古い倉庫を始末し、新しく設置した際、古い倉庫から出てきた本の一。
<社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する>
三つの範疇がある。①自然環境、②社会的インフラストラクチャー、③制度資本だ。
以下、社会的共通資本の考え方とその役割、経済学史の中の位置づけ、重要な構成要素(自然環境、農村、都市、教育、医療、金融)の個別的な事例、社会的共通資本の目的達成と持続的な経済発展が可能になる制度的前提条件・・・・が考察される。
<例>医療・・・・日本の医療制度の矛盾は「医療的最適性と経営的最適性の乖離」にあり、医療的最適性と経営的最適性とが一致するためにはその差を社会的に補填しなければならないから、社会的共通資本としての医療制度は独立採算の原則は妥当しない。医療を経済に合わせるのではなくて経済を医療に合わせるべきだ、云々。
薬漬けにされることなく、必要かつ十分な医療を受けるには、著者の主張のごとくであってほしい。ただ、「その差を社会的に補填」するしくみに本書は言及していない。
ちなみに、第7章「地球環境」によれば、スウェーデンは世界で初めて1991年1月に炭素税(この国では二酸化炭素税と呼ばれる)を導入した。経済的手段を用いた地球温暖化対策である。
□宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書、2000)
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【参考】
「【経済】回想の宇沢弘文」
「【経済】宇沢弘文の「自己を見返す力」 ~知識人とは何か~」
「【経済】宇沢弘文が残したもの ~社会的共通資本の思想~」