はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
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癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

冥土めぐり

2012年08月20日 | 読書
今回の芥川賞作品を文藝春秋で読みました。
作者である鹿島田真希氏は東京生まれの36歳で、白百合女子大在学中に文藝賞を、その後も三島由紀夫賞や野間文芸新人賞を受賞した経歴があります。
読み始めてすぐに、その文章力と表現の巧みさに感心させられました。
ネタバレを避けるためにストーリーの紹介はしませんが、作者が日本語の表現力を大切にしていることが窺い知れる部分をアップします。
主人公である奈津子の母親は悲しかったエピソードを語る最後を必ず”わあわあ泣いたわ。”で締めくくります。
このことに嫌悪感を抱く奈津子の考えが書いてある部分を抜粋して紹介します。
”自分が受けた仕打ちと不公平が、いかに悲惨で不幸なものか、なんとかして伝えたい。
しかしこの悲劇について表現しうる、持っている言葉が、この、わあわあ、なのだった。
この、わあわあ、という言葉を聞くたびに奈津子は思う。
この人はどんな不幸な目に遭っても、変わることはないだろう、と。
また別の不幸な目に遭ってもわあわあ泣いた、と言い募るのだろう、と。
この人は不憫なぐらい言葉を知らない人間なのだ。”

芥川賞の選評や鹿島田真希へのインタビューも面白く、今月号の文藝春秋はお奨めです。


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