語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】ガレキ広域処理の破綻 ~復興予算のムダ遣い~

2013年04月16日 | 震災・原発事故
 (1)震災直後、環境省の呼びかけに対して、570余の基礎自治体や公共団体(一部事務組合)などが広域処理に協力する意向を示した。しかし、環境省の隠蔽体質、放射能汚染の実態が明らかになるにつれ、受け入れ先は次第に減少。2011年10月には、当初の10分の1以下、わずか50に減少した。
 焦った環境省は、2011~2012年度にかけて、「広域処理広報事業」を大手広告代理店に委託、広報宣伝にやっきとなった。その結果、広報宣伝だけに24億円もの税金が費消された。

 (2)震災ガレキの広域処理は、すべて国の補助によって賄われることとされた。環境省の2011および2012年度の災害廃棄物処理事業費は、総額で1兆円を超える。
 質的には「産業廃棄物」であるはずのガレキを「一般廃棄物」と位置づけ、国が積極的に関与して処理を代行する、また、国の費用負担で自治体が処理するという方式を「がれき特措法」によって制度化し、広域処理を合法化した。
 だが、全額国負担で行われる廃棄物処理は、2014年3月までに終えることを前提としている。目標期間を過ぎれば、被災自治体に廃棄物処理の負担を求める可能性がある。被災自治体に自ずと「広域処理を進めたい」という意向が働いても不思議はない。

 (3)実際の処理はどうだったか。
 宮城県は、沿岸部の被災自治体から出た産業廃棄物の処理を県が受託、それを大手ゼネコンに4,000億円余で一括発注した。
 宮城県の全ブロックでは、廃棄物量の精査が行われる前にその処理が発注されている。しかも、参考業務価格に対する発注額は、すべて84%だった。つまり、価格に競争原理が働いていない。総額4,000億円超の税金の使い方として極めて杜撰、かつ、不明朗だ。
 事態を問題視した参議院環境委員会や宮城県議会において、発注額を見直すべきだ、という指摘が相次いだ。宮城県議会は、最終的に、石巻ブロック440億円、亘理・名取ブロック処理区50億円の減額を決定した。
 この頃から、廃棄物処理をゼネコンに一括発注しているにもかかわらず、同じ地域から広域処理分として東京都、静岡県、北九州市などに廃棄物が送られることへの疑問が、全国で膨らんでいった。

 (4)災害廃棄物等(災害廃棄物および津波堆積物)の発生量は、この2年間、環境省が発表するたびに下方修正され、不信と混乱を招いている。
 宮城県と岩手県の広域処理希望量は、発表するたびに総量が減っている。数量的には広域処理の必要性はない。
 にもかかわらず、なぜ各地の自治体はガレキを欲しがるのか。
 受け入れ自治体の実態を分析すると、バグフィルターの交換時期だとか、新規焼却炉や最終処分場の整備計画があったとか、既存焼却施設の更新時期が来ているとか、受け手の事情が中心で、被災地支援より自分の台所事情が優先されている。
 災害廃棄物処理事業1兆円という砂糖に群がるアリは、自治体だけではない。ガレキの量を推計するコンサルタント、破砕分別などの中間処理を行う廃棄物処理業者、焼却炉メーカー、放射能測定を行う分析機関、ガレキを輸送するトラック業界や鉄道輸送会社などだ。
 事実、東京都のガレキ受け入れスキームでは、産廃ルートの場合には、最終的に東電の子会社にして産廃処理業者「東京臨海リサイクルパワー」1社のみで可燃ゴミの処理が行われ、膨大な税金が投入された。
 かたや、太平洋セメントは、岩手県内のガレキを1トン当たり6万円で引き取り、セメントや補助燃料に使用している。

 (5)自治体や特別地方公共団体は、ガレキを受け入れれば、処理費はもとより、事務費、固定費、さらには旅費や分析費などすべてが支払われる仕組みになっている。
 東京都でも、実務を都に代わって進めてきた公益財団法人東京都環境公社は、1年に1億円の事務代行費を受け取っていた。
 極めつきは、詐欺まがいの復興交付金の流用だ。環境省の2012年3月15日付け通達「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」では、検討しただけで復興交付金枠での補助金が手に入る、という前代未聞のやり方で広域処理を推進しようとした。堺市は、この措置により86億円の巨額をガレキを受け入れずして手にしている【注】。
 そもそも、宮城県のガレキ処理業務は、すべてブロック別に大手ゼネコンに発注済みだったはずだ。

 (6)宮城県気仙沼ブロックの仮設焼却炉は、2013年3月になって、ようやく本格稼働にこぎつけた。しかし、2013年11月末で稼働を終了し、年度内に解体される。稼働するのは、わずか9ヵ月だ。
 仮設焼却炉を数ヶ月延長すれば、無理に遠くへガレキを運んで処理する必要はなくなる。巨費を投じた仮設焼却炉は短期間で閉鎖し、好お行き処理を交付金で推進するのは、どうみても二重投資だ。

 (7)広域処理の実施(受入量決定済みを含む)先は、1都1府13県の66件(31件が民間事業者、24件が基礎自治体、11件が特別地方公共団体)。24億円の広報費をかけ、受け入れ先に補助金を出すことにしたにもかかわらず、自治体の受け入れはわずか35件にすぎない。広域処理の失敗・破綻を示す。
 何が何でもついた予算を使い切ろうとする環境省の意図が透けて見える。

 (8)広域処理が始まった経緯も忘れてはならない。
 環境省が2011年5月に設置した「災害廃棄物安全評価検討会」は、関係自治体や国民の参加手続きもないまま、情報公開も行わず、秘密裏に廃棄物の処理方法や安全基準などを定めた。その結果を受けて、国会はまともな審議もなく議員立法として「がれき特措法」を制定し、地方自治を踏みにじるような国主導のガレキ引き受けスキームを制度化した。
 池田こみち等は、当初から、「広域処理」の必要性をまず明らかにすべきだ、と主張してきた。加えて、経済面・環境面・安全面での妥当性も第三者的に評価される必要があること、政策立案手続きの正当性(情報公開・市民参加など)に問題があることも指摘してきた。
 1兆円もの税金の使い方の妥当性・正当性を検証しなくてはなるまい。
 このスキームの中で火事場泥棒的に濡れてに粟となったところからは、税金を取り戻し、本来の復興に役立てなければ、納税者はもとより被災者の納得は得られない。

 【注】「【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~

□池田こみち(環境総合研究所)「予算1兆円超 破綻した災害がれき「広域処理」」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~
【原発】地権者、震災ガレキ焼却灰受け入れを拒否 ~島田市~
【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~
【原発】問題山積みの高濃度汚染ゴミ ~栃木県の最終処分場~
【原発】札幌市はなぜガレキ受け入れを拒否したのか ~内部被曝~
【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書
【原発】ガレキ処理はなぜ進まないのか ~環境省の「環境破壊行政」~
【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~
【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~
【震災】ガレキ広域処理は真の被災地支援になっているか?
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【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~

2013年04月15日 | 震災・原発事故
 (1)環境省のガレキ広域処理の予算は1兆円超。
 広域処理の8割を占める宮城県は、ガレキ量が8割も下方修正され、広域処理が終了した。
 岩手県もガレキ量が次々と減った。<例>静岡県が受入を予想していた23,500トンのうち、たった14%(3,201トン)しか木屑がなかった。
 静岡県、北九州市、東京都は、1年も前倒しして今年3月末でガレキ処理を中止した。
 しかし、全国的に終了となる中、大阪市は今年2月からガレキ(岩手県宮古地区)焼却を始めた。富山県高岡市は、3月21日、ガレキ(岩手県山田町)の処理に係る新たな予算が確保され、2012年度だけで18億円もの復興予算を受け取る。富山市でも、ガレキ処理を進めようとしている。
 富山県全体で6,500トンの可燃物を受け入れることになっているが、本当に受け入れるだけの可燃物はあるか。
 廃棄物業界では、震災以前から廃棄物の量は実際の1.5倍で契約するのが通例だ。【山田町の選別施設の従業員】

 (2)ガレキ処理の大きな問題は、カネの流れが不透明に過ぎることだ。
  (a)実際にはガレキを受け入れていない8自治体・団体に、「ガレキ受け入れの検討だけで」、176億円もの復興予算が交付された。北海道中北空知廃棄物処理広域連合28.3億円、秋田県湾上市/秋田県鹿角広域行政組合6.0億円、埼玉県川口市36.4億円、群馬県玉村町/甘楽西部環境衛生施設組合15.3億円、京都府綾部市3.9億円、大阪府堺市86.6億円。・・・・実は、このほかに群馬県の伊勢崎市や高崎市も含まれていたのだが、「検討しただけで交付金」とマスコミが騒ぎ、3月27日、環境省は両市への交付金を復興予算から一般財源へと変更した。
  (b)ガレキを受け入れた富山県高岡市は、ガレキ受け入れと関係のない新しい焼却場を建設するために、ガレキ処理費用の60倍もの復興予算が交付された。
  (c)①大阪府民1,196人が府に対してガレキ予算の公平性を問う住民監査請求を行ったが、却下された。②大阪市民401人が市に対してガレキ予算の公平性を問う住民監査請求を行ったが、却下された。③富山県民133人が県に対してガレキ予算の公平性を問う住民監査請求を行ったが、却下された。④岩手県は、ガレキの実際量を資料開示請求した県民に対し、黒塗りの資料を渡した。
  (d)①大阪市は、昨秋から今年にかけて、ガレキ反対を訴える市民10数人を逮捕させた。②富山市長は、昨年12月にガレキ焼却灰の搬入強行に反対した母親ら10数人に対し、今年2月、告訴した。

 (3)環境省は、ガレキを受け入れ、または受け入れを検討した市町村および団体に、「循環型社会形成推進交付金」(処分場や焼却場を建設、整備するための補助金)を、復興予算を財源として交付した。
 交付金を交付された自治体の多くは、総務省からの復興予算を財源とした「震災特別復興地方交付税」も併せて交付される。
 実際にガレキを受け入れる自治体や産廃業者には、ガレキ処理費用や輸送費も入るから、交付金・交付税の額よりもさらに多いカネが流れ込む。ガレキ処理は、カネのなる木なのであった。

