12月,野で虫の目写真を撮っているとき,突然現れたのがセセリ。オオチャバネセセリでしょうか。目の前に咲くホトケノザの花で吸蜜。「寒いのに,よくも現れたことよ」とびっくりしていると,飛び飛びに咲くホトケノザの花を選んで渡っていくように,蜜を吸い続けました。
あまりに急なことだったので,わたしは接写撮影する準備ができないまま,大慌て。結局,虫の目写真だけしか撮れませんでした。ずいぶんピンぼけした写真が,かろうじて2枚状況証拠として残っただけです。
口吻が伸びているのがなんとかわかります。
気温は10℃ぐらい。当日の最高気温は10.1℃でしたから,そんな気温でも活動していたというのはスゴイ事実です。セセリチョウの越冬態はふつう幼虫ですから,この成虫は間もなく死を迎えるのです。
寒さは変温動物には厳しいのですが,それでもぎりぎりのところを生きている点がこころを打ちます。この日は,他の昆虫はまったく見かけませんでした。
話はホトケノザの花に変わります。この花は閉鎖花があるのでよく知られています。閉鎖花は花弁が閉じられていて,花の中で受粉が行われる,いわゆる自家受粉が可能な花です。花弁が開いたものは開放花と呼ばれ,他家受粉がなされることを基本としています。上写真では右端の花が閉鎖花,他は開放花です。したがって,セセリチョウは開放花を探し求めていたことになります。
そう思って冬のホトケノザをよく観察してみると,閉鎖花が目立ちます。こうした点を確めるのも観察のたのしみです。