☆第47話『俺の拳銃を返せ!』
(1973.6.8.OA/脚本=小川 英&武末 勝/監督=土屋統吾郎)
女優さんのゲスト回じゃないんだけど、リクエストを頂いたのでレビューする事にしました。
ある日、ゴリさん(竜 雷太)と一緒に聞き込みに廻ってたマカロニ(萩原健一)が尿意を催し、立ちションしようとするのをゴリさんに止められw、仕方なく最寄りの派出所へトイレを借りに行くんだけど、その帰りに何者かに襲撃され、拳銃を奪われてしまいます。
どうやらマカロニにとって立ちションは鬼門らしく、この約1ヶ月後に彼は深夜の工事現場で立ちションを決行し、その直後に……
それはともかく、道端で倒れてたのを通行人に発見され、意識を取り戻したマカロニは、ズボンに突っ込んであった拳銃が無くなってるのに気づき、思わずこう叫びます。
「ヤバい!」
ヤバいっていう言葉は、いつ頃から使われるようになったんでしょう? 私はもうちょっと時代が進んでからだと思い込んでました。最近は(と言っても10年以上前から)ヤバいの意味が変わって来てるし、言葉ってのはホントまるで生きものです。
それにしても、拳銃を携帯するのにホルスターを使わないマカロニがまた、なにげに最先端?(後年、アメリカ映画『リーサル・ウェポン』シリーズでもメル・ギブソンがベレッタをいつもズボンに直接差し込んでました。メルの場合は0.01秒でも早く銃を抜く為と思われますが、マカロニはオシャレ目的?)
とにかく拳銃を奪われるというのは警察官にとって最悪の不祥事。「あいつが参るだけで済みゃいいんだがね」っていう山さん(露口 茂)の言葉通り、その拳銃が犯罪に使われたら取り返しがつきません。
いてもたってもいられなくなったマカロニは病院を脱け出し、停めてあった自転車を勝手に拝借してw、やみくもに犯人を探し回るのでした。
立ちション(今回は未遂だけど)だけじゃ飽き足らず今度は自転車泥棒と、軽犯罪やらかし放題w まだおおらかな時代だったのと、当時はあくまで若者向け番組だったから(視聴率が30%を越える前で、ファミリー層をまだ意識してないから)堅物の岡田プロデューサーも黙認されてたのでしょう。
さて、山さんの悪い予感が的中し、マカロニの拳銃で2人の中年サラリーマンが相次いで撃たれてしまいます。目撃証言により犯人は佐原(森本レオ)という、やはり平凡なサラリーマンであることが判明。佐原は犯行に及ぶ直前、被害者に「思い出せ。御影山で何があったか」と言っていたらしい。
被害者たちは3年前に御影山でハイキングしており、そのとき一緒にいた戸倉という男は転勤先のグアムで死亡しており、残る登山仲間は信用金庫役員の井口(柳生 博)のみ。
西へ東へと奔走したマカロニがようやく井口の居所に辿り着いたのとほぼ同時に、佐原も井口を殺しに現れます。佐原に問い詰められた井口は、3年前のハイキングで酒を呑み、ロッジの場所を示す道標にみんなで石を投げて遊んだことを思い出します。それは酔っ払った末の単なるイタズラだったのですが……
「イタズラだと? その為に恵子は死んだんだっ!」
あの日、彼らの投石により道標の方角が狂ってしまい、ロッジで働いてる佐原に会いに来た恋人の恵子がそれで遭難し、命を落としてしまった。その日、佐原は恵子にプロポーズするつもりだったのでした。
「イタズラ?……酔っぱらいのイタズラでどうして恵子が死ななきゃいけないんだよっ!?」
恵子が遭難した原因を知った佐原は、2年かけて酔っ払いたちの正体を突き止め、まずグアムにいる戸倉を訪ね、謝罪を要求したのですが……
「訴えるなら訴えてみろ。証明されたところで、たかが軽犯罪だ」
戸倉のその言葉を聞いて、佐原は投石したメンバー全員を殺す決意をしたのでした。確かに、彼らのやったこと自体はマカロニの立ちションや自転車泥棒と大して変わりません。
「撃つんなら撃ってみろよ。アタマに来てんのは俺も同じだ。……あんたの気持ちは解るよ。でもそいつは俺のハジキなんだ。俺だって、ただの災難で済むワケねえんだよ」
新米だった頃のマカロニなら、佐原に同情して「撃っちゃえよ」って言ったかも知れません。でも、彼は刑事として成長してしまった。例えどんな理由があろうとも殺人だけは阻止しなくちゃいけません。
「やめてくれよ、刑事さん……俺にはもうこれしか無いんだよ。どうしても邪魔するんなら撃つ。あんたを殺す!」
銃口を向けられてもマカロニはひるまず、井口をかばいながら佐原に歩み寄って行きます。
結局、佐原は引金を引いちゃうんだけど、幸い素人なもんで弾丸はマカロニの頬をかすめただけ。駆けつけたゴリさんと長さん(下川辰平)に彼は取り押さえられるのでした。
で、佐原が手錠を掛けられたのを確認したとたん、さっきまで土下座して命乞いしてた井口が喚き始めます。
「冗談じゃないよまったく! こんな事で殺されてたまるもんか! あんなヤツは二度と社会に出さないで下さいよっ!」
マカロニは、最後に駆けつけたボス(石原裕次郎)の目の前で、井口の顔面を殴りつけます。それをボスは止めもせず咎めもせず、むしろ「よくやった」と言わんばかりの度量でただ見守るだけ。
呆気に取られて座り込む被害者・井口をひとり残し、刑事たちは黙って加害者・佐原の肩を抱き、去っていくのでした。
2年目(ジーパン期)からラストはボス単独か、あるいはその回の主役刑事とのツーショット&ストップモーションで締めるのが定番化して行きますが、マカロニ期はまだこういうロングショットで、余韻を残したまま終わるパターンが多かったです。
ボスとのコミカルなやり取りで締めるのも安心感があって良いんだけど、こういうほろ苦いストーリーにはやっぱ渋いエンディングの方が効果的ですよね。
刑事が拳銃を奪われる話も、被害者遺族による復讐を阻止する話も刑事ドラマの定番だけど、『太陽にほえろ!』で描かれたのはこれが最初だったかと思います。それだけに強く印象に残ってます。
森本レオさんがやっぱり良かったですね。巧いし、ごく普通の人が大きな理不尽に遭遇し、人生を狂わせてしまう哀しさが痛いほど伝わって来ます。
そんな犯人に同情しながらも冷静に任務を遂行するマカロニの成長ぶりがまた、間近に迫った「最期」への伏線みたいに思えて、何とも言えない気持ちにさせてくれます。
成長しても立ちションだけは我慢できないマカロニの若さというか、気取りの無さが悲劇を呼んでしまうという…… 別に立ちションしたから殺されるワケじゃないんだけど。
セクシーショットは言うまでもなくシンコ=関根恵子(高橋惠子)さん。今回のシンコはセット(刑事部屋と病室)のみの出番でしたが、拳銃を奪われたマカロニの心情を想って胸を痛める姿がいじらしく、萌えますw