 (4)日本には世界の3分の2の焼却場がある。産廃業者と自治体には癒着した関係がある(焼却利権)、とされている【注】。
 ガレキの広域処理をめぐる騒動は、1兆円もの復興予算に浮かれた環境省が全国に交付しまくり、元々存在した焼却利権が震災にかこつけて一稼ぎした、という構図だ。

 【注】「【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~

□増山麗奈(画家・ジャーナリスト)「がれき受け入れを検討しただけで176億円」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【原発】地権者、震災ガレキ焼却灰受け入れを拒否 ~島田市~
【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~
【原発】問題山積みの高濃度汚染ゴミ ~栃木県の最終処分場~
【原発】札幌市はなぜガレキ受け入れを拒否したのか ~内部被曝~
【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書
【原発】ガレキ処理はなぜ進まないのか ~環境省の「環境破壊行政」~
【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~
【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~
【震災】ガレキ広域処理は真の被災地支援になっているか?
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【食】マンガに登場する料理を食べる ~味覚の開拓~

2013年04月14日 | 社会
 (1)第13回「国際マンガサミット」(2012年11月7~11日、於鳥取県米子市)の会議テーマは「漫画に描かれた食文化」だった。
 日中韓などの参加者は、それぞれの食文化と、料理を題材にした漫画作品を報告した。ただし、多くはレシピや調理場面を漫画で紹介するものだ。奇想天外な登場人物、ドラマ性のある作品は余りない。

 (2)中国は美食大国で、食は重要文化の一部分だが、食をテーマにした漫画はまだ少ない。
 日本では、世界でも稀れな「食漫画」というジャンルが確立されているらしい。
 始まりは、物語に登場する料理や食事の印象的なシーンだ。「おそ松くん」に出てきた“チビ太のおでん”とか。
 1980年代に入ると、次第に料理や料理人を主題にした作品が現れた。「美味しんぼ」「クッキングパパ」「「ザ・シェフ」といった作品が続々世に出ると、一気に食漫画はブームになった。特殊な料理人の活躍yた、グルメ対決、食をめぐる人間模様に環境問題まで、漫画は見事に食文化をエンターテインメントに仕立て上げた。
 バブル崩壊後は、日常の身近な食事風景を描く「きのう何食べた?」「花のズボラ飯」といった作品も支持されるようになる。
 戦後、腹をすかせた日本の子どもたちは、漫画で食べものを楽しんでいた。飽食の時代になり、食漫画はさらに多様化している。【倉田よしみ・「味いちもんめ」作者】

 (3)漫画文化は、料理を題材に取り込むだけにとどまらなくなった。食漫画は深化し、実社会の食生活に影響力を持ち始めた。
 その一つが「マンガ食堂」だ。漫画の中の料理を実際に際限する試みだ。元は毎日2,000~3,000人が訪れる人気ブログで、書籍化されている。再現した「マンガ飯」を食べるイベントも行われている。ブログ開設(2008年)以来取り上げた110作品から300超のマンガ飯を作り、今も継続中。<例>「ドラえもん」の大根シチュー、「庖丁人味平」のブラックカレー、「3月のライオン」のいなり寿司。
 好きだった漫画の、あの中のものが食べられるという楽しさだ。マンガ飯には2系統あって、手順が載っているものは漫画どおり忠実に再現する。物語の中に絵だけ出ているものは、1コマ2コマの情報から味を自分で想像し、補充する。ただし、漫画はレシピ本としては読まない。漫画として楽しめないと。【梅本ゆうこ・ブログ管理人】
 古い時代や外国の知らない料理ならば、資料に当たって再現する。荒唐無稽なため断念したレシピもある。
 昨年末に都内で開催した実食イベントには30人が参加。「まんが道」に出た焼酎のサイダー割り“チューダー”で乾杯し、「美味しんぼ」の主人公がうまさを「死ぬ!」と語った“しめ鯖サンド”を頬張った。
 漫画の肉料理をまねてメニューにするレストラン、漫画の中の架空カレーを商品化した食品メーカーもある。漫画は、その楽しみ方に「食べる」を加えた。

 (4)漫画風デザインをほどこした「マンガ皿」も話題になっている。
 買う人は広い年齢層だ。漫画は誰にでもわかる。でも、皿の漫画は新鮮。コミュニケーション・ツールとして、海外にも通用する。【太刀川えいすけ・「Comicalu」(横浜市)】
 世代も国境も超えて漫画文化は浸透する。漫画を毎日の生活に取り入れようとすれば、娯楽性も求められる食卓空間がうってつけなのだ。
 制作者は、ツタイミカ(デザイナー)で、京都工芸繊維大学の卒業制作だったが、マンガ皿として昨年販売すると、売れ行き好調なのだ。音や状態をオノマトペで表現し、独特の線で対象をクローズアップし、さらにデフォルメ効果を加える。これは漫画の常套手段だ。日本人が好む言語外の表現だ。料理を作った人の気分や空気もアシストできる。
 “シャキーン”と切られる海老フライ。マンガ皿の上で料理は漫画キャラになる。
 イタリアレストラン「HiRosofi」(東京都中央区)は、コース料理のどれか一品にマンガ皿を使い始めた。

□木村聡(フォトジャーナリスト)「マンガのおいしい食べ方」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)
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【原発】放射能と東京オリンピック招致

2013年04月13日 | 震災・原発事故
 (1)招致計画では、東京湾臨海部のお台場海浜公園で、トライアスロン、マラソンおよび水泳が予定されている。海の森水上競技場で、カヌー(スプリント)、ボートが予定されている。

 (2)山崎秀夫・近畿大学教授(環境解析学)は、2011年から12年にかけて、東京湾の26地点で,、海底土のセシウムを測定した。その結果、江戸川や荒川の河口に高濃度の「ホットスポット」が存在することがわかった。
 競技中に、汚染された底泥や海水を飲んでしまった場合の内部被曝は、人体への影響がよく分かっていない。実際に内部被曝を受けているかを評価するのも難しい。
 福島第一原発事故後の2011年3月21、22日に首都圏に降り注いだセシウムなどの放射性物質が江戸川や荒川などから東京湾に流入して海底にどの程度たまるのか、文部科学省のデータをもとにシミュレーションを行ったところ、江戸川・荒川河口でセシウムは平均300Bq/kg、局所的には4,000Bq/kg以上の高濃度になることが予測された。この予測は、実際の観察とおおむね一致する。なお、今後3年間の放射性物質は増加し続ける。【山崎庸亮・京都大学防災研究所准教授】 
 山崎准教授の調査では、ヨットが予定されている荒川河口の若洲海浜公園沖では、552Bq/kgだった。
 ヨット競技では、沈没がよく起き、マストが海底の泥を巻き上げ、セールにも泥が付くことがよくある。その底泥中のセシウム濃度が高ければ、全く安全、とは言えない。【山崎准教授】
 海底の泥の放射性物質の安全基準はない。ガレキやゴミの焼却灰の基準を準用すると、事故前の放射性物質として扱う必要がないクリアランスレベルは100あるいは1,000Bq/kg以下だったので、1,000Bq/kgを超えている東京湾の底泥は「立派な」低レベル放射性廃棄物に相当する。【山崎准教授】

 (3)臨海部の陸域の放射能濃度はどうか【注】。
 東京都内のモニタリングポストはわずか8ヵ所で、オリンピック会場に近いのは江東区青海しか含まれていない。【福田至・東京都スポーツ振興局施設計画担当部長】
 都は、福島原発事故後の2011年6月に都内100ヵ所で測定したが、その時もオリンピック開催予定地に近いモニタリングポストは有明2丁目だけだった。その値は、地上1mで0.09μSv/時だった。これらの数値は、IOCに提出した立候補ファイルには記載されていない。
 「臨界都民連」は、昨年7月、オリンピック会場予定地の放射線量を測定した。地上1mで最高だったのが、水泳、シンクロなどが行われる辰巳の森海浜公園の0.146μSv/時だった。

 (4)(3)の数値をどう評価すべきか。
 東京の場合、もともとの空間線量は0.04~0.07μSv/時だったと考えられ、増加分はセシウムなどの人工放射性核種による汚染と言えるのではないか。【山崎准教授】
 このまま事態が平穏に推移すれば、選手や観客の健康上のダメージは実証不可能なレベルに止まるだろう。しかし、さらなる原発トラブルや、被害が予想される地震が、2020年までえ全く起きない保証はない。特に、外国人は放射線被曝に日本人より敏感な人が多い。地震などは1回も体験していない外国人は稀れではない。これらのパニック要因を軽視し、誘致に狂奔するのは正気の沙汰ではない。危険は危険として立候補ファイルにも載せ、きちんと発信することは招致国としての当然の責任だ。【坂巻幸雄・元通産相工業技術院地質調査所主任研究員】

 (5)なお、都は、2003年度から3年間、お台場海浜公園で、シルトフェンスで仕切った海域に海水浄化プラントで浄化した海水を流し、水質改善の実験をした。一定の効果はあったが、それでも降雨時には糞便性大腸菌が急増し、環境省の海水浴場の基準に適合しなかった。東京湾の筋室に詳しい研究者は、合流式下水道の越流水対策でひどい汚染はなくなったが、今も降雨の時は安心して水遊びができる状況ではない、という。
 2020年のオリンピックとパラリンピックは、7月下旬から9月上旬に開かれる予定だ。1964年の東京大会は10月開催だった。
 放射能と大腸菌の海で泳がせ、酷暑の中で競技をさせる。それが、猪瀬直樹・知事のいわゆる「選手本位」の現実だ。 

 【注】
【原発】大手スーパーの真鱈から放射能検出 ~関東・東海地方~
【原発】東京湾の汚染
【震災】原発>東京湾に放射能汚泥が堆積中 ~海の汚染~
【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能
【震災】原発>食卓の放射能汚染、2012
【震災】原発>海洋汚染の拡大・・・・表層から海底へ、海のホットスポット、陸から海へ
【震災】原発>海洋汚染 ~グリーンピースの調査・水産学者の「原子力村」~
【震災】原発>海洋汚染の隠蔽
【震災】原発>海洋汚染の隠蔽・追記
【震災】原発>汚染食品のデータをどう読むか
【震災】原発>海洋汚染の拡大・・・・表層から海底へ、海のホットスポット、陸から海へ

