1566 介護とは ⑨{臥床状態になると、“食べる”ことが楽しみ(その2)}
~ベッドの背にもたれかかり食べるのではなく、座って食べることにより食欲がでる~
ベッドに仰向けの姿勢で寝ていると、天井と壁の世界しか眼に映らない。
仰向けから「起き上がり」、ベッド柵につかまりながらベッドの端に腰けるような状態で「座る」。
このとき踵は床に着くことで、座位姿勢は容易にとれるようになる(「端座位」という)。
本人の前にテーブルを置くと楽な姿勢で食事が摂れる。
これだけでも、ベッドの背に寄り掛かって食べるよりは、ずっと食べやすくなる。
(生活リハビリテーブルの利用)
人間、誰しも前屈み前屈みの姿勢で食べている。
前屈みの姿勢で食べることで、気道は塞がれ誤嚥性肺炎の予防ができる。
また、座ることで、首を左右に動かすことができ、眼に映る空間は180度拡がり、
外の景色や相手の顔も同じ目線で見える。
テーブルの上に置かれたお膳の料理も見下ろせ、眼で食を楽しむこともできる。
端座位による食事が慣れると、次はベッドから車いすに移乗させ、皆が居る食堂まで移動する。
車いすに座ったまま食卓(テーブル)に向かうのではなく、
車いすから両肘付きの椅子に移乗させ、食事をさせることが大切。
ベッドから起こし、両肘椅子に移乗させるまで、余分な手間がかかり面倒である。
時間もかかる、と介護員から不満の声がでてくる。
本来、介護というのは手間がかかるものであり、手間をかけた分、利用者は元気になる。
ベッドから「立ち上がる」「立つ」「屈み座る」の基本動作が繰り返し行われ、
知らず知らずのうちに生活リハビリがなされ、上下肢の筋力が維持また向上にもつながる。
三食とまでいかずとも、せめて昼食、夕食の2回だけでも、両肘付きの椅子に座って食事ができると、
その老人のにとり食欲も湧き、
皆と食事を摂ることで楽しくなり、美味しさも違ってくる。
ベッドから起こし、車いすに乗せ、両肘付きの椅子に再び移乗させる、
といったようにこうした一連の介護を在宅介護に求めるのは、
在宅介護者にとり容易ではないし、続けることはできない。
ケアプランのなかでヘルパー(訪問介護員)が食事介助に入っているのであれば、
最低ベッドから起こし、端座位の姿勢にさせ(踵は床に着く)テーブルを用意することにより、
前屈みの姿勢で食べることができる(前掲の図 生活リハビリテーブル参照)。
デイサービスとヘルパーの支援を上手に組み合わせ1日1回(昼食)、座る機会をつくることができる。
在宅介護者には負担をかけないケアプラン。
人間の行動には目的がある。
ただ、車いすに座らせ,置いておかれるほど退屈で辛いものはない。
食べる、他者と談笑するという目的があるから座る。
※生活リハビリテーブルの画像、カット(図)は、いずれもyahoo画像より引用しました