タイミングというのは,まったくふしぎで,おかしなものだとよく思うことがあります。たまたまうまくいった,絶好のチャンスをわずかの差で逃した,なんてことはほんとうにいくらでもあります。徹夜して羽化の瞬間を待っていたのに,トイレに行った瞬間に見逃した,という経験ではほんとうにがっかりしました。
次にご紹介するのは,なんとタイミングがいいのか,という例です。このほど,キアゲハの蛹化場面をきっちり見届けることができました。それはまったくの偶然のタイミングでした。
朝6時に起床。前日の同時刻に飼育箱のプラスチック壁で前蛹になっているのを確認していた個体について,様子を確認しました。からだの背が随分黄色っぽくなっています。よくよく見ると,ブルブルッと小刻みな武者震いの動きがあります。「おやっ? 蛹化するのかな」と思い,撮影の準備を整えました。
すると,頭部の背中が僅かに裂け始めたのです。腹部の側面に赤味がかった帯が見られます。この時刻は午前6時17分。そうして,黄色い,初々しい蛹のからだが見えかけました。
どんどん皮を脱いでいきます。その分,すこしずつ蛹のからだが現れてきました。
6時18分。
まだ6時18分。目が見えます。
6時19分。触覚が見えます。
同じ6時19分の様子です。翅の部分,腹部がはっきりしてきました。
皮が落下していったのは,同じ午前6時19分。
ほぼ3分の見事なドラマでした。
印象に残ったのは,成虫になったときのからだの部位がはっきり確認できることです。大変化の前と後とでは,特徴が際立っています。改めて驚いています。