世の中は 常にもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも 鎌倉右大臣
源実朝は鎌倉4幕府第三代将軍。頼朝の次男に当たる。二代将軍頼家が追放され僅か十二歳で将軍に担がれている。比企氏と北条との確執から兄頼家は伊豆へと追われ、忙殺されての後だった。和歌を好み文人として名高い。和歌三十首を藤原定家に評されている。
(訳)世の中はずっと変わらないでいてほしい。渚を漕いでゆく漁師の小舟が陸から引き綱でひかれてゆく様は、しみじみといとおしい。
政治の実権を握ることなく僅か27歳で生涯を終えた実朝は自らの運命を察しこの歌を詠んだともいわれています。毎日の貧しい漁師の暮らしはつつましくまた世の中から見れば小さなことかも知れません。自らにはそうした静かな暮らしが来ることはないと悟っていたそうです。
ゆえにこうしたありふれた日常の光景をいとおしく思えてならなかったのでしょう。
建保七年(1219年)鶴岡八幡宮で実朝を討ったのは兄頼家の遺児公暁でした。
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