□永尾俊彦(ルポライター)「ルポ 問題だらけの東京オリンピック招致」(「世界」2013年5月号)
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【社会】フランスの「職場いじめ」対策 ~日本社会を蝕むパワハラ(4)~

2013年04月12日 | 社会
●2002年に導入された週35時間労働制、5週間のヴァカンスなど、フランス人はそもそも日本人と働き方が違う。
 昨年、日本で調査して驚いた。職場に上司が残っていると先に帰らない。日曜日も働く。8日しか夏休みがない。フランス人は1日中仕事をするなんて、できない。日本は組織への順応の度合い、職場との結びつき方が独特な国だ。精神的ハラスメントを規定する法律があろうと無かろうと、こうした労働文化ゆえに解決が難しいこともあろう。 

●フランスでは過労死はありえない?
 まだ無い。ただ、週35時間制も業界を問わず強制した結果、仕事量は従来どおりで、実質的な労働強化を招いた面もある。39時間制に戻る議論も出ている。今やフランスも日本人に負けない超生産的働き手だ(笑)。
 ITの進化が家で働くことを可能にしたため、私生活が侵食される弊害も出ている。私生活を大切にするフランス文化の転覆。それだけ精神面の健康も脅かされているわけだ。

●その労働環境の変化の中にモラル・ハラスメントがある。日本でいうパワハラと同じか。
 北欧や英語圏では、セクハラや身体的暴力も含む「ブリング」、ドイツでは組織的暴力に結びつく「モビング」、ラテン語圏は「モラハラ」だ。
 フランスでは、身体的暴力や差別については、2001年以降の法改正で予防・禁止措置があるので、モラハラは基本的に個人間の精神的ハラスメントが対象だ。仕事で受ける通常のストレス、経営手法的ハラスメントまで含む心理的・社会的リスク(精神衛生に重きを置く健康管理政策の概念)の一部と見なされている。ただし、2009年には、経営手法も「組織的パワハラ」と見なしうる、という定義拡大の判例が出ている。
 日本では、1990年代に岡田康子が「パワハラ」と造語したが、上司から部下へのハラスメントが多い実状を反映したヒエラルキー重視の政治的定義だった。

●フランスでは、どのようにモラハラが問題化し、法整備されたのか。
 1998年、精神科医マリー=フランス・イリゴイエンヌ『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』が大論争を引き起こした。名づけられないでいた職場でのいじめが、「モラハラ」という言葉で語られることによって社会化した、という意義があった。
 そこから法制化の動きが生まれ、2002年、「社会近代化法」が成立した。禁止規定にいわく、「繰り返されるモラハラにより、権利と尊厳を侵され、心身の健康を害され、職業生活を危うくする労働条件の劣化を被ってはならない」。
 職場でも健康と尊厳は守られなければならない。それは譲渡不可能な基本的人権だ。
 そもそも労働法でも、「労働者である以前に人間である」という人権尊重の民法の原則を繰り返している。「労働者は、その労働力を雇用者のために提供するが、その人格を与えるのではない」と。

●法整備により、企業側はどんな義務と責任を負うのか。
 モラハラ対策の規則整備を企業に義務づけた。特にモラハラでの起訴が急増した2004年以降の判例は、「知るべきだったのに知らなかった」「知っていたのに対策を講じなかった」「対策を講じたが、失敗した」・・・・場合の使用者責任がいずれも問われるようになった。 
 なお、被害者に証明責任はなく、加害者・使用者側に反証責任がある。「訴えられた要件はモラハラに当たらない」と立証しなければならない。

●予防的な仲介者としては?
 「安全衛生労働条件委員会」、産業医、労働監督官、内部告発者として行動する権利を持つ「従業員代表委員」が、集団的な予防措置をとるのに有効だ。日本では仲介者の存在はまだ形式的なものなので、もっと彼らに力を与えるべきだ。 

●モラハラによる自殺は?
 ここ数年の世界保健機構(WHO)の調べでは、日本の自殺者は10万人当たり23~24人。フランスは17人前後で、欧州では高いほうだ。ただし、仕事が要因の自殺は新しい現象だ。自殺理由を特定できる統計がまだないので詳細は不明だが、最近ではモラハラ解決に携わりながら企業に対して有効な手が打てなかった労働監督官が、無力感から自殺したケースもある。事態の深刻さを物語っている。

●民営化後のフランス・テレコム、ラ・ポスト、ルノーでも衝撃的な自殺が続いた。
 フランス・テレコムは1996年に民営化され、国が多数株主でなくなった2004年以降は、ディディエ・ロンバール社長(当時)が非常に抑圧的で攻撃的な経営管理を導入し、公務員文化で働いてきた人を追い詰めた。
 徹底的な競争原理による社員の孤立化、適性無視の転勤、異動の強制、3年間で22,000人をリストラ・・・・50人以上が自殺した。異動を告げられた会議の場で割腹自殺を試みた者もいた。
 ロンバール前社長ら幹部3人が、複数の労組から刑事告発されている。すでに予審が始まり、経営手法を組織的モラハラとする容疑で、3人への尋問も行われた。労組側は、この前進を歓迎しながらも、モラハラだけでは事実の重さに見合わないとし、「生命を危機にさらした」罪としても訴追を求めている。
 これらは日本の過労死と違い、経営手法がハラスメントになった事例だ。

●経営手法が人を殺す。まさに映画「カレ・ブラン」だ。
 まだ見てないが、ボルドーの弁護士会で映画「ドゥ・ボン・マタン」(2001年)を上映し、講演したことがある。銀行員が上司を殺した末に自殺した実際の事件を描き、非人間的な経営手法がいかに人間を追い詰めるかを示した秀作だ。ますます攻撃的になる経営手法は、本当に問題だ。
 人が仕事に適応するのではなく、仕事が人に適応しなければならない。それは、欧州での共通の権利なのだが。ルノーのカルロス・ゴーン会長の生産性至上主義の発言を聞いていると背筋が凍る。
 ルノーでも自殺が相次いだが、ある技術者が苛酷な目標に耐えられず、投身自殺したとき、なんと現場検証に来た刑事が、遺体のポケットから携帯を出し妻に連絡した、という。それまで会社側は家族に事件を知らせていなかった。精神的に不安的になっていた夫を心配し、妻が朝から会社に問い合わせていたのに。事件後、会社から返却されたパソコンのデータは、すべて消されていた。さらに、「心理学的剖検」(家族・知人などへの聞き取りを含む自殺原因の調査・分析)を操作し、私生活での悩みで自殺した、と見せかけるよう企んだ。

●抑圧的な経営で社員の精神を追い込むと、逆に利益損失になる、という英国の研究発表もあったが。
 フランスでも「競争力」や「コスト」などの言葉で、労働者の健康問題が語られ始めている。解雇者や病欠者が多いと、結局は高くつく。昨年から、経営者養成のエリート校でモラハラ予防の重要性が教育され始めた。労働者が健康で休まない方が利益になるのだ、と。
 また、経営者教育とは別に、中学校でも教えるようになった。子どものうちから、人権を尊重する労働条件を学び考えるのはとてもよいことだ。

□ロイック・ルルージュ(ボルドー第4大学教員)/聞き手・構成:中村富美子(ジャーナリスト)「職場における精神的ハラスメントが社会問題になっているフランスの現状と対策を聞く ~日本社会を蝕むパワーハラスメント~」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)

 【参考】
【社会】「職場いじめ」の事例 ~日本社会を蝕むパワハラ(1)~
【社会】「職場いじめ」の傾向と対策 ~日本社会を蝕むパワハラ(2)~
【社会】「職場いじめ」対策最前線 ~日本社会を蝕むパワハラ(3)~
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【社会】「職場いじめ」対策最前線 ~日本社会を蝕むパワハラ(3)~

2013年04月11日 | 社会
Q:2012年1月、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が職場いじめを定義したが、事態は依然として深刻だ。
A:相変わらず職場いじめは減らないが、公的機関の報告書で初の定義づけをしたことで全体像が明確になり、相談しやすくなった、と思う。今後は相談の質も変わってくるのではないか。

Q:円卓会議の定義づけについて、被害対象の範囲がEUなどに比べて狭いのではないか、という指摘がある。
A:厚労省としては、今回の円卓会議の取り組みを最初の一歩と捉えているようだ。まずは深刻なところから改善するため、今回のような議論、定義になった。

Q:新定義に係る企業の評判はいかに?
A:文言の中に「繰り返し」が入っていない。「一度でもパワハラか」「一体、どの点がハラスメントに当たるのか」が不明瞭だ、という声もある。ただ、私としては、「指導」と「ハラスメント」は根本的に違うと思う。「指導」は相手に成長してもらいたい、というのが大前提だ。職場いじめは軸足が自分で、「あんなに言ったのに」と思っていても、成長を促すものでなければ自己満足で、指導ではない。一方、管理職からは、「相手が不快に思うことがハラスメントに当たれば、指導ができなくなる」という悩みも届いている。

Q:「クオレ・シー・キューブ」では年間300回ほど研修依頼があるそうだが?
A:依頼は年々増えている。企業ごとに異なるが、主に経営者、管理職、一般社員、相談窓口担当者向けなどの研修を行っている。最も回数の多い管理職向けでは、「職場いじめ」の定義、「指導」との違いなどを紹介し、指導場面のロールプレーイングでは実際に被害を体感してもらう。組織委に職場いじめの相談を持ち込まれた加害者向けには更生プログラムもある。自己チェックや行為の再現で問題を認識してもらう。

Q:企業は、職場いじめに対し、どう対応すればよいか。
A:経営者がハラスメントによる損失を理解し、自分の言動に注意するとともに、組織全体の意識改革を行うことが必要だ。労働者はハラスメントを受けることで仕事へのモチベーションや効率が下がる。その労働者に辞められれば、それまでの教育時間や、代わりの人にかける教育時間が損失になってしまう。何より、ハラスメントが社会に知られたときのイメージダウンや訴訟リスクなど被害は甚大だ。特に中小企業ではトップ自らハラスメントを働いている可能性もある。「労働者の尊厳や人格を侵害してはならない」のは大前提だが、ハラスメント帽子活動は長い目で見れば、会社の利益につながる、という意識で取り組むことが重要だ。

