はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
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癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

無駄な医療

2014年09月21日 | 医学




アメリカのABIM財団が中心となり、全米71の医学会が無駄な医療を順次公表していく計画で、
CHOOSING WISELY ( 賢い選択 ) と名付けられたキャンペーンです。
すでに50の学会が無駄な医療を公表しており、250もの " 非推奨の医療 " が名指しされています。
この本はその中から日本にも関わりが深いものを100項目ほど抽出して紹介したものです。

日本には1万台ものCT装置があり、1年間での検査回数は4千万件に達するそうです。
これは、とんでもなく異常な数字でしょう。
私も以前から脳神経科医が毎年のように患者の頭部CTを撮影することに疑問を感じていました。
小さな梗塞があることを指摘し ( 50歳以上のほとんどの人に認められます。 ) 、患者を不安がらせて
毎年恒例の定期検査に持ち込むのです。
そもそも、検査とは、医者が何かを疑い、何かを期待して行うものなのですが、1年前のCTで小さな梗塞しかなく、
臨床症状に変化が認められない患者に対して施行されるCTに、脳外科医は何を期待するというのでしょうか?
" 今年も小さな梗塞がありますが著変はありませんでしたよ。 " と説明して、
暗に、毎年のCT検査が、いかにも安心を保証する大切な検査だと錯覚させるのです。

もちろん、CT検査は脳卒中を予防するものでは無いし、改善させるものでもありません。
あくまでも脳出血や脳梗塞や脳腫瘍の確定診断に使われる物なのです。
除外診断と称して安易にオーダーする検査では無いはずです。
とりわけ、5ないし30ミリシーベルトの被爆が避けられないCT検査を、30歳以下の若者に施行することは、
将来的に発がんのリスクを高めますので、より慎重に扱われるべきでしょう。
小児の頭部打撲に対して、 " 念のために頭部CTも撮っておきましょう。 " などという医療は、いかがなものでしょうか。

この本の内容からは逸脱しますが、私は厚生連のレントゲン車による肺がん検診が中止されないことに驚き続けています。
厚生連というのは旧厚生省の天下り団体です。
このレントゲンは通常の直接撮影では無く、解像度の悪い間接撮影なのです。
しかもフィルムは10cm四方くらいの大きさしか無く、十数人分がカメラのフィルムのように一本になっています。
それを、医局の担当ドクターがクルクルと回しながらチェックしていくのです。
私が在籍していた医局には、" 2%以上は引っかけないといけないが、5%以上を引っかけてはいけない。 " という不文律がありました。
そして、今から十数年前ですが、統計学的な考察を施行したところ、この検診車による検査は、肺がんの早期発見に全く寄与していないという結論が出たのです。
そのニュースを耳にした私は、 " さもありなんや。 " と思い、検診車は廃止されるであろうと予想しました。
ところが、その後も廃止されることも無く現在に至っているのです。
患者の肺がんの早期発見のためでは無く、厚生連の存続を図るために、レントゲン車を走らせているのです。
政治の世界の不条理でしょうが、これを是正できない医師会や呼吸器学会は情けないですよね。