老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

604;なんだか気持ちが暗くなる?

2017-12-12 15:42:57 | 老いの光影
なんだか気持ちが暗くなる? 

にんげん生きていて
自分には生きている価値があるだろうか。
このまま生きていても意味がない。
いまさら路を引き返すこともできない。
寒い日には左の膝関節は疼き歩くこともままならぬ。

それから拾年が経ち
独り身となった私。
老い往き病を患い
床に臥す日が続き
尿便で滲みついたおむつ。
自分で取りかえることもできず
為すがままに他人に身を委ねるだけ。
こんな辛い思いをしてまで
にんげん生き恥を晒しながら
生きなければならないのか・・・・
生きていく意味もなく
この先 生きたところでしょうがない。
死ぬしかない、と思うこともあるが
死ぬ「勇気」もなく
死ぬこともできず悶々としている。

南窓の居間なのに
陽は差し込まず
老臭と尿臭が混じった酸っぱい臭いが漂う。
毎日ヘルパーが朝夕60分ほど
食事つくりとおむつを取り換えに訪れる。
そのときだけ部屋のなかは明るくなり
にんげんの声が聞こえてくる。






602;大漁

2017-12-12 04:24:57 | 老いの光影
南陸奥 冬の朝焼け

金子みすゞ 「 大漁(たいりょう)」

朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ。

浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
いわしのとむらい
するだろう。


金子みすゞに出会った最初の詩は「大漁」だった
衝撃を受けた
人間たちが
浜で大漁と喜んでいる蔭で
海のなかでは
鰯は数多の仲間の死を悲しみ弔いが為されている

漁師は魚を獲ることで生計を為しているけれど
私たち人間は
鰯の悲しみに思いやり
鰯の生命(いのち)を食べることで
生命が支えられている
そのことに感謝しながら
食を頂く
鰯の悲しみと同時に
漁師の労苦があって
食することができることも
忘れてはならない
喜びの蔭に悲しみがある