皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

米騒動に見る価値と使用価値

2024-09-01 23:04:27 | 物と人の流れ

 

九月に入り北埼玉でも稲穂が実りつつある。すでに北川辺周辺では収穫を終え、検査も始まって近々流通するようになると伝え聞いている。

そうは言うものの多くの消費者が頼る大手食品スーパーの米売り場に米が並ばない状況が続いている。並んだとしても一度供給不足になっていると、即売してしまい常に売り場が空になってしまう。東日本大震災のあと特定商品が品切してしまったり、地震のあとペットボトルの水が品切してしまうのと同じ状況だ。国民の主食である米が流通不足になりながら『新米が出ると解消されるのお待ちください』とはよくいったものだと思う。これほど国民生活の脆弱な一面を感じることはそうはない。

資本主義である以上、いかなる商品でも価格メカニズムが働いて、『価格』が決まる。いわゆる需要と供給のバランスで社会全体が成り立っているということだ。どんなに収穫できても余ってしまうと価格が下がってしまうのでレタスやキャベツが産地で捨てられてしまう様子がよく写し出される。でも米はそれでは困るから1995年までは政府による全量買い上げが行われて来たが(食管法)米を生産者が直接消費者に売ることができるように食糧法として改正し30年が過ぎた。行き過ぎた減反政策や備蓄米の管理など様々な問題を抱えながらも、1993年の米不作移行米が手に入らないという事態は記憶にない。

食糧政策について提言できるほどの知識も経験もないが、ひとつ言えることは生産手段を持たない消費者は、その使用価値を求めるのに(米を食べて腹を満たす)、価値(すなわち価格)の決定権を持たないということ。

資本論で言う価値の対価として働き続けるしかないと言うこと。米が高いから小麦を食べましょうというのは、根本的問題を先送りにして、今日の空腹を満たそうということに他ならない。

消費者は米を大事にしてきたのだろうか。食べられなくなってはじめて気づく。新米が流通すればすべて忘れてしまうのだろうか。喉元過ぎれば熱さ忘れる。いつまでもそういうことが繰り返せるほど今の社会基盤は磐石ではない。

 

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フェンスの向こうの星条旗①海を渡った理由

2024-07-16 19:19:00 | 物と人の流れ

2024年7月5日勤務している会社の海外視察ツアーとしてアメリカニューヨークへ渡りました。期間はわずか3日間ですが、30年ぶりに海外へ渡航することができとてもうれしく思います。これまで1995年に大学のゼミの研修でグアムへ4日間。1998年5月に若気の至りで韓国ソウルへ気まま旅をしたのみですので、ほぼ日本という国を離れた経験がありません。特に韓国旅行時はウォンが暴落していた時期で、勢いで航空券だけとってあとは現地で何とかなるというような気持で渡りました。当時目的があったわけではありません。(グアムはゼミの研修で現地警察署などを教授が案内してくれました)

今回アメリカ流通視察ということで、日本円の価値がかなり下がっている中でもアメリカニューヨーク周辺のスーパー中心に多くの施設を見るチャンスということでかなり前向きにとらえ、応募しました。というのは建前であって、本当の理由は今の日本をアメリカの人々はどう見ているのか知りたかったからです。知ったところで何が変わるわけっではありません。純粋に自己満足したかったのだと思います。

パスポートも本当に久しぶりに取得しました。

空港で両替した現金は20ドルのみでした。(あとは全てクレジットカード)搭乗手続き、事前出国の手続きなどすべてwebで事前に行います。ともに行くメンバーは私を除いて30代、20代ですので普段旅慣れていなくとも手続き等で困る様子は全くありません。私一人いろいろ若い人に聞きながら足を引っ張らないように不慣れをさらけ出して必死に搭乗手続きまでやり過ごしていました。

ひとつだけ旅のテーマをもって過ごしました。

星条旗を見てこよう!

浜田省吾のアルバムBLOOD LINE を学生時代に聞いていましたので、戦後の人々が日の丸ではなくアメリカの国旗を見て漠然と国に対する思いを胸に秘め過ごしていたことを思い出しました。

