(1)震災直後、環境省の呼びかけに対して、570余の基礎自治体や公共団体(一部事務組合)などが広域処理に協力する意向を示した。しかし、環境省の隠蔽体質、放射能汚染の実態が明らかになるにつれ、受け入れ先は次第に減少。2011年10月には、当初の10分の1以下、わずか50に減少した。
焦った環境省は、2011~2012年度にかけて、「広域処理広報事業」を大手広告代理店に委託、広報宣伝にやっきとなった。その結果、広報宣伝だけに24億円もの税金が費消された。
(2)震災ガレキの広域処理は、すべて国の補助によって賄われることとされた。環境省の2011および2012年度の災害廃棄物処理事業費は、総額で1兆円を超える。
質的には「産業廃棄物」であるはずのガレキを「一般廃棄物」と位置づけ、国が積極的に関与して処理を代行する、また、国の費用負担で自治体が処理するという方式を「がれき特措法」によって制度化し、広域処理を合法化した。
だが、全額国負担で行われる廃棄物処理は、2014年3月までに終えることを前提としている。目標期間を過ぎれば、被災自治体に廃棄物処理の負担を求める可能性がある。被災自治体に自ずと「広域処理を進めたい」という意向が働いても不思議はない。
(3)実際の処理はどうだったか。
宮城県は、沿岸部の被災自治体から出た産業廃棄物の処理を県が受託、それを大手ゼネコンに4,000億円余で一括発注した。
宮城県の全ブロックでは、廃棄物量の精査が行われる前にその処理が発注されている。しかも、参考業務価格に対する発注額は、すべて84%だった。つまり、価格に競争原理が働いていない。総額4,000億円超の税金の使い方として極めて杜撰、かつ、不明朗だ。
事態を問題視した参議院環境委員会や宮城県議会において、発注額を見直すべきだ、という指摘が相次いだ。宮城県議会は、最終的に、石巻ブロック440億円、亘理・名取ブロック処理区50億円の減額を決定した。
この頃から、廃棄物処理をゼネコンに一括発注しているにもかかわらず、同じ地域から広域処理分として東京都、静岡県、北九州市などに廃棄物が送られることへの疑問が、全国で膨らんでいった。
(4)災害廃棄物等(災害廃棄物および津波堆積物)の発生量は、この2年間、環境省が発表するたびに下方修正され、不信と混乱を招いている。
宮城県と岩手県の広域処理希望量は、発表するたびに総量が減っている。数量的には広域処理の必要性はない。
にもかかわらず、なぜ各地の自治体はガレキを欲しがるのか。
受け入れ自治体の実態を分析すると、バグフィルターの交換時期だとか、新規焼却炉や最終処分場の整備計画があったとか、既存焼却施設の更新時期が来ているとか、受け手の事情が中心で、被災地支援より自分の台所事情が優先されている。
災害廃棄物処理事業1兆円という砂糖に群がるアリは、自治体だけではない。ガレキの量を推計するコンサルタント、破砕分別などの中間処理を行う廃棄物処理業者、焼却炉メーカー、放射能測定を行う分析機関、ガレキを輸送するトラック業界や鉄道輸送会社などだ。
事実、東京都のガレキ受け入れスキームでは、産廃ルートの場合には、最終的に東電の子会社にして産廃処理業者「東京臨海リサイクルパワー」1社のみで可燃ゴミの処理が行われ、膨大な税金が投入された。
かたや、太平洋セメントは、岩手県内のガレキを1トン当たり6万円で引き取り、セメントや補助燃料に使用している。
(5)自治体や特別地方公共団体は、ガレキを受け入れれば、処理費はもとより、事務費、固定費、さらには旅費や分析費などすべてが支払われる仕組みになっている。
東京都でも、実務を都に代わって進めてきた公益財団法人東京都環境公社は、1年に1億円の事務代行費を受け取っていた。
極めつきは、詐欺まがいの復興交付金の流用だ。環境省の2012年3月15日付け通達「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」では、検討しただけで復興交付金枠での補助金が手に入る、という前代未聞のやり方で広域処理を推進しようとした。堺市は、この措置により86億円の巨額をガレキを受け入れずして手にしている【注】。
そもそも、宮城県のガレキ処理業務は、すべてブロック別に大手ゼネコンに発注済みだったはずだ。
(6)宮城県気仙沼ブロックの仮設焼却炉は、2013年3月になって、ようやく本格稼働にこぎつけた。しかし、2013年11月末で稼働を終了し、年度内に解体される。稼働するのは、わずか9ヵ月だ。
仮設焼却炉を数ヶ月延長すれば、無理に遠くへガレキを運んで処理する必要はなくなる。巨費を投じた仮設焼却炉は短期間で閉鎖し、好お行き処理を交付金で推進するのは、どうみても二重投資だ。
(7)広域処理の実施(受入量決定済みを含む)先は、1都1府13県の66件(31件が民間事業者、24件が基礎自治体、11件が特別地方公共団体)。24億円の広報費をかけ、受け入れ先に補助金を出すことにしたにもかかわらず、自治体の受け入れはわずか35件にすぎない。広域処理の失敗・破綻を示す。
