皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

初詣の起源

2023-01-07 15:47:50 | 風の習わし時を超え

新しい年に初めて社寺に参拝することを「初詣」と言います。大晦日の日没を年の区切りとしていた頃には初詣は大晦日の夜に行うものとされていたそうです。
現在でも大晦日の晩に家を出て、新年を迎えてから参拝する方も多く古くは「二年参り」とも呼びました。紅白歌合戦を見届けて、氏神さまへと歩いて行き、「行く年来る年」を見ながら参道で待つ。皆様のNHKの定番はもちろん戦後の風習であるのです。
実は初詣の歴史は浅く、そもそも元日に寺社へお参りする風習は明治以降のものだと言います。江戸時代までは静かに年神さまを自宅でお迎えするのが習わしだったようです。なぜ元旦の寺社詣りが盛んになったかと言えば、明治維新による富国強兵政策のひとつある鉄道網の整備にあると言います。
殊に神奈川県の川崎大師は人気で三が日の100万人の参拝客を集め、1872年川崎駅に急行列車が止まるようになったことから、全国各地で多くの路線で初詣の参拝者が利用するようになったそうです。まだ150年ほどの歴史です。
明治神宮や浅草浅草寺など、多くの初詣の参拝者で賑わっていることでしょう。
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令和四年末 ~餅つき~

2022-12-22 20:42:19 | 風の習わし時を超え

今日は新年に向けての餅つきでした。多くのご家庭では25日過ぎから28日に行われると思いますが、私自身神職と流通小売業の兼業であることから、これより先激務が続きますので少し早く新年の準備をしております。
餅つきそのものは古くからの伝統行事(しきたり)でありその意味合いは歳神様にお供えする鏡餅を作るためだとされます。餅つきそのものが神聖な神事の一つと考えられてきたそうです。昔の銅鏡の様な丸い形をしていることから鏡餅と呼ばれました。鏡は魂を表す神器であり、歳神様にお供えした鏡餅を食べることにより新たな使命力を授けられると信じられてきました。鏡餅の大小二つの餅は月(陰)と太陽(陽)を表していてこれを重ね合わせることで福徳が重なり縁起がよいといいます。
鏡餅は28日までに飾り正月11日の鏡開きを迎えて下げ汁粉や雑煮にして食します。
今日は冬至です。日脚が最も短い日ですが陰が極まって陽に転ずる日であることから「一陽来復」ともいわれ、春と幸運へと向かう転機としてとらえられます。
今年も残すところあとわずかですが一日一日大事に過ごしたいと思います。
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五月人形を飾るわけは

2022-04-19 20:35:40 | 風の習わし時を超え

風薫る五月。新緑が眩しい季節に欠かせないのが五月人形と鯉のぼり。
兜や弓、太刀を飾る意味については『端午の節句』の風習としてとらえられています。

端午の節句は元々古代中国の季節行事であり『五節句』の一つです。(七草、桃、端午、笹(竹)、菊)節句とは季節の変わり目という意味です。季節の変わり目には邪気が寄りやすいので、季節ごとにお供えをして厄を祓い無病息災を祈る風習がありました。

そもそも季節は春夏秋冬の四つととらえられていますが、昔の人は土用を含めた五季としてとらえ一年を七十五日前後で区切っていたそうです。
『人のうわさも七十五日』
ということわざの通り季節が変わればみんな忘れてしまうと信じられてきたのです。

現在の五月はさわやかな初夏ですが旧暦においては今の六月ですので所謂梅雨時期です。『端午』とは旧暦五月の最初の午の日を指します。

武家社会である鎌倉から室町時代には、この時期各武家では鎧や兜を出して家の中に飾る習慣があったそうです。梅雨時期の風通しのためでした。
端午の節句の鎧兜や武具の飾りつけの起源はここにあるそうです。
端午の節句の飾りつけは男の子を病気やけがなどの厄災から守り、立派に成長することを願う風習です。
もちろん平和な世の中であってほしい。しかし世界情勢を見ればわかる通り争いや戦いがない世の中は長く続かないことは歴史が教えてくれています。武具はいつの世も手放してはならず、平和のために自らを磨き供えることが大切だと鎧兜は教えてくれています。
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引っ越し蕎麦はいつ食べる

