老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

昔の時代風景と流行歌を想い出す物語

2020-06-03 08:11:01 | 読む 聞く 見る
1548;昔の時代風景と流行歌を想い出す 朱川湊人『かたみ歌』新潮文庫

5年前にも一度手にした文庫本
何が書いてあったのか
すっぽりと忘れてしまい
読み直してみた。

自分が高校生のときから23歳頃まで頃を
懐かしく思い出した。

東京の下町ではアーケードのあるアカシア商店街があり
日に何度も、同じような流行歌が流れていた
アカシア商店街では『アカシアの雨がやむとき』のレコードが流れていた。

アカシア商店街のなかにある古本屋 幸子書房の店主 川上老人を軸に7つの悲しい物語をつながる。
どの物語も死にまつわり、人は過去に悲しみや苦悩、葛藤、後悔などを背負いながら生きている。

死んでも死にきれず、幽霊となり、現世に現れる。
覚智寺の境内にある石灯篭は苔が生えるほど古く
石灯篭の火袋を覗くと黄泉の国とつながっている。

味わいのある文章に、胸が沁みゆく。

涙は、その味を噛み締めて立ち上がるためのものだ (「おんなごころ」142頁)
生きている人間が知っていることなど、とてつもなく広い世界の一部に過ぎないのだろう(「おんなごころ」149頁)

世の中にはー寂しい思いをしているものが、たくさんいる。(「ひかり猫」208頁)
生きていればこそ、夢に向かって走ることもできるのです。(「ひかり猫」212頁)

行動しなけりゃ、何も変わらないぞ(「朱鷺色の兆し」249頁)

面白いものですね、世の中と言うのは。日々誰かが去り、日々誰かがやってくる。
時代も変わり、流行る歌も変わる・・・・けれど人が感じる幸せは、昔も今も同じ
ようなものばかりですよ(「枯葉の天使」293頁)


寂しいからこそ、夢に向かって生きる。
昔も今も人が感じる幸せは、人と人のつながりにあるのかもしれない。