何が何でもついた予算を使い切ろうとする環境省の意図が透けて見える。
(8)広域処理が始まった経緯も忘れてはならない。
環境省が2011年5月に設置した「災害廃棄物安全評価検討会」は、関係自治体や国民の参加手続きもないまま、情報公開も行わず、秘密裏に廃棄物の処理方法や安全基準などを定めた。その結果を受けて、国会はまともな審議もなく議員立法として「がれき特措法」を制定し、地方自治を踏みにじるような国主導のガレキ引き受けスキームを制度化した。
池田こみち等は、当初から、「広域処理」の必要性をまず明らかにすべきだ、と主張してきた。加えて、経済面・環境面・安全面での妥当性も第三者的に評価される必要があること、政策立案手続きの正当性(情報公開・市民参加など)に問題があることも指摘してきた。
1兆円もの税金の使い方の妥当性・正当性を検証しなくてはなるまい。
このスキームの中で火事場泥棒的に濡れてに粟となったところからは、税金を取り戻し、本来の復興に役立てなければ、納税者はもとより被災者の納得は得られない。
【注】「【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~」
□池田こみち(環境総合研究所)「予算1兆円超 破綻した災害がれき「広域処理」」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)
【参考】
「【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~」
「【原発】地権者、震災ガレキ焼却灰受け入れを拒否 ~島田市~」
「【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~」
「【原発】問題山積みの高濃度汚染ゴミ ~栃木県の最終処分場~」
「【原発】札幌市はなぜガレキ受け入れを拒否したのか ~内部被曝~」
「【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書」
「【原発】ガレキ処理はなぜ進まないのか ~環境省の「環境破壊行政」~」
「【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~」
「【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~」
「【震災】ガレキ広域処理は真の被災地支援になっているか?」
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焦った環境省は、2011~2012年度にかけて、「広域処理広報事業」を大手広告代理店に委託、広報宣伝にやっきとなった。その結果、広報宣伝だけに24億円もの税金が費消された。
(2)震災ガレキの広域処理は、すべて国の補助によって賄われることとされた。環境省の2011および2012年度の災害廃棄物処理事業費は、総額で1兆円を超える。
質的には「産業廃棄物」であるはずのガレキを「一般廃棄物」と位置づけ、国が積極的に関与して処理を代行する、また、国の費用負担で自治体が処理するという方式を「がれき特措法」によって制度化し、広域処理を合法化した。
だが、全額国負担で行われる廃棄物処理は、2014年3月までに終えることを前提としている。目標期間を過ぎれば、被災自治体に廃棄物処理の負担を求める可能性がある。被災自治体に自ずと「広域処理を進めたい」という意向が働いても不思議はない。
(3)実際の処理はどうだったか。
宮城県は、沿岸部の被災自治体から出た産業廃棄物の処理を県が受託、それを大手ゼネコンに4,000億円余で一括発注した。
宮城県の全ブロックでは、廃棄物量の精査が行われる前にその処理が発注されている。しかも、参考業務価格に対する発注額は、すべて84%だった。つまり、価格に競争原理が働いていない。総額4,000億円超の税金の使い方として極めて杜撰、かつ、不明朗だ。
事態を問題視した参議院環境委員会や宮城県議会において、発注額を見直すべきだ、という指摘が相次いだ。宮城県議会は、最終的に、石巻ブロック440億円、亘理・名取ブロック処理区50億円の減額を決定した。
この頃から、廃棄物処理をゼネコンに一括発注しているにもかかわらず、同じ地域から広域処理分として東京都、静岡県、北九州市などに廃棄物が送られることへの疑問が、全国で膨らんでいった。
(4)災害廃棄物等(災害廃棄物および津波堆積物)の発生量は、この2年間、環境省が発表するたびに下方修正され、不信と混乱を招いている。
宮城県と岩手県の広域処理希望量は、発表するたびに総量が減っている。数量的には広域処理の必要性はない。
にもかかわらず、なぜ各地の自治体はガレキを欲しがるのか。
受け入れ自治体の実態を分析すると、バグフィルターの交換時期だとか、新規焼却炉や最終処分場の整備計画があったとか、既存焼却施設の更新時期が来ているとか、受け手の事情が中心で、被災地支援より自分の台所事情が優先されている。