2022-03-29 21:14:53 | 風の習わし時を超え

ソメイヨシノが咲いています。昨年があまりに早い開花だったこともあり、弥生の終わりに満開を迎える今年は4月にも少し花が残ってくれそうです。
コロナ禍で迎える三度目の4月は引っ越し需要が増えているといいます。こうした報道を真に受けてよいのかわかりませんが、過去2年間緊急事態宣言を含めて、かなりの人流抑制が続いていましたので、契約更新をした社会人がこの年度末に合わせて、動いていると伝えられています。
私自身社会人となって四半世紀以上たちますが、学生時代も含めて5回の転居を経験しました。学生の時はトラックを借りて東京のアパートへ自力で荷物を運びました。

大手引っ越し会社もこの時期にたくさんのCMを流し、需要の高さを感じます。
『べんきょうしまっせ』や『サカイ~安い~仕事きっちり』など独特のフレーズで利用者の心をつかんだ業界最大手。私も利用したことがあります。
今年はスマホを使ったWEB見積の様子をTVCMしていますね。なんとなくこの企業は他社に先駆けてサービスをい提供しようとしていることが伝わります。『価値ある豊かさ』とは他社に先駆けたサービスであることは昔から変わりませんね。

引っ越し蕎麦という風習は関東周辺で広まったもののようで、所謂『向こう三軒両隣』といったご近所感覚も江戸期からのもののようです。
実は結婚してアパートへ入居した際、お隣りへ挨拶しちょっとした日用品をご挨拶に配った記憶があります。
その時片づけを終えて食べた夕食は確か蕎麦だった。
引っ越し蕎麦を自分で食べるものだと勘違いしていたのです。
引っ越し蕎麦とは、引っ越した先でご近所にご挨拶に配る蕎麦のことです。江戸期に始まったとされるこの風習は『おそばに参りました』『細く長く良しなに願います』といったいみをもっているそうです。餅や小豆に比べて安価であったことが理由の一つでもあったようです。
引っ越し蕎麦はいつ食べる、ではなく引っ越し蕎麦は誰が食べる。
そう縁あってそばに寄った他人様が、細く長ーく食べるものなのです。
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上巳の節句

2022-03-03 22:06:52 | 風の習わし時を超え

陽数の重なる五節句は人日、上巳、端午、七夕、重陽。弥生の巳の日に水辺で厄災を祓う中国の行事がの本に伝来し、平安期には厄を人形に預けて流す『流し雛』が風習となった。今日は上巳の節句。一般的には桃の節句と呼んだほうが馴染みがある。
雛壇に飾る『雛飾り』が一般化したのは江戸期になってからだという。
埼玉県内には雛人形の産地が二ヶ所あって、鴻巣、岩槻ともに人形の里として知られる。ともに中仙道、日光街道の宿場町で、特に鴻巣では古墳から出土した埴輪が人形作りの始まりとなっている(「生出塚古墳』) 

桜餅や菱餅をお供えして祝う。菱餅は清らかな水を表す白、魔除けを表す赤、健康長寿を祈る緑の三色であることが多い。

婚礼にも祝いの品として用いられる蛤。ひな祭りにも欠かせない一品であるが、その意味は二枚の貝殻が一組に噛み合わせ、夫婦円満や縁結びに結び付くという。

桃の節句と呼ばれるのも、桃には霊的な力が宿ると考えられていて、魔除けの意味合いを有している。
古事記神話において、黄泉の国で腐敗した愛するイザナミノミコトの姿を見てしまったイザナギノミコト。逃げ帰る際に投げつけたのは桃の実だったという。
いよいよ梅の花も咲き始め、桜の季節も間近に迫っている。
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