□語り手:岡田康子(厚労省の円卓会議委員)/聞き手:松前陽子(ジャーナリスト)「「クオレ・シー・キューブ」代表に聞く ~日本社会を蝕むパワーハラスメント~」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)

    *

 (1)ベルギーは、世界で最も対策が進んでいる、とされる。ベルギーでは、労働におけるモラルハラスメントは、「企業内外において、言葉、脅し、行動、身振りや書面によって、労働の遂行の際に、人格、尊厳、肉体的または心理的な健全性を損なうことを目的とし、あるいは効果をもたらし、雇用を危険にさらし、もしくは威嚇的な、敵対的な、品位を貶める、屈辱的なあるいは攻撃的な環境をもたらす、あらゆるいやがらせ行為」・・・・と包括的に定義されている。
 さらに、「労働における暴力、モラルハラスメントあるいはセクシャルハラスメントに関する法律」で、企業に防止相談員と専門員の設置を義務づけている(防止相談員は従業員数50人未満なら外部の専門機関に委嘱可能)。担当者はハラスメントに関する専門的な知識や問題解決能力が必要とされ、教育も受ける。法律上、被害者の訴えに対する義務があり、守秘義務もある。

 (2)日本では、窓口が上司で、充て職的な委員もあり、教育を受けておらず、何の権限もない。
 実態調査も、多くの場合、実施する企業や組合が、良好な関係を維持して、保護する立場にある構成員を対象としているので、相談窓口も分からず、泣き寝入りせざるを得ないような被害の実態を的確に反映しているとはいえない。
 だから、そうした行政機関や企業・労働組合から見放された被害者の存在を重視しなくてはならない。
 問題は、明確な理念や方向性のないまま、「職場いじめ」の政策が、現状の国際的にも通用しない「パワハラ」の概念をベースに進められていることだ。その結果、「職場いじめ」が構造的問題であり、企業風土や経営的課題である、という視点を欠いている。予防や解決における使用者責任を明確化することを避けてしまっている。
 「職場いじめ」問題を個別的な事象に還元し、個々の当事者の役割や対応を重視して、予防・解決しようとしているところに重大な問題点がある。

□大和田敢太(滋賀大学教授)/まとめ:松前陽子(ジャーナリスト)「被害者軽視の認識自体が問題だ ~日本社会を蝕むパワーハラスメント~」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)

 【参考】
【社会】「職場いじめ」の事例 ~日本社会を蝕むパワハラ(1)~
【社会】「職場いじめ」の傾向と対策 ~日本社会を蝕むパワハラ(2)~
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【社会】「職場いじめ」の傾向と対策 ~日本社会を蝕むパワハラ(2)~

2013年04月10日 | 社会
 (1)都道府県の労働局などにある総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」相談は、2002年度は6,627件だったが、2011年度には45,939件まで膨れ上がった。これはセクシャルハラスメントの3倍以上の数値だ。
 東京都が都内6ヵ所で開いている労働相談情報センターの相談は、項目別の「職場の嫌がらせ」相談が増加し、2009年度(7,113件)と2011年度(7,346件)では、上位3位の定席だった「賃金不払」を抜き、「退職」「解雇」に次いで3位に浮上。2012年度は上半期だけで3,943件、昨年度の件数を上回る勢いだ。
 一方、厚生労働省が2012年度末に発表した4,580社(従業員9,000人)対象の「職場のパワーハラスメントに関する実体調査報告書」によれば、過去3年間に「パワハラの相談を受けたことがある」と回答した企業は座延滞の45.2%だった。
 日本労働弁護団のホットラインの無料相談で、職場いじめの被害相談が急増し始めたのは2004年ごろから。相談内容の推移をみると、1999年から2000年ごろ、大量リストラの相談が増加。残った従業員に業務のしわ寄せがいき、長時間労働に関する相談が増えた。企業が成果主義を導入したことで関連の相談が顕在化。長時間労働で心身がきつくなっているところへ、職場に競争原理が持ち込まれ、ストレスが蓄積した結果、いじめやセクハラの相談が増加した、と見られる。【圷(あくつ)由美子・弁護士】

 (2)退職を迫る口実に人事評価を使うケースが増えている。多くの企業で導入されている評価制度は、基準が公表されていないケースが多い。そのため、評価者によって主観に陥りやすく、恣意的に低い点数をつけ、退職勧奨の手段に使われている。最近では、実現できなければ自主退職や大幅な待遇切り下げとなることを同意させた上、達成困難な目標を課す「業績改善計画(PIP)」で厳しい評価をつけ、退職を迫るケースも出ている。
 何年もそうした環境で我慢した結果、メンタル不全で鬱病系の相談に来る人が目につく。【日本産業カウンセラー協会東京支部相談事業部長】

 (3)精神障害の労災補償の支給決定件数は、2009年度に234件だったが、2011年度には325件にまで増加した。【厚生労働省】 
 2012年には「勤務問題」を理由に2,472人が自死した。【内閣府自殺対策推進室】
 学校でのいじめ問題は社会の関心が高いが、大人のいじめも同様に悪質で、逃げ場がない。
 どこの職場も昔に比べてスピードが速く、ゆとりがなくなった。みんなイライラしている。職場環境は特殊な状況が一般化し、こうした職場いじめの問題は、個人の問題として扱われる時代から、職場環境の課題として扱われる時代に入った。【金子雅臣・労働ジャーナリスト/『職場いじめ』著者】

 (4)こうした人権侵害に、司法では、2007年の日研化学事件(東京地裁)以降、(a)人格権を侵害する言動か否か、(b)業務の範囲を逸脱した合理性のない命令かどうか・・・・を判断基準とし、企業の違法性を認める判例が目立ち始めた。
 厚生労働省も重い腰をようやく上げた。2009年4月、労災認定基準「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」を10年ぶりに改訂し、「心理的負荷評価表」の負荷強度Ⅲ(最も高いストレス分類)に「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」を加えた。この項目ができたことで、これまで明確な基準がなかった職場いじめに起因する精神疾患について、判断できるようになった。さらに、強度Ⅱに「複数名で担当していた業務を一人で担当」「達成困難なノルマが課された」といった基準を新設。また、「部下とのトラブルがあった」も強度Ⅰから強度Ⅱに格上げした。
 2012年1月、経営者や識者などからなる厚労省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が公的には初めて職場いじめについて「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適性な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」と定義し、6分類を列挙した。すなわち、①身体的な攻撃(暴行、傷害)、②精神的な攻撃(脅迫、侮辱など)、③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)、④過大な要求(遂行不可能なことの強制)、⑤過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること)、⑥個の侵害(私的なことへの過度な立ち入り)。

 (5)(4)の努力は、最も被害が多いと見られる中小企業に届いているか。
 従業員向けの社内相談窓口の設置は、従業員1,000人以上の企業が94.0%だったが、同99人以下の規模が34.7%にとどまり、外部組織への委託は1,000人以上の企業で57.5%あるのに対し、99人以下では8.2%しかない。さららに、中小企業では、経営者が加害者であることもある上、定義の「業務の適正な範囲を超えて」も不明瞭で、「そんなことを言っていれば会社がまわらない」と、行為の問題を経営上の問題にすり替えて「適正」化の壁をすり抜ける手口に使われかねない。
 円卓会議のメンバーに中小企業関係者が入っていない。定義から、「職場の人権侵害」という根本的な言葉が抜けている。法を作り、企業に何をやってはいけないか、またやむを得ず退職しても再び立ち上がれるセイフティーねとを作らなければダメ。【金子ジャーナリスト】

 (6)よく比較されるセクシャルハラスメントをめぐり、改正男女雇用機会均等法が事業主に対し、雇用管理上の必要な配慮を義務づけた。しかし、職場いじめを規制する法律はない。なぜ法制化が進まないのか。
 職場いじめの予防をはかり、実質的に減らすことが必要。先行するセクハラは概念の周知から10年ほどして法制化の方向が見えた。パワハラも法制化の必要性があるかどうかは、周知後、検討する話。【厚生労働省労働条件政策課担当者】
 かくのごとく反応は鈍い。

□松前陽子(ジャーナリスト)「深刻化する「職場いじめ」に打つ手はあるのか ~日本社会を蝕むパワーハラスメント~」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)

 【参考】
【社会】「職場いじめ」の事例 ~日本社会を蝕むパワハラ(1)~
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【社会】「職場いじめ」の事例 ~日本社会を蝕むパワハラ(1)~

2013年04月09日 | 社会
 (1)今年1月、柔道全日本女子の代表監督による五輪選手ら15人に対する暴言・暴行が明らかになった。
 これを受けて行われた日本オリンピック委員会の調査で、競技活動でパワーハラスメント、セクシャルハラスメントを受けた、と1割強の選手が回答した。
 パワハラは、アスリートだけの問題ではない。成果主義が進む職場では、誰もが被害者になる危険性を秘めている。

 (2)法律系事務所(大阪)に勤めていたAさん(30代の女性)は、ちょっとした行き違いから上司の機嫌を損ねた。この日を境に、「馬鹿」「ボサッとしとったら、後ろから刺すぞ」と恫喝されるようになった。上司が傍らを通るだけで鼓動が激しくなった。絶対服従が前提の職場、深夜残業が恒常化した職場だった。
 夜は眠れず、朝は這うような思いで出勤した。休日は一日中寝ているのに、疲れがとれなかった。
 勤め始めて1年。再び、ある行き違いから上司の腹心の秘書が激怒した。「辞めるなら2週間前に言ってください」と言い出し、横にいた上司が、「お見事!」と机を叩いた。
 ゲーム感覚で自分を精神的に追い詰めている、とAさんは感じ、その日のうちに退職を決意した。
 辞めてからも、「自分が悪かったのでは」と自責の念を抱き続け、軽い鬱状態に陥った。
 退職して1年後、同様の被害に遭った元同僚から、訴訟参加を誘われた。初めて、「自分が悪いわけではない」と気づいた。

