語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】汚染度が深まる首都圏の水

2013年04月04日 | 震災・原発事故
 国が定める水の基準は、原発事故後、今の基準は10Bq/kg。
 原発事故前(2009年度)に文科省が行った環境放射能調査のデータでは、海底土のセシウム濃度の平均値は1.2Bq/kgだった。事故前には日本の水質のセシウム(Cs)濃度は平均0.045Bq/kgで、0.1Bq/kgにも満たなかった。

 3月29日、千葉、埼玉、東京の公共用水域の放射性物質のモニタリング調査(51地点)が環境省により公表された【注】。
 驚くべし、国の基準の実に1,420倍、事故前の基準の14,200倍だ。千葉・柏市や我孫子市にまたがる「手賀沼」の流入水域、沼から上流約1・6kmの「大津川・上沼橋」の川底から14,200Bq/kgの放射性セシウムが検出されたのだ。
 約10km上流の「亀成川・亀成橋」の川底でも5,300Bq/kg、同約1kmの「大堀川・北柏橋」でも、4,200Bq/kgが検出された。
 首都圏の「水がめ」も極度に汚染されている。
 1都5県、2,800万人の給水需要を担う利根川水系や、東京東部と千葉北西部をカバーする江戸川水系の調査地点でも、1,000~3,400Bq/kgと基準値を大幅に上回るセシウムが検出されている。

 福島原発事故による水質汚染は終わってはいない。むしろ、どんどん深刻化するばかりだ。

 【注】「千葉県、埼玉県及び東京都内の公共用水域における放射性物質モニタリングの測定結果について(12月-2月採取分)(お知らせ)

□記事「首都圏「水がめ」 驚愕のセシウム汚染レベル 実に基準値の1420倍」(2013年4月4日付け(3日発行)日刊ゲンダイ)
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【経済】実体経済から見れば株価は2割割高 ~狙われる個人投資家~

2013年04月04日 | ●野口悠紀雄
 (1)株価が上昇を続けているが、実体経済面では厳しい状況が続いている。
 最大の問題は、輸出数量が伸びないことだ。円安にもかかわらず、昨秋以来の輸出減に歯止めがかかっていない。それどころか、悪化している。

 (2)株価が上昇しているのは、「円安になれば日本の輸出が増えて国内生産が増える」という期待があるからだ。しかし、その期待は実現していない。
 輸出数量の減少を反映し、国内生産も低迷し続けている。
 他方で、輸入は増加している。2月中旬の輸入は、対前年比21.1%だ。この増加率は、為替レートの減価率にほぼ等しい。このため、貿易赤字は空前の規模に達している。

 (3)円安は、輸入価格を上昇させる。ガソリン価格の上昇は、企業にとっての大きな負担増だし、生活にも影響する。
 発電用燃料の輸入増分は、ほぼ自動的に電気料金に転嫁される。この面からも生活が圧迫される。
 電気料金と原材料価格の上昇は、素材産業には大きなコストアップ要因だ。新日鐵住金は、航路1基を休止した。住友化学は、エチレンの国内生産から事実上撤退した。
 電気料金値上げは、内需型産業に対しても無視しえぬ影響をもたらす。

 (4)貿易赤字の拡大は、総需要を大きく押し下げる。1~3月期GDP統計にも影響するだろう。
 2割も円安が進んだにもかかわらず、実体経済はなんら改善されていない。この点からしても、日本経済が抱える本当の問題は円高でないことがわかる。
 現在日本が抱えている問題は、(a)貿易相手国(特に中国とEU)の国内事情によって、日本からの輸出量が減少していること。(b)発電用燃料をはじめとする輸入の多くは、価格弾力性が低いため、円安になっても、日本の輸入が減らないこと。

 (5)国内生産が増えないから、設備投資も増えない。中小企業の受注も増えない。雇用情勢も好転しない。賃金は上昇しない。
 その半面、円安が進めば、輸入物価が上昇し、国内の物価上昇率が高まる。賃金が上がらないので、実質賃金が下がる。 ⇒ スタグフレーション。
 他方で、金融はすでに緩和している。よって、余裕資金が株式市場と不動産市場に流れ込む。かくて、資産市場でのバブルが進行する。金融緩和の本来の目的は投資支出を増やすことなのだが、そうはならず、株価と地価を上昇させるだけの結果に終わる。 ⇒ 典型的なバブル。
 これまでの金融緩和は、マネーストックを増やさなかった。資産価格がバブルを起こしているので、マネーストックが増加する可能性はある。しかし、それは実体経済の回復ではない。
 これ以上の円安の進行はくい止めるべきだ。為替レートも資産価格なので、バブルを起こしている可能性があるからだ。
 しかし、円安進行ストップを誰も言わない。言えば株価が下落するのを知っているからだ。逆にいえば、いまの株価上昇は漠然とした期待に支えられているだけのものだ・・・・ということが認識されている証拠だ。

 (6)株価は、リーマンショック前の水準を回復した。しかし、実体経済活動は、その当時の水準に戻っていない。
 日本経済活動水準は、大まかにいえば、リーマンショック直前に比べて1~2割低下している。営業利益は、2割近く減少している。
 だから、株価も、それに見合っただけ低い水準にならざるを得ない。企業の営業利益が株価を決めるとの観点に立てば、そしてリーマンショック前の株価が正しいものと仮定すれば、現在の株価は17%ほど過大評価されている。

 (7)いま株式に投資している人の多くは、短期的な売買益を目的としているのだろう。よって、企業利益などの実体的要因には興味を持っていないのだろう。せいぜい数ヶ月先、場合によっては数日程度先しか見てないのかもしれない。
 しかし、経済の実態を離れた株価が永遠に続くことはない。どこかで破綻し、損失を被る投資家が出る。
 バブルが最終段階に近づくと、個人投資家をターゲットとした売り込みが行われるものだ。バブルが崩壊するときにババをつかまされるのは、個人投資家である。今度も同じことが繰り返されるのだろう。 

□野口悠紀雄「実体経済から見れば株価は2割程度割高 ~「超」整理日記No.653~」(「週刊ダイヤモンド」2013年3月30日号)
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