神社建築をよく見ると至る所で見つけることができるハートのマーク(印)。縁結びの様に見えるその形には別の意味があるといいます。
参拝の際にその音で身を清めるとされる鈴は、切り口の端がハート型になっているのがわかります。これは猪目と言って猪の目を表しているそうです。この猪の目をが使われている部分を「懸魚」と呼びます。
神社建築の屋根下に見える部分です。猪は火伏の神の使い(神使)とされ火事から守ると考えられているのです。猪の目の形がハートに似ていることから使われるようになったそうですが、猪は動物の中で一番最初に火事に気付くとも信じられています。「いの一番」と言葉の由来になっているのです。なぜ猪は火除けの使いなのか。
中国の陰陽五行説では、五行とは十干十二支で成り立ち、十二支である子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥で表されます。東西南北を干支で表す一方、火、水、木、金、土の五行のうち子と亥が水を意味し、反対に巳と午は火を表します。
水属性の猪は「火に克(勝)」ということから火除けとして用いられるようになりましたが、魔除けの由来は、猪が祟り神として恐れられていたことに由来します。『古事記』神話ににも日本武尊や雄略天皇の部で伝えられる話があります。
日本武尊が東征の後、伊吹山で白い大猪に遭遇します。伊吹山の神である猪の神罰により大けがを負った日本武尊はその怪我がもとで亡くなってしまいます。
雄略天皇は葛城山で大きな猪の神に遭遇し、鏑矢を射て殺そうとしましたが、逆に襲われ瀕死の目に合われます。
日本では災いの神を祟り神として恐れ、その神を祀ることで災難から逃れようとしたのです。
木造建築の社殿は火事に弱く、その火事から守る神として神話の伝承が今日も猪目模様として施されているのです。