自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

イナゴの季節

2014-09-20 | 昆虫

秋の気配が濃くなってきました。朝夕,風のなんとさわやかなこと。出会う人との挨拶は,まず気候の話です。目を遠くに向ければ,イネが色づいて,刈り取り作業が始まっていることがわかります。

田の畦でヒガンバナが真っ赤な花を付けています。路傍ではゲンノショウコが可憐な花をちりばめ,ツユクサが青い花弁を遠慮深げに開いています。ツユクサにはバッタが似合うようです。


ヒガンバナに赤トンボがとまっていました。真っ赤な花に,真っ赤なからだ。秋の匂いが濃くしました。すこし行くと,イナゴが花茎に取り付いていました。1匹のも,オス・メスがペアのもいました。イナゴのいる自然がわずかに復活し始めたのでしょうか。しかし,いったんいなくなるとなかなか元には戻りません。イナゴのような象徴的な昆虫の激減例は,「崩された生態系は取り返しの付かない結果をもたらすぞ」と警鐘を鳴らしているようにみえます。


そんなわけで,イナゴを見ると,「ほほーっ!」とうれしくなります。いうまでもなく,下の大きい方がメス,上がオス。2つが揃うと,区別が付きます。産卵に備えた行動です。 


昆虫の警戒心には,種によっては強いものがあります。離れたところから二匹の存在を認め,そっとそっと近づいていきました。しかし,敏感に感づかれました。花茎のちょっとずつ回るように移動して,わたしの正反対にいこうとするのです。カメラを持っていくと,それから遠ざかろうとしました。

花茎を指先ですこしずつ回して撮ろうとすると,おしまいには下方に移動を始めました。ほんとうに敏感です。

そんな行動はカマキリにも典型的に現れます。とくに幼虫時のカマキリです。個体の生命維持という観点で,昆虫の敏感さに驚かされます。さすがです。

 


卵のかたち,模様

2014-09-20 | ヤマトシジミ

葉の表側に産付された卵について,再び考えてみようと思います。

あれからずっと気に掛けているものの,一向に孵化の兆しは見えてきません。絶好の観察位置にあるので,その瞬間をたのしみに待っているのですが,どうも孵化には至らないように思われます。その間,卵は白色から灰色に変化しました。この変化はよく見かけます。しかし,いのちの成長が停止しているのか,ずっとその状態なのです。

再び考えたくなったのは,そのかたちといい,表面の模様といい,じつに見事というほかないからなのです。

卵の直径は,1mmはもちろん,その半分の0.5mmにも満たない大きさです。昆虫それぞれの卵はそれぞれの特徴を備えています。かたち・色・模様を見れば,研究者なら種の同定は比較的容易にできるでしょう。

ヤマトシジミの卵のかたちは厚みのある円形をしていて,中央付近が膨らみ,それを取り囲む部分が窪んで円を描いています。その窪みに沿うようにして,からだが収まっているのです。

そして,孵化時に,窪み部分が食べられてハッチが開くように蓋が開けられ,からだが現れるわけです。 窪み部分の厚みがもし薄いなら,それは巧妙なしくみです。ほんとうはどうか,わかりません。

 
模様は,もう驚愕するほかありません。こんなに小さな卵の表面がこんなふうにモザイク状の凹凸で覆われているとは! この構造は葉の葉脈の役目とそっくりなのかもしれません。殻の強度を保ち,かたちを維持するのに都合がよいという解釈です。


それにしても,産付前に,体内ですでにこのかたちができ上がっているのでしょうが,いったいどんなしくみで作られるのか,ふしぎです。この幾何学模様はまちがいなくしぜんのふしぎです。ヤマトシジミに限らず,すべての昆虫の卵に通ずるふしぎでもあります。