自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

キアゲハ,ハナウドに産卵(孵化後 ~その5~)

2013-06-09 | キアゲハ

ハナウドの葉にいる4齢幼虫が一匹,どうもおかしな様子です。上半身を葉から離して,反り返るような姿勢をずっと保っているのです。葉は下に垂れ,その葉は幼虫に随分と食べられています。

こういうところに,こんな格好でずっといるということは,なにかがある証拠。その“なにか”とは,もちろん脱皮です。そう思って,詳しく観察することにしました。

やがて,全身がぴくぴくっと小刻みに収縮するのです。たいへん微妙な動きなので,よほど集中していないと,それとわかりません。そうして,頭をぐうっと前より大きく反らしたり,元に戻したりします。

この個体の異常に気づいてから,3時間は経ったでしょう。その間,ずうっと見ていたというわけではありません。時折チェックするという感じです。時折といっても,見逃してはたいへんなので,すごく用心深く!

午後4時40分。からだ半分がぐぐっと反り返りました。「ああっ!」と思っていると,頭の部分がパカッと割れて,白いものが見えました。とうとう脱皮が始まったのです。

からだが逆立ちの姿勢,つまり尾先でぶら下がった状態になって,5齢幼虫が出てきました。初めて見るもので,大驚き! 「白いなあ」という印象です。殻はどんどん押し上げられていきました。

幼虫はなんとか頭を上向きにしようともがいていました。うまくいきそうで,失敗を何度か重ねました。なかなかたいへんです。そうしてぶらっとぶら下がった状態になりました。

その格好でいる間に,頭周辺には黒い筋模様が浮かんできました。その頃には,からだ全体が黄緑と黒の鮮やかな紋様で覆われていました。

ここまでで,異変に気づいてから4時間以上が経っていました。

結局この幼虫は,脱いだ皮を食べずに移動していきました。ふつうは葉の上で脱皮するでしょうから,ここまでエネルギーを使わずに済みます。そうすると,殻を食べるぐらいのゆとりはあるはず。仮に,この日のように逆立ち状態で脱皮しても,そのまま落下しないようになっている仕組みにわたしは感嘆してしまいます。

脱皮は生態上の大変化です。いのちのドラマです。これを見る醍醐味は説明を要しません。百聞は一見に如かず,です。