 (3)Bさん(男性)は、大手複写機メーカーのリコーで、20年間ほど開発に携わってきた。リストラを進める会社は、退職勧奨したが、Bさんは拒んだ。
 子会社への出向を命じられた。商品の梱包作業などを受けもつようになった。
 Bさんは言う。「自分としては活躍していたつもりだった。だのに、全く無視された感じ。会社は、プライドを傷つけて、精神的に追い込み、辞めさせたいんだと思います」
 しかし、辞めるわけにはいかない。子どもの教育費がかかるし、家のローンもある。辞めたところで、一定の年齢になると、次の職が見つかる保証はない。
 「仕事の帰りの電車で、ふと、『なぜこんなことになってしまったのか』と思うと涙がこぼれることもあるんです」
 出向前には特許出願件数442件、特許登録件数153件で、社内外で表象も受けていた。
 「なぜ、退職勧奨が私だったのだろうと。おとなしくて、上司にたてつくタイプじゃないからでしょうか」

 (4)Bさんと同時期に、リコーの元開発部署のCさん(男性)は退職勧奨を拒んで別の子会社に出向を命じられた。現場労働が仕事だった。
 発令後1年半、鬱病に苦しんだ。
 「会社は、お金も時間もあるから、こちらの心が折れるのを待っているんですよ。会社のほうが圧倒的に力はあるし、周囲は会社が正しいと思ってしまう。それが本当に悔しい」
 Bさん、Cさんに加えて他の5人が、出向と配転の無効を求めて、東京地裁でリコーと係争中だ。

 (5)浜田雅晴・オリンパス勤務は、他社から引き抜く上司の行為が会社の利益に反するとして社内のコンプライアンス室に内部通報したところ、逆に職場いじめを受けるようになった。いじめ行為はやがて全社を挙げた組織的なものとなり、社内外の接触を一切断たれ専門外の部署への異動や専属の監視がついて、「浜田君教育計画」と題する文書が渡されるなどの人権侵害に至った。これに対し、2008年2月、当時の上司と会社を相手どって提訴。
 しかし、会社の姿勢は変わらない。
 ある時、張り詰めていた心の糸が切れ、「会社で上司を思いきりぶん殴った後、電車に跳び込もう」と思い詰めたこともあった。
 2012年6月、最高裁で勝訴。
 「そこまで人を追い込む職場いじめは、体罰以上で殺人と同じだ」

□松前陽子(ジャーナリスト)「深刻化する「職場いじめ」に打つ手はあるのか ~日本社会を蝕むパワーハラスメント~」(「週刊金曜日」2013年4月5日号)
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【原発】プルトニウム輸送船の「日米密約」 ~原子力ムラの極秘工作~

2013年04月08日 | 震災・原発事故
 (1)動燃は、日本の原発などから発生した使用済み核燃料の再処理を、当初フランスに委託していた。
 1984年、フランスから日本へプルトニウムを運んだのは「晴新丸」で、日本独自の護衛はなく、公海上の護衛は米仏の軍艦が担った。これについて、当時の報道などでは「両国の独自の判断で自主的に警備した」と説明されている。
 しかし、「西村ファイル」がその内幕を明らかにした。
 <核物質防護対策の一部を構成する特別な援助を米国政府に依頼する場合であって、米国政府が日本側の依頼がもたらす特別な経費の支払いを請求する場合には、米側関係機関と協議のうえ、双方合意の経費を米側に支払うものとする>
 1984年5月15日に、米側からの問い合わせに動燃が答えたファックス(日英両語で併記)の文言だ。「機密(日英両語で併記)」の印が押されている。関連資料には「無期限秘」の印が押されたものもある。「独自の判断」どころか、日本側が依頼し、費用まで支払う「密約」があった。
 これを傍証するのは、1984年7月に動燃幹部と科学技術庁幹部らの打ち合わせメモだ。
 <日本側は要請するという立場をとらず、米側の自発的な対応としたいが、問題をこじらせる可能性あり>

 (2)1992から93年にかけて、同じくフランスから日本へ、原発100個分の材料にもなり得る1トンのプルトニウムを運んだのは「あかつき丸」だ。この時は、日米原子力協定等の改定により条件が厳しくなった【注1】。 
 佐々淳行は、米国との交渉を『後藤田正晴と十二人の総理たち』(文藝春秋、2006。後に文春文庫、2008)で回想録している【注2】。

 (3)「あかつき丸」による輸送は、輸送の主体となった動燃と科学技術庁によって徹底的に秘匿された。「核防護」を名目に、航路、航海の日程、到着港など一切の情報を隠し、船名すら公表しなかった。
 動燃と科学技術庁との打ち合わせメモには、幹部のこんな発言が残っている。
 <情報管理については、あくまで核防護の名を借りて実施しているもの>【科学技術庁原子力局長】
<まずは、国会対応よりマスコミ対応優先>【動燃理事長】
 動燃側の「情報統制」は、地元政治家や行政機関に対しても徹底していた。事前に情報を伝えるべき相手を「A」「B」の2つにランク分けをしていた。Aは「理解とご協力を得るため、積極的に説明する対象」、Bは「報道その他の情勢により判断し、適宜安全性等を中心とした説明をする対象」だ。要するに、バレてしまったら仕方なく説明するのがBだ。
 例えば、政治家では、Aは梶山静六・元官房長官/衆議院議員(自民党)や塚原俊平・元通産相/衆議院議員(自民党)、Bは大畠章宏・衆議院議員(社会党、現・民主党)。露骨な“与野党格差”だ。
 県議は自民党の6人だけが対象となり、Aは県連会長ほか1人、Bが4人。
 地元の東海村議にいたっては、正副議長や自民党系会派の会長ですらBで、Aランクは皆無。
 ランクは、全体として中央を優先し、地元に辛くつけられていた。
 警察庁、警視庁、海上保安庁はAなのに、周辺自治体の関連部署はB。茨城県警や茨城県漁連もB扱いだった。事故があれば最も影響を受ける人々に重要な情報を隠していた。

 (4)この極秘計画はしかし、フランス側が一定の情報を公開したことで、狂っていく。1992年11月27日には、読売新聞が「あかつき丸」の帰港先が茨城県・東海港だとスクープ報道。動燃が関係各所に説明に回ると、滑稽なやりとりが交わされた。
 県としては動燃から何も聞いていないことで統一する、東海村としても何も聞いていないことで通す、日本原子力発電は関知していないとの姿勢を通す、云々。
 地元自治体や電力会社は、知っていて知らぬふりを演じていたのだ。特に東海港の持ち主である原電は、港の使用契約をめぐって事前に動燃と綿密に打ち合わせていた記録も残っていた。「関知していない」ことなど、あり得ない。「情報管理」の名の下で「ウソ」の口裏合わせをしていたのだ。

 【注1】「日米原子力協定等の改定により条件が厳しくなった
 【注2】「【読書余滴】佐々淳行の、米国との裏交渉 ~プルトニウム輸入~

□今西憲之+本誌取材班「原子力ムラの「極秘工作」をすっぱ抜く プルトニウム輸送船の「日米密約」」(「週刊朝日」2013年4月12日号)

 【参考】
【原発】動燃による反対派つぶし「工作」の記録 ~「西村ファイル」~
【原発】動燃の裏工作部隊 ~「洗脳」と「カネ」~
【原発】動燃の組織ぐるみの選挙~「西村ファイル」~
【原発】NHKに対する「やらせ抗議」 ~科学技術庁~
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【原発】NHKに対する「やらせ抗議」 ~科学技術庁~

2013年04月07日 | 震災・原発事故
 (1)1993年5月21日と23日、NHKは2回シリーズでドキュメンタリー番組「NHKスペシャル 調査報告 プルトニウム大国・日本」を放送した。
 当時、国内では1991年に高速増殖炉「もんじゅ」が試運転を開始するなど、燃やした核燃料からプルトニウムとウランを取り出す「核燃料サイクル」の試みが本格スタートした。
 しかし、米国など諸外国からは、核兵器に転用可能なプルトニウムを日本が保有することは「核武装」につながりかねない、と危惧する声があがっていた。加えて、高速増殖炉の開発は海外で次々と頓挫し、その実現性や経済性に疑問符がついていた。
 こうした問題点を国内外の取材で浮き彫りにしたのが、この番組だった。

 (2)「核燃料サイクル」を所管する科学技術庁(STA)は激怒した。
 2回目の放送から5日後、5月28日、NHKの担当ディレクターおよび科学文化部記者2人が、科学技術庁原子力局長室で抗議を受けた。科学技術庁側の出席者は、石田寛人・原子力局長(当時。後に科学技術事務次官)、K・動力炉開発課長(当時)、S・調査国際協力課長(当時)の3人。石田は、番組のインタビューにも出演していた。
 会談は、科学技術庁側が一方的に憤懣をぶつける展開だった。
 NHK側は、簡単には折れなかった。
 STA「技術的に間違いだった。説明の場を設けるべきである」
 NHK「その予定はない。しかし上司には伝える」「番組に対するクレーム、指摘はなかった」
 科学技術庁が報道姿勢を非難したくだりだ。NHKは反論した。他の指摘については、聞くだけだった。
 会談は80分にも及んだが、両者の主張は平行線をたどり、結論は出なかった。
 放送後、科学技術庁に担当ディレクターが呼ばれて抗議を受けた、と聞いている。番組は当時のNHKが総力を挙げて取り組んだもの。隙がないように相当知恵を絞って作ったが、国策に正面から疑問を呈する放送内容に納得できなかったのだろう。【番組に関わったNHK関係者】

 (3)事は、これだけで終わらなかった。
 会談後、科学技術庁から動燃に、次のような「指示」が行われた。
 <STAより、雑誌、新聞等のマスコミや有識者を用いたNHKへの反論や、寄稿、投稿、電話によるNHへの対抗手段をお願いしたい、とのこと>【「西村ファイル」】
 「やらせ抗議」の指示だ。
 動燃は、国が出資する特殊法人だ。科学技術庁に「命脈」を握られている。
 動燃は科学技術庁とのつながりが最も強く、人事交流も盛んだった。マスコミに反原発の記事が載った時など、食尽が科学技術庁に呼ばれ、「どうなっているんだ!」と叱責されることがしょっちゅうあった。とにかく科学技術庁の意向は絶大で、何かあるたびに「逆らうと予算がつかないぞ」と言われていた。【動燃OB】
 指示は、事実上の命令だった。