フェンスの向こうにわたりできるだけ星条旗を目に焼き付けて来よう。50代でこんな旅ができると思いませんでした。

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県民の日に三菱地所アウトレットでみた野球用具の今昔物語

2023-11-14 21:57:15 | 物と人の流れ

11月14日は埼玉県民の日。明治四年の廃藩置県から今年で152年。当初は荒川の西が入間県、東が埼玉県、明治六年には熊谷県が誕生、明治9年に現在の埼玉県の枠組みが誕生しています。昭和46年には県誕生100周年を記念して11月14日を「埼玉県民の日」と定めています。(埼玉県HPより)
熊谷市は県北の中心都市ですがお隣深谷市も平成の合併で大きくなり、昨年には旧花園町に三菱地所系のアウトレットモールの誘致に成功しています。やはり高速道路の幹線沿いの都市は商業施設の誘致に有利なのでしょう。昨年のオープン時には周辺の渋滞が連日のように続いていましたが、一年経って落着きを見せていました。
一周年を記念してセールはもちろん様々な催しが開催されていました。特に任天堂のショップが人気で、マリオのキャラクターを随所に用いて子供連れの家族の姿が多くみられました。
個人的にはこうした大型モールでの買い物が苦手で、経済的余裕もありませんので、付き添いのような形で致し方なく歩き回っていますが、老化防止のためには新しい店を訪れ、興味をもって見ることが効果的ということを本で読み、せっかくですのでいろいろな店舗を覗いてみます。
アパレルブランドのトミーヒルフィガーです。ごくまれに服を買ったことがありますが、アメリカの発祥のブランドということを初めて知りました。1985年に創業者の名前から付けられています。当時はファッション性に加え、機能性が際立っていたようで、また創業者のトミーヒルフィガー自身が経営を退いてもデザイナーとして残ったという話をネットで拾いました。やはりものづくりが好きだったのでしょう。店内に入りませんでしたが、スポーツブランドのNEWBALANCEです。メジャーリーガー大谷翔平のスポンサーとして今注目されています。私も野球経験者ですが(30年以上前)、当時野球用具のブランドと言えばミズノ、ゼット、ローリングス、SSKといったところでしたが、あの大谷翔平はニューバランスを使っています。もちろんスポンサー契約を結んでいるからです。(私は中学校でローリングスのグラブを使っていました。懐かしいです)

また日本の小学校に3個ずつ野球のグローブを寄贈するとのニュースが話題になっていますが、これも日本市場を見越してのことだというのは間違いでしょう。美談の向こうには必ず経済的合理性が隠れているのです。これらを良し悪しとして図ることは野暮なことです。自由主義社会のスポーツはビジネスと表裏一体なのは間違いないところです。
アウトレットモールの随所に地元の名産品がモチーフとして描かれています。取り上げられるものもあれば、見向きもされないものもある。それはそれで厳しい社会だと思います。県民の日に家族連れでにぎわうモールを散策しながら、資本主義社会の今後について漠然と考えていました。

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ソーシャルキャピタル(social capital)

2023-10-19 22:53:02 | 物と人の流れ

ロシアウクライナ紛争の行く先も見えない中で中東情勢も混乱を極めている。イスラエルの歩んできた歴史を学べば自衛という名の武力行使は常に名目だけでは終わらないことは確かだろう。隣人を信用できない社会は常に境界線を厳しく敷く。海に囲まれ戦後の平和な暮らしを甘受してきた私たち世代には易々とイメージできない社会のほうが世界ではスタンダードであることを改めて認識しなければならないだろう。

radio番組の経済コーナーで有名大学の教授が「ソーシャルキャピタル」(social capital)につて話していた。19世紀に生まれ1972年に論文化された概念で「社会関係資本」と訳される。エネルギー供給や交通網の整備といった社会的インフラは目に見えるけれども、隣人との信頼関係や、政治への信頼といった内面の問題は可視化できない。人々の信頼関係が強く、協調的行動が顕著な社会ほど効率的で生産性が高いという考え方。

米国におけるコミュニティーの衰退や過度な個人主義への反省が根底にあって、おおよそ日本では昔は高い傾向にあったと考えられる。日本では「お互い様」という言葉があるように、協調性は高い傾向にあると考えがちだけれど、近年ではそうとも言えない。格差が分断を生む構造が浸透してきて久しい。

自国を信頼していますかという問いに、今の日本の多くの人は「どちらともいえない」と回答するそうだ。これはフランス人にも共通しているという。
「皮肉の国」という風で自国に誇りを持ちながらも、自信を失いかけている時の表れだという。だからNationalチームのスポーツ応援が盛んになるという。
本当は自分や自国に誇りを持ち、隣人を信頼する社会を望んでいるはず。
ソーシャルキャピタルという言葉が多くの人々に浸透し、そうした社会が根付くことを願っている。
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駐輪場から見る近未来の購買形態

2023-10-05 23:00:16 | 物と人の流れ

コロナ禍以降、外食を含め営業時間が短縮される傾向が強まっている。かつて24時間店を開いていた店舗も夜間の営業を切り上げ、集客の多い時間に絞っている。こうした傾向は人口減少が顕著となっていることから、一層進むと考えられる(個人的見解です)
コンビニがかろうじて営業時間を守っているが、食品スーパーも業態を変えながら、営業時間について試行錯誤しているように見える。埼玉県内の大手スーパーは朝9時が最速で多くは10時オープンだ。ディスカウントの傾向が強いと時間も短くなる傾向が見られる。(これも個人的見解です)

早朝営業の利点の一つに高齢者の集客が見込めることがある。朝のゴミ出しとして資源ごみをもって買い物に来る習慣がついている。こうした顧客は混雑を敬遠することから10時前に入店する。来客手段は軽自動車が多い。

但し駐輪場を見ると三輪の自動車が多くめにつくようになった。今後一層こうした自動車から三輪車へと乗り換えていく高齢者は増えるだろう。

客観的に見て駐輪場に停められている自転車は古く、非常に長く乗っている印象を受ける。これが今の地方都市の現実だと思う。新しいものがよいとは言えないが、実際には普段の移動手段が限定される顧客が多いのだろう。
こうした顧客の増加に対して必要な品ぞろえと、それに見合ったサービスを提供し且つ利益を確保することは今までの延長上の販売形式では頭打ちになるだろう。ダイエーが消え長い時間が過ぎたが、2強と呼ばれたヨーカ堂もその役割を終えようとしている。宅配、移動販売など様々な形態と並行して店舗での販売も近い未来のうちに大幅に変わることは間違いないだろう。
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