ドン・キホーテは関東地方中心に展開する総合ディスカウントストアー。(DS)店内で流れる陽気なテーマソングが耳から離れない。北埼玉への出店はここ5年くらいに進んだように思う。加須大桑店がオープンして2か月経つが、午後7時過ぎに買い物(兼売価調査)によるとたくさんのお客で賑わっていた。
他の流通大手と同じように企業買収によってその規模を拡大してきたという。長崎屋、ドイトといった埼玉県内の小売店舗も吸収されて久しい。自分が若いころのドンキといえば大宮大成店。国道17号沿いの手狭な店舗に、乱雑ながら様々な商品が積まれていたのを思い出す。
『圧縮陳列』と呼ばれる陳列方法で、隙間なく商品を並べて店内を迷路のようにして「宝さがし」を客に楽しんでもらうというコンセプトだ。
近頃は単にDSの業態としてではなく、食料品に力を入れている。一部生鮮食料品も扱っていて現に店舗1階の最奥部は総菜売り場がメインとなっている。元来のSMでは入り口から青果、鮮魚、精肉、総菜の順にその日の夕食の材料の献立を考えられるように、食材の品目ごとに陳列しているが、ここドン・キホーテではそんなことはお構いなし。残念ながら生鮮食料品(青果、鮮魚、精肉)はほとんど扱いがないが、総菜、加工食品は充実の品揃えだ。恐らく単身世帯が購買の中心になっているのだろう。店内写真が撮れないのが残念ながら、総菜は品揃えも非常に充実している。但し総菜は外部委託でカネ美食品(株)が請け負っていた。元々ありとあらゆるものを扱うDS業態だけに自社で食品加工を手掛けるより、外部委託した方が効率が良いのだろう。
PB(プライベートブランド)は「情熱価格」というブランド。いつからやっているのかわからないが、聞いたところによれば特に日配品などはPBを製造するロットが合いやすく、開発しやすいのだという。加工食品などは十数年前からPBの競争も激しくなっていて、NB品と比較して安くて美味しい、且つ売り手がもうけやすいという利点があったが、近年では改廃も激しく作ればもうかるという時代は終わったようだ。以前であればPB品はメーカー名を隠して売る(販売者しか明示しない)ことが多かったが、このようの販売店とメーカーのコラボ企画というのが流行りらしい。イノベーションは全く0から生まれるのではなくて、現在ある価値が復数重なり、交わることによって生まれるという。時代はまさに「コラボの時代」
これまた流行りの電子マネーを導入している。「マジか」というらしい。いたって面白い。セミセルフのレジも勿論導入していて、「お会計は現金ですか」と聞いてくる。自分くらいの年代だとあれこれ決済機能を増やすことに抵抗を覚えてしまい、「マジか」を購入するのをためらってしまうが、スイカ、ナナコ、ワオンなど大手流通の中で一番応援したくなるカードだ。
圧縮陳列については15年ほど前、店舗の放火事件の際延焼の原因となったしまったことがある。店舗の従業員が死亡し大きな問題となった。現在では店内の宝さがし感を残しつつ安全を確保した陳列となっている。
小売り業を取り巻く環境も年々厳しくなってきている。出る杭は打たれるの言葉通り、昨今小売業の成功事例とされたきたセブンイレブンがフランチャイズの運営方法を巡り、叩かれている。深夜営業もCVだけではなく、SMもDSも需要に応じて展開するべきだろう。勿論法令や社会常識を逸脱した運営は叩かれてしかるべきだし、そうした手法の上に好業績を積み重ねてきたのなら、長続きはしないはず。自由な発想で顧客に対して購買意欲を引き出させ、結果楽しい買い物で、売り手も利益が出せる。そんな店がこれから先残っていくに違いない。