中村弦の最新作です。しかも天使の歩廊やロスト・トレインを凌駕する最高傑作だと思います。
通信技術が発展途上であった昭和30年代までは伝書鳩が実用として使われていました。
東京の大手新聞本社の屋上には必ず鳩舎が設置されており、数十羽のハトが飼育係の手によって日々訓練を受けていました。
作者は参考文献として10冊もの伝書鳩に関する書物を読み上げています。
また、主人公が新聞記者ですので新聞社、新聞記者関係の本も10冊以上読み上げています。
結局、この小説は30を超えるような参考文献によって成り立っているのです。
ストーリーは昭和30年代の昔と東日本大震災が起こって半年も経たないような現代とを複雑に行き来しながら展開されていきます。
作品の後半3分の1は主役であるクロノスという伝書鳩の活躍が続くのですが、感動で目が潤んでしまいました。
小説を読んでこれほど感動させられたことは少なくとも二十才を超えてからは有りません。
作品の終盤では、序盤や中盤でばらまかれていた様々な小ネタが見事に収束していきます。
素晴らしいストーリーテラーだと感心させられます。
私のブログ始まって以来、最高のお奨め作品です。
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