 (4)「やらせ抗議」は実行に移された。
 指示のあった日の夜、T・動燃職員は動燃本社の各部署に架電し、課長、係長などの管理職に「やらせ」の指示を伝えた。M・労務課長代理が「了解」と応じたことが「西村ファイル」に記録されている。動燃本社広報室から東海事業所総務課へファックス送信が行われたことも記録されている。指示は、地方へも伝達された。
 NHK書く放送局一覧(住所・電話番号・具体的な部署(経営委員会/考査室など)が配布され、併せて「やらせ」の例文が提示された。
 <日本がエネルギーを確保するため機縁級開発することがなぜいけない>
 <30年かけて研究開発に取り組んでいることへの非難がおかしい>
 <将来のために研究している人に失礼だ。料金不払いも考える>
 「将来のために研究している人」とは動燃のことだ。
 NHKは受信料で成り立っている。視聴者の声に弱い。それを科学技術庁、動燃も知っていて、弱点をつこうと視聴者の声を装うことにした。原子力ムラでは常套手段だ。【動燃関係者】

 (5)以上の一例からしても明らかなように、動燃は永田町だけではなく、霞ヶ関の官僚とも一心同体になって工作に邁進した。
 「核燃料サイクル」は頓挫したままだ。番組が20年前に警鐘を鳴らしたとおりになった。
 
□今西憲之+本誌取材班「動燃はここまでやっていた 「科学技術庁が指示した NHK「やらせ抗議」」(「週刊朝日」2013年3月29日号)

 【参考】
【原発】動燃による反対派つぶし「工作」の記録 ~「西村ファイル」~
【原発】動燃の裏工作部隊 ~「洗脳」と「カネ」~
【原発】動燃の組織ぐるみの選挙~「西村ファイル」~
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【社会保障】生成と変貌 ~年表~

2013年04月06日 | 医療・保健・福祉・介護
 【凡例】
 社会保障は、社会保険、社会福祉、公的扶助(生活保護)、公衆衛生に大別される。以下、社会保険は□、社会福祉は○、公的扶助は●、公衆衛生は◎とマークする(ここでは雇用保険・労災保険以外の雇用保障も医療も社会保険に、社会手当は社会福祉に含める)。
 併せて、政治経済社会醸成を■、国際的な動きを☆でマークする。
 法令は、制定時ではなく施行時に着目して記した。

☆第一次世界大戦(1914年~1918年)

 1922 □健康保険法
  →1939 □職員健康保険法
  →1942 □健康保険法改正 

☆世界大恐慌(1929年~)

 1938 □国民健康保険法
  →1958 新国民健康保険法

☆第二次世界大戦(1939年~1945年)

 1941 □労働者年金保険法
  →1944 □厚生年金法

■1945 敗戦
■1946 GHQ指令「社会救済」・・・・戦後の公的扶助・社会保障の枠組みの形成を促進。
■1947 ●朝日訴訟、提訴 → 1967 最高裁大法廷判決

 1947 □労働者災害補償保険法
 1947 □労働基準法
 1947 □職業安定法
 1947 □失業保険法
 1947 ○児童福祉法
  →2006 改正施行・・・・第4条第2項「この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。」
  →2010 改正施行・・・・第4条第2項「この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害者支援法 (平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項 に規定する発達障害児を含む。)をいう。」
 1948 ○民生委員法
 1948 □厚生省令「児童福祉施設最低基準」
 1948 □医療法
 1949 ○身体障害者福祉法
 1949 ●厚生省令改正・・・・生活保護に不服申立制度導入
 1949 □失業保険法改正・・・・日雇い失業保険制度の創設

■岸信介らによる格差是正論を含む「福祉国家ナショナリズム」、石橋湛山による生産主義的福祉論<1950年代>。

 1950 ●生活保護法(新法)
 1950 ○精神衛生法
  →1988 □精神保健法
  →1999 □精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

☆朝鮮戦争(1950.6.25~1953.7.27)

 1951 ○社会福祉事業法
  →2000 社会福祉法
 1952 ○戦傷病者戦没者遺族等援護法

■神武景気(1956~57)
■岩戸景気(1958~61)
■高度成長(1955~73)

 1958 □国民健康保険法・・・・国民健康保険法の全部改正。
 1959 □国民年金法【国民皆年金】 →1961 法施行
 1959 □最低賃金法・・・・家計補助的なパート労働者の賃金が基準。

■池田勇人内閣による国民所得倍増計画を通じた経済成長によるパイの拡大と地方への切り分け<1960年代>。

 1960 ○精神薄弱者福祉法
  →1999 □知的障害者福祉法
 1960 ○身体障害者雇用促進法
  →1987 □障害者の雇用の促進等に関する法律

☆ベトナム戦争(1960~1975年)

 1961 □改正国民健康保険法施行【国民皆保険】
 1961 ○児童扶養手当法
 1961 □国民年金法施行【国民皆年金】
 1961 ○身体障害者福祉法改正・・・・目的に「生活の安定に寄与」文言、更正法からの脱却。
 1961 □老人医療費無料化(岩手県沢内村)・・・・以降、各地方自治体レベルで老人医療費無料化、低額化。
 1963 ○老人福祉法
 1963 ○身体障害者福祉法改正・・・・目的に「生活の安定に寄与」の文言が追加。
 1964 ○特別児童扶養手当等の支給に関する法律
 1964 ○母子福祉法→1984 母子及び寡婦福祉法
 1965 ○母子保健法
 1965 ●生活保護の補足率、最後の公式発表
 1965 □厚生年金法改正・・・・1万円年金の提唱。
 1966 □雇用対策法
 1967 ●最高裁大法廷判決「朝日訴訟」
 1968 寝たきり老人実態調査(全国社会福祉協議会)

■田中角栄内閣による各種の雇用政策と「土建国家ナショナリズム」を通じた「日本型雇用レジーム」<1970年代>。

 1970 ○心身障害者対策基本法
  →1993 障害者基本法
 1971 ○児童手当法
 1971 老人医療費無料化(東京都、美濃部都政)・・・・過剰な医療批判。 →老人保健法制定。
 1972 ○老人福祉法改正→1973.1施行・・・・老人医療費支給制度。
 1972 ○「福祉手当」(東京都など)
 1973 ○老人福祉法改正施行【老人医療費制度】
  →1983 ◎老人保健法
  →2008 ◎高齢者の医療の確保に関する法律【後期高齢者医療】改正法施行

■1973 ○「福祉元年」宣言
☆1973 第一次オイルショック ←第四次中東戦争
■1973 各地で年金スト
■1973 大盤振る舞いスキーム・・・・賃金再評価制+物価スライド制→5万円年金

 1974 □雇用保険法 ←失業保険法

■1975 最高裁判決「日本食塩製造事件」・・・・解雇権濫用法理。
☆1975 国連「障害者の権利宣言」
☆1978 第二次オイルショック←イラン革命
■1979 経済企画庁(現内閣府)『新経済7ヵ年計画』・・・・「日本型福祉社会」の用語初登場。

 1980 ○老人福祉施設費用徴収制度の改定・・・・本人と扶養義務者からの「二本立て徴収方式」。
 1981 ●123号通知・・・・生活保護の「水際作戦」の指針。

☆1981 ○国連「国際障害者年」→国連「障害者の十年」(1983-1992)
■1981 第二次臨時行政調査会(土光臨調)発足・・・・「日本型福祉」。
■バブル経済(1983~90年)

 1982 ■三郷中央病院事件・・・・悪徳老人病院批判
 1982 □労働安全衛生法
 1982 □国民健康保険法改正・・・・難民条約批准による国籍要件撤廃。
 1982 ○老人家庭奉仕員実施要綱改正・・・・ホームペルパー派遣対象の拡大。課税世帯の有料化導入。
 1982 ◎老人保健法 →1983 法施行・・・・療費定額一部負担、出来高払いへの一定の「制約」。
 1984 ○母子及び寡婦福祉法 ←母子福祉法
 1984 ◎老人保健法改正・・・・特例許可老人病棟創設、老人診療報酬制度の整備、低額の診療補修、医療機関側の供給抑制。
 1984 □健康保険法改正・・・・健康保険の被用者本人に当面1割負担(法律上は2割)を導入。
 1984 □特例許可老人病棟創設、老人診療報酬制度の整備・・・・低額の診療報酬、医療機関側の供給抑制。

■1984 一人暮らし老人100万人突破

 1985 □労働者派遣法・・・・ポジティブリスト13業務。「間接雇用」を認める。 ←→ 労働基準法の直接雇用原則
 1985 □男女雇用機会均等法
 1985 □労働基準法改正・・・・女性保護規定の縮小。
 1985 ◎医療法改正(第一次医療法改正)・・・・「地域医療計画」作成の義務化。
 1985 □国民年金法等の改正・・・・基礎年金の導入、女性の年金権の確立。第三号被保険者制度の創設。
 1986 □国民健康保険法改正 →1987.1 改正法施行・・・・保険料滞納者に係る資格証明書制度導入(市町村裁量)。
 1986 □最高裁判決「日立メディコ事件」・・・・雇い止めに係る解雇権濫用法理の類推適用。

■1986 ○国の補助金等の臨時特例に関する法律・・・・向こう3年間にわたる補助金の大幅な削減。児童・高齢者・障害者の入所措置費に係る国庫負担5割。 ←7割

 1986 ○老人保健法改正・・・・老人保健施設創設。
 1987 □身体障害者雇用促進法改正→「障害者雇用促進法」・・・・知的障害者にも適用。
 1987 □労働基準法改正・・・・週40時間制の段階的実施、変形労働時間制の拡大、みなし労働時間制の導入。
 1988 ○社会福祉士及び介護福祉士法

■1989 消費税の導入・・・・高齢化社会に備えるため」との名目で3%。

 1989 ○「高齢者保健福祉推進10か年戦略」(ゴールドプラン)策定(12月)
 1989 ○国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例に関する法律・・・・国庫負担率、生活保護・児童扶養手当7.5割、社会福祉諸法に基づく措置費5割。
 1989 □国民年金法改正・・・・国民年金基金創設、学生強制加入。
 1990 ○ゴールドプラン
 1990 □介護力強化病院の整備・・・・定額支払い制度導入、2002年度で廃止→療養型病床群に転換、寝たきり老人(寝かせきり老人)の悲惨、薬漬け・検査漬け、社会的入院。
 1990 ○老人福祉法等の一部を改正する法律【社会福祉関係8法の改正】・・・・特別養護老人ホームなどのサービス提供主体が市町村に一元化、「老人福祉計画」策定の自治体に対する義務づけ。
 1990 ◎診療報酬改定・・・・特例許可老人病院に定額制導入、「マルメ方式」。