災害廃棄物処理事業1兆円という砂糖に群がるアリは、自治体だけではない。ガレキの量を推計するコンサルタント、破砕分別などの中間処理を行う廃棄物処理業者、焼却炉メーカー、放射能測定を行う分析機関、ガレキを輸送するトラック業界や鉄道輸送会社などだ。
事実、東京都のガレキ受け入れスキームでは、産廃ルートの場合には、最終的に東電の子会社にして産廃処理業者「東京臨海リサイクルパワー」1社のみで可燃ゴミの処理が行われ、膨大な税金が投入された。
かたや、太平洋セメントは、岩手県内のガレキを1トン当たり6万円で引き取り、セメントや補助燃料に使用している。
(5)自治体や特別地方公共団体は、ガレキを受け入れれば、処理費はもとより、事務費、固定費、さらには旅費や分析費などすべてが支払われる仕組みになっている。
東京都でも、実務を都に代わって進めてきた公益財団法人東京都環境公社は、1年に1億円の事務代行費を受け取っていた。
極めつきは、詐欺まがいの復興交付金の流用だ。環境省の2012年3月15日付け通達「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」では、検討しただけで復興交付金枠での補助金が手に入る、という前代未聞のやり方で広域処理を推進しようとした。堺市は、この措置により86億円の巨額をガレキを受け入れずして手にしている【注】。
そもそも、宮城県のガレキ処理業務は、すべてブロック別に大手ゼネコンに発注済みだったはずだ。
(6)宮城県気仙沼ブロックの仮設焼却炉は、2013年3月になって、ようやく本格稼働にこぎつけた。しかし、2013年11月末で稼働を終了し、年度内に解体される。稼働するのは、わずか9ヵ月だ。
仮設焼却炉を数ヶ月延長すれば、無理に遠くへガレキを運んで処理する必要はなくなる。巨費を投じた仮設焼却炉は短期間で閉鎖し、好お行き処理を交付金で推進するのは、どうみても二重投資だ。
(7)広域処理の実施(受入量決定済みを含む)先は、1都1府13県の66件(31件が民間事業者、24件が基礎自治体、11件が特別地方公共団体)。24億円の広報費をかけ、受け入れ先に補助金を出すことにしたにもかかわらず、自治体の受け入れはわずか35件にすぎない。広域処理の失敗・破綻を示す。
何が何でもついた予算を使い切ろうとする環境省の意図が透けて見える。
(8)広域処理が始まった経緯も忘れてはならない。
環境省が2011年5月に設置した「災害廃棄物安全評価検討会」は、関係自治体や国民の参加手続きもないまま、情報公開も行わず、秘密裏に廃棄物の処理方法や安全基準などを定めた。その結果を受けて、国会はまともな審議もなく議員立法として「がれき特措法」を制定し、地方自治を踏みにじるような国主導のガレキ引き受けスキームを制度化した。
池田こみち等は、当初から、「広域処理」の必要性をまず明らかにすべきだ、と主張してきた。加えて、経済面・環境面・安全面での妥当性も第三者的に評価される必要があること、政策立案手続きの正当性(情報公開・市民参加など)に問題があることも指摘してきた。
1兆円もの税金の使い方の妥当性・正当性を検証しなくてはなるまい。
このスキームの中で火事場泥棒的に濡れてに粟となったところからは、税金を取り戻し、本来の復興に役立てなければ、納税者はもとより被災者の納得は得られない。
【注】「【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~」
□池田こみち(環境総合研究所)「予算1兆円超 破綻した災害がれき「広域処理」」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)
【参考】
「【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~」
「【原発】地権者、震災ガレキ焼却灰受け入れを拒否 ~島田市~」
「【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~」
「【原発】問題山積みの高濃度汚染ゴミ ~栃木県の最終処分場~」
「【原発】札幌市はなぜガレキ受け入れを拒否したのか ~内部被曝~」
「【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書」
「【原発】ガレキ処理はなぜ進まないのか ~環境省の「環境破壊行政」~」
「【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~」
「【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~」
「【震災】ガレキ広域処理は真の被災地支援になっているか?」
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