流でした)
また、水谷さんと江口さん以外のメンバー達につきまとう「バラエティータレント」のイメージも影響したかと思います。水谷さんとW主演を張る片岡鶴太郎さんは、既に俳優として映画『異人たちとの夏』等で高評価を得ていたけど、私にとっては『オレたちひょうきん族』で激アツおでんを頬張る姿こそが鶴太郎さんですからw
あらためてレギュラーメンバーを列挙すると、六本木警察署・刑事課捜査一係の刑事・矢島慎吾(水谷 豊)、田中秀行(片岡鶴太郎)、藤田かおる(榊原郁恵)、坂上圭介(江口洋介)、津村 純(中村繁之)、土屋拓矢(吉村明宏)、坂上の後任=中西 剛(小西博之)、そして係長の篠丸(小林克也)、鑑識係の丹内(鶴見辰吾)、少年係の榎本(中村あずさ)、署長の寿(丹波哲郎)といった面々。
こうして振り返ると味わい深いキャスティングではあるけど、当時は「旬の過ぎたタレントの寄せ集め」みたいに感じちゃったんですよね。特に吉村明宏さんなど「和田アキ子の腰巾着」的なイメージしか無かったし。
そんなワケでほとんど無視してた番組だけど、今あらためて観ると「もし『太陽にほえろ!』がずっと続いてたら、こんな感じになったかも?」っていう印象です。
ニヒルな一匹狼キャラの矢島(水谷さん)は『太陽~』の山さんやスコッチの初期を彷彿させるし、そんな矢島といちいちぶつかる田中(鶴太郎さん)はゴリさんみたいだし、藤田(郁恵さん)は子持ちのマミーだし(容姿も長谷直美さんにちょっと似てる)、新米刑事(中村さん)の名前はジュンだし。その新米刑事の暴走が第1話で描かれたのもすこぶる『太陽』的です。
なにしろ脚本=小川さん、音楽=大野さんですから、創り手は明らかに新『太陽にほえろ!』テレ朝バージョンを狙っておられたのでしょう。『太陽~』最後の新人刑事が西山浩司さんだったことを思えば、バラエティー寄りのキャスティングも「さもありなん」って思えます。
アクション描写は大人しくてすこぶる物足りないんだけど、『太陽』末期もアクションは減少傾向にありましたから、あのまま続けばちょうどこれ位の案配になってたかも知れません。
そして、事件の内容よりも刑事の心情描写に重きを置いた作劇が何より『太陽』的で、私は観てて落ち着くんですよね。やっぱり、こういうのが本当の意味で「刑事ドラマ」なんだよなあって。もしかすると『ザ・刑事』っていうタイトルには、そういう意味がこめられてたのかも知れません。
そんなワケで、私みたいに『太陽にほえろ!』の残り香を少しでも嗅ぎたいマニアには、一見の価値ありのドラマかと思います。
また『熱中時代 刑事編』('79)で熱血新米刑事を演じた水谷さんが、日テレ金8刑事ドラマ『ハロー!グッバイ』('89)で一匹狼キャラを開拓し、後に『刑事貴族2~3』('91~'92) で水谷豊の刑事キャラ集大成「本城慎太郎」を演じるに至る、その橋渡し的な作品として観ても面白いかも知れません。
なお、水谷さんの『刑事貴族2』がスタートしたのと同じ年に、片岡鶴太郎さんはテレ朝の日曜夜8時枠で大映テレビ制作による刑事ドラマ『ララバイ刑事'91』に主演。こちらも後に続編『ララバイ刑事'93』が創られました。
女性上司の有森也実さんと鶴太郎さんの恋愛を描いた異色作だけど、署長役はまたしても丹波哲郎さんw 『'93』には中村あずささん、そして我らがゴリ=竜 雷太さんも課長役で登場されてます。