☆1991 ソ連解体。

 1991 ○福祉八法改正
 1992 □雇用保険法改正・・・・雇用保険料率と国庫負担率の暫定的引き下げ。再就職手当支給要件緩和。
 1992 □医療法改正(第二次医療法改正)・・・・療養型病床群(現在の「療養病床」導入。

☆1992 「アジア太平洋障害者の十年」(1993~2002)

■1994 ○高齢者金持ち論
■1994 ○初の「障害者白書」(総理府→内閣府)

 1994 ○高齢者介護自立支援システム・・・・選択型と社会保険方式の提言。
 1994 ○初の「市町村ル陣保健福祉計画」
 1994 ○厚生大臣の諮問機関「21世紀福祉ビジョン -少子・高齢化社会に向けて-」
 1994 □雇用保険法改正・・・・育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付の創設。
 1994 □健康保険法改正・・・・入院時食事療養費(食材料費の標準負担額)導入。
 1994 ○新ゴールドプラン策定
 1994 ○「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)策定・・・・1995~1999の計画。
 1994 ○初の「障害者白書」(総理府→内閣府)

■1995 日経連「新時代の『日本的経営』」・・・・長期蓄積能力型の比率を下げ、正社員を減らし、非正規労働者に代替していく提唱。=日本型雇用システムの解体宣言。

 1995 □第8次雇用対策基本計画・・・・労働移動を前提とした流動的な労働市場の機能を支援する政策への転換。
 1996 □労働者派遣法施行令改定・・・・派遣対象業務26業務に拡大。
 1996 □職業安定法施行規則改正・・・・有料職業紹介の原則自由化(ポジティブリストからネガティブリストへ)、手数料緩和。
 1997 □介護保険法 →2000 法施行
 1997 □労働基準法改正・・・・「雇い止め」可能に、女性の時間外労働規制や深夜業禁止の削除。
 1997 ○児童福祉法改正 →1998 改正法施行・・・・文言の改正(「保育所への入所の措置」) →「保育の実施」、措置制度から契約制度へ。
 1997 □男女雇用機会均等法改正
 1997 □労働基準法改正・・・・女性労働者の時間外・休日労働制限、深夜業禁止の諸規定廃止。

■1997 財政構造改革の推進に関する特別措置法 →1998 廃止
■1997 消費税増税(5%←3%)、特別減税の廃止
■<1997年後半~2000年代前半>失われた十年、複合不況、平成不況
■橋本首相(1996~98年)、小淵首相(1998~00年)、多額の借金を残す(「第2の敗戦」)。

 1998 □労働基準法改正・・・・高度専門・技術労働者と60歳以上労働者の契約期間3年までの延長←1年(法第14条)=契約社員など有期契約の労働者の「雇い止め」できる雇用の調整弁。
 1999 □労働者派遣法改正・・・・派遣対象業務の全面的自由化、=日本型雇用システム解体の促進、「物の製造」業務への派遣解禁(2004.3~)、派遣期間実質的に3年まで可(2007.3~)。
 1999 □職業安定法改正・・・・有料職業紹介の原則自由化を法律の上で追認、対象範囲拡大。
 1999 □労働局長通達「心理的付加による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」・・・・認定基準の緩和。
 1999 □労働局長通達「精神障害等による自殺の取り扱いについて」・・・・認定基準の緩和。
 1999 ○重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)策定・・・・2000~2004の計画。
 2000 □介護保険法
 2000 ○社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律・・・・社会福祉事業法 →社会福祉法、身体障害者福祉法・知的障害者福祉法の改正【支援費制度(2003~05年度)】
 2000 □国民健康保険法改正→2001.4 改正法施行・・・・保険料滞納者に係る資格証明書制度(市町村義務化)。
 2000 □雇用保険法改正・・・・国庫負担率を本則の4分の1に戻す←給付に対する国庫負担額の暫定的引き下げ
 2001 □厚生年金基金、確定拠出年金(企業型)と確定給付企業年金の導入・・・・国民年金基金と確定拠出年金(個人型)。
 2001 ◎老人保健法改正(定率負担の導入、老人保健施設の新設、別立ての低い診療報酬)・・・・2002.10 完全定率1割。
 2001 □脳・心臓疾患の労災認定基準・・・・時間外労働と業務関連性に係る基準。
 2001 □健康保険法改正・・・・定率1割負担。

■「小泉改革」(2001~06)

 2002 □国民年金保険料収納事務、市町村から社会保険庁へ
 2002 ○児童扶養手当法改正・・・・全額支給の所得上限が年収130万円未満に。 ←200万円未満
 2003 □労働基準法改正・・・・第18条の2新設(←解雇権濫用法理)。有期契約の原則的限度期間1年→3年。
  →2007 労働契約法第16条・・・・参考:整理解雇法理、整理解雇の4要件(1973 オイルショック~)。
 2003 □健康保険法改正・・・・被用者負担3割、保険料が総報酬制に←標準報酬月額制、政管健保保険料率8.2%に。

■2003 地方自治法改正・・・・指定管理制度の導入。

 2003 ○身体障害者福祉、知的障害者福祉に支援費制度の導入(2006の障害者自立支援法施行まで)
 2003 ○子ども・子育て応援プラン・・・・2005~09
 2004 ○発達障害者支援法 →2005 法施行
 2004 □労働者派遣法改定施行・・・・「物の製造」業務への派遣解禁。
 2004 ○公立保育所運営費の一般財源化
 2004 □国民年金法等の一部を改正する法律・・・・基礎年金の国庫負担割合が2分の1に←3分の1 →2001に実現、保険料免除の多段階化、保険料固定方式(2017以降は国民年金16,900円に。厚生年金18.3%に固定)。
 2005 ○障害者自立支援法 →2006 法施行
 2005 ○延長保育促進事業(基本分)の一般財源化
 2005 □介護保険法改正 →2006 改正法施行・・・・新介護予防事業の導入。
 2005 ●「自立支援プログラム」各自治体で実施
 2006 ○障害者自立支援法
  →2013 障害者総合福祉法
 2006 □介護保険法改正・・・・介護予防、市町村地域包括支援センター
 2006 ◎老人保健法および退職者医療制度の見なおし・・・・退職者医療制度は2014年度までの間における65歳未満の退職者を対象として経過的に存続。
 2006 ○延長保育促進事業(公立保育所加算分)の一般財源化
 2006 ○就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律・・・・認定子ども園の創設。
 2006 ●老齢加算の廃止
 2006 □入院時食事療養費、1食単位に。 ←1日単位

☆2006 国連「障害者の権利条約」
■2006 トヨタやキャノンの偽装請負、違法派遣がマスコミに報道さる。

 2007 ○高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)
 2007 □労働契約法・・・・労働基準法第18条の2は本法第16条に移行。
 2007 □最低賃金法改正・・・・生活保護基準との整合性をとることを明記。
 2007 □雇用保険法改正・・・・雇用福祉事業の廃止。 →2事業に。
 2007 ●要保護世帯向け長期生活支援金制度(リバースモーゲージ制度)導入

■2007 大手人材派遣会社フルキャストやグッドウィルグループ(2008.7廃業)の違法天引き問題、指摘さる。
☆2007 □「消えた年金」「宙に浮いた年金」問題
☆2007 ○「アジア太平洋障害者の十年」の中間年
☆2007 ○国連「障害者の権利条約」・・・・9/28日本署名。
☆2008 リーマン・ショック

 2008 □国民健康保険法改正・・・・資格証明書世帯の中学生以下の子どもに6か月の短期資格証明書を交付。
 2008 ○児童福祉法改正・・・・家庭内保育事業(「保育ママ」)の法制化。
 2008 □病床400以上の病院に係るレセプトの電子請求義務化(4月)・・・・2001.4~小規模医療機関を除く全医療機関に係る電子請求義務化は凍結。
 2008 ◎高齢者の医療の確保に関する法律【後期高齢者医療】・・・・老人保健法の改正法施行。
 2008 □改正最低賃金法施行・・・・1,000円のめどは立たず。
 2008 □就職安定資金制度

■2008 ●年越し派遣村(12月末~1月)
■2009 政権交代

 2009 □雇用保険法改正→同年改正法施行・・・・非正規雇用労働者の加入要件を6か月以上に緩和 ←1年以上。再就職困難者の給付60日延長。
 2009 □介護報酬改定(3%引上げ)
 2009 □介護保険に新しい要介護認定導入
 2009 ●生活保護、母子加算廃止(3月)
 2009 ●生活保護、母子加算復活(12月)
 2009 ○閣議決定「明日の安心と成長のための緊急経済対策」・・・・新保育制度案。利用者本位の保育制度、株式会社・NPO参入促進、等。
 2009 ○閣議決定「地方分権改革推進計画」・・・・児童福祉施設、老人福祉施設、身体障害者福祉施設の瀬ちび、運営基準の原則条例化。
 2009 □介護職員処遇改善交付金(全額国庫負担)(12月)

■2009 ●厚生労働省、初めて「相対的貧困率」の公式統計を発表・・・・一人当たり可処分所得の中央値(228万円)の半分未満、15.7%(2007年)。
■2009 閣議決定「新経済戦略」 ・・・・2020年までに医療介護・健康関連サービスで新規雇用280万人創出。     
■2009 ●公設派遣村(12月末~1月18日)
■2010 社会保険庁廃止→日本年金機構(1月)

 2010 □雇用保険法改正→同年改正法施行(一部を除く)・・・・適用範囲を31日以上の雇用見こみのある労働者まで拡大。
 2010 □労働基準法改正・・・・月60時間超の時間外労働の割増賃金率は50%以上。 ←25%
 2010 ○子ども手当法→同年施行(4月)・・・・半額実施、扶養控除・配偶者控除の廃止。
 2010 □診療報酬改定・・・・10年ぶりプラス改定、ただし実質改定率は0.03%。
 2010 ○児童扶養手当法改正 →2010.8改正法施行・・・・父子家庭への拡大。
 2012 □社会保障制度改革推進法、及び関連制度
 2013 ○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合福祉法) ←障害者自立支援法

