枝のモズは
垂直にしか下りなくなる
獲物を追うケモノは
もう弧を描いては跳ばない
道に忘れられた魚だとか
ケモノたちの隠し穴だとか
ころがっている
林檎の歯がただとか
じつにたくさんのものが
顕れてくる
十一月の自然は
いろんな形の鍵を
浅く埋葬する
裸の思考のあとに
もうひとつの
はだかの思考がやって来る
飢餓のくだもののあとに
ふかぶかと柄をうめる果実がある
その柄は
信仰のないぼくのこころを愕ろかせる
柄について考えよう
見える
柄について
見えない
絵について
重さの 上限と
軽さの 下限について
反歌という名の蔽われていない
成熟について
ゆっくりと考えよう
いま 神の留守の
一つの柄
一つの穴
一つの 歯がた
いっぴきの魚
自然は じつに浅く理解する!
□安藤次男「人それを呼んで反歌という(十一月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【詩歌】安藤次男「食卓にて、夏の終わりに」」
「【詩歌】安藤次男「夕立」」
「【詩歌】安藤次男「碑銘」 ~敗戦忌~」
「【詩歌】安藤次男「年齢について」」
「【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」」
「【詩歌】安藤次男「球根たち」」
垂直にしか下りなくなる
獲物を追うケモノは
もう弧を描いては跳ばない
道に忘れられた魚だとか
ケモノたちの隠し穴だとか
ころがっている
林檎の歯がただとか
じつにたくさんのものが
顕れてくる
十一月の自然は
いろんな形の鍵を
浅く埋葬する
裸の思考のあとに
もうひとつの
はだかの思考がやって来る
飢餓のくだもののあとに
ふかぶかと柄をうめる果実がある
その柄は
信仰のないぼくのこころを愕ろかせる
柄について考えよう
見える
柄について
見えない
絵について
重さの 上限と
軽さの 下限について
反歌という名の蔽われていない
成熟について
ゆっくりと考えよう
いま 神の留守の
一つの柄
一つの穴
一つの 歯がた
いっぴきの魚
自然は じつに浅く理解する!
□安藤次男「人それを呼んで反歌という(十一月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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【参考】
「【詩歌】安藤次男「食卓にて、夏の終わりに」」
「【詩歌】安藤次男「夕立」」
「【詩歌】安藤次男「碑銘」 ~敗戦忌~」
「【詩歌】安藤次男「年齢について」」
「【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」」
「【詩歌】安藤次男「球根たち」」