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【原発】動燃の組織ぐるみの選挙~「西村ファイル」~

2013年04月05日 | 震災・原発事故
 (1)茨城県東海村には、現在、日本原子力研究開発機構(JAEA、旧・動燃)が本部を置く。動燃の前身、原子燃料公社が1957年から拠点とし、1981年、日本初の核燃料再処理施設が稼働した。同村は、JCO臨界事故(1999年)【注】の現場であり、日本原子力発電の東海第二原発がある。原子力ムラの牙城だ。

 (2)1993年の参議院議員選挙では、宮沢喜一・首相(当時)率いる自民党が惨敗し、細川護煕・連立政権が誕生した。
 当時、中選挙区制だった。東海村のある茨城2区は、梶山静六・自民党幹事長(当時)、塚原俊平(後に通産相)の2人が自民党票を分け合っていた。
 動燃は、2人のために猛烈な「集票工作」を行った。動燃東海事業所総務課が1993年6月に作成した<過去集票実績>によれば、前回衆議院議員選挙(1990年)の集票実績は、(a)梶山・・・・3,931人(うち職員1,384人、業者2,547人)、(b)塚原・・・・2,279人(うち職員784人、業者1,495人)、合わせて6,000票以上を集めている。2人が獲得した東海村票は、梶山が4,273票、塚原が3,717票だったから、梶山票の92%、塚原票の61%が動燃による「工作」の結果だ。
 国が出資する特殊法人、つまり税金で運営される「準国家機関」が、「組織ぐるみ」で与党を応援していたわけだ。
 官公庁はもちろん、特殊法人などの公的団体も特定の政党や政治家の当選のために活動してはならない。公職選挙法に触れる可能性がある。【郷原信郎・弁護士】
 動燃も、違法性を自覚して内部で検討していたふしがある。

 (3)「組織ぐるみ」の現場では何が行われていたか。
 1986年の衆院選では、梶山の出陣式に東海事業所長が駆けつけ、スピーチした。「原子力施設を代表しまして、一言、激励の言葉を述べさせていただきます」・・・・梶山と“運命共同体”であることを露骨にアピール。
 「梶山先生は、原子力施設と国会とを結ぶ太いパイプであるし、また、指導者でもあります。したがって、梶山先生に国会で活躍してもらうことが原子力の発展につながると我々は確信しております」
 「今回、当選のあかつきには、大臣の声がかかると言われています。原子力の発展のためにも、ぜひそう願いたいものです」
 動燃は、茨城の原子力業界における“最高峰”で、原子力ムラの集まりでは最も上座に座る。選挙戦のあいさつはトップで、原子力ムラを代表する重要な役目だった。
 出陣式は、原子力ムラの存在感を示す晴れ舞台だ。式には、事業所から所長、副所長を含む6人の管理職が出席した。
 幹部が事業所から公用車で乗り付けている点に注意しなければならない。組織として堂々と選挙に邁進していた証左だ。

 (4)1993年の参院議選における選挙運動は、動燃が内部に立ち上げた2つの「支援組織」が中心となった。梶山陣営は「動燃・静山会」、塚原陣営は「どうねん俊青会」だ。両会の名簿には、副所長以下、東海事業所の幹部がほぼ同数に割り振られ、所属や内線番号が記載されていた。総務課が作成した資料には、<管理職 梶 塚 二分割>という記述もある。集めた票を配分して、自民党候補を2人とも当選させるためで、幹部からヒラの職員まで2陣営に振り分けた。
 候補者の集会に職員らを“サクラ”として動員することも頻繁にあった。両候補の出陣式にそれぞれ50人動員、とか。酒券10本分、酒10本の差し入れも定番だった。

 (5)「組織ぐるみ選挙」の問題点は、組織内部だけにとどまらずに、地元企業まで巻き込んでいる点だ。(2)の<過去集票実績>における業者票は、職員票の倍に近い数値であることに注目しなければならない。
 中選挙区制のころの茨城1区を受け持ったのは、動燃大洗工学センターだ。1993年の衆院選では同区から3人の自民党候補が出馬した。額田福志郎(後に財務相)、葉梨信行、中山利生だ。
 1993年7月1日作成の途中経過報告によれば、<取引業者については安推協、及び調達課・工務課が中心となり年間取引額500万円以上198社に協力要請中である>。
 大口の取引先を中心に、自民党候補への投票を呼びかけていたのだ。安推協とは、動燃の下で働く業者でつくる「安全推進協議会」のことだ。
 安推協に名前がないと、動燃では仕事ができない。契約高が資料に掲載されているのは、企業への圧力のため。「仕事がほしければ言うことを聞け」という意味だ。「国策会社」の地位を背景にした“強要”だ。
 <関係企業在任社リスト>なる資料では、もっと露骨に、企業ごとの票数をカウントしていた。このリストは、各企業に選挙区内の在住者がどれくらいいるかを調査したリストだ。これを基に国政選挙の票を計算していたのだ。
 投票日の5日前の1993年7月13日に作成された<衆院選状況報告(第3報)>には、茨城1区の集票の途中経過が記されている。3人の合計3,535票のうち業者票は3,229票。いかに業者票が重要で、実に細かく積み上げられていたかがわかる。

 (6)自民党候補者3人に、それぞれ動燃内部で選挙対策委員会を作っていた。
 葉梨、中山には担当者として管理職が配置されているだけだったが、額田には「志萌会」という名の組織が作られた。<衆院選状況報告(第3報)>でも、葉梨965(職員218、業者908)、、中山852(職員31、業者821)に対し、額田は1,718(職員218、業者1,500)と突出している。
 額田は当時まだ40代だったが、動燃にとって特別な存在だった。動燃は、「味方」とみなした権力者に露骨にすり寄っていた。
 集票の途中経過などを示した資料には、「東海事務所総務課」など、明らかに動燃の部署名で作成されたものがある。「静山会」「俊青会」の2団体への管理職の振り分けについては、<臨時部長会を開催し、原則管理部一任で仕切る>という記述まである。組織ぐるみの証拠だ。
 組織ぐるみの証拠は、ほかにも無数にある。東海村議選や勝田市長選などの地方自治体の選挙など。
 情報収集にも余念がない。国会議員と地元の県議、村議などとの人間関係を表した「人脈図」もある。<○○(資料では実名)村議は塚原陣営に移った模様?>などというローカルな情報から、<東京サミット後、自民党若手(?)宮沢首相へ退陣要求?>といった中央政界の情報まで。まるで選挙のプロで、勤務時間外の余暇に作成できるものではない。

 【注】「震災】原発>政権中枢が反省する事故処理の不手際 ~自民党の場合~

□今西憲之+本誌取材班「そこには梶山静六、額賀福志郎ら自民大物の名が・・・・ 「原発 組織ぐるみの選挙」の決定的証拠」(「週刊朝日」2013年3月29日号)

 【参考】
【原発】動燃による反対派つぶし「工作」の記録 ~「西村ファイル」~
【原発】動燃の裏工作部隊 ~「洗脳」と「カネ」~
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【原発】汚染度が深まる首都圏の水

2013年04月04日 | 震災・原発事故
 国が定める水の基準は、原発事故後、今の基準は10Bq/kg。
 原発事故前(2009年度)に文科省が行った環境放射能調査のデータでは、海底土のセシウム濃度の平均値は1.2Bq/kgだった。事故前には日本の水質のセシウム(Cs)濃度は平均0.045Bq/kgで、0.1Bq/kgにも満たなかった。

 3月29日、千葉、埼玉、東京の公共用水域の放射性物質のモニタリング調査(51地点)が環境省により公表された【注】。
 驚くべし、国の基準の実に1,420倍、事故前の基準の14,200倍だ。千葉・柏市や我孫子市にまたがる「手賀沼」の流入水域、沼から上流約1・6kmの「大津川・上沼橋」の川底から14,200Bq/kgの放射性セシウムが検出されたのだ。
 約10km上流の「亀成川・亀成橋」の川底でも5,300Bq/kg、同約1kmの「大堀川・北柏橋」でも、4,200Bq/kgが検出された。
 首都圏の「水がめ」も極度に汚染されている。
 1都5県、2,800万人の給水需要を担う利根川水系や、東京東部と千葉北西部をカバーする江戸川水系の調査地点でも、1,000~3,400Bq/kgと基準値を大幅に上回るセシウムが検出されている。

 福島原発事故による水質汚染は終わってはいない。むしろ、どんどん深刻化するばかりだ。

 【注】「千葉県、埼玉県及び東京都内の公共用水域における放射性物質モニタリングの測定結果について(12月-2月採取分)(お知らせ)

□記事「首都圏「水がめ」 驚愕のセシウム汚染レベル 実に基準値の1420倍」(2013年4月4日付け(3日発行)日刊ゲンダイ)
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【経済】実体経済から見れば株価は2割割高 ~狙われる個人投資家~

2013年04月04日 | ●野口悠紀雄
 (1)株価が上昇を続けているが、実体経済面では厳しい状況が続いている。
 最大の問題は、輸出数量が伸びないことだ。円安にもかかわらず、昨秋以来の輸出減に歯止めがかかっていない。それどころか、悪化している。

 (2)株価が上昇しているのは、「円安になれば日本の輸出が増えて国内生産が増える」という期待があるからだ。しかし、その期待は実現していない。
 輸出数量の減少を反映し、国内生産も低迷し続けている。
 他方で、輸入は増加している。2月中旬の輸入は、対前年比21.1%だ。この増加率は、為替レートの減価率にほぼ等しい。このため、貿易赤字は空前の規模に達している。

 (3)円安は、輸入価格を上昇させる。ガソリン価格の上昇は、企業にとっての大きな負担増だし、生活にも影響する。
 発電用燃料の輸入増分は、ほぼ自動的に電気料金に転嫁される。この面からも生活が圧迫される。
 電気料金と原材料価格の上昇は、素材産業には大きなコストアップ要因だ。新日鐵住金は、航路1基を休止した。住友化学は、エチレンの国内生産から事実上撤退した。
 電気料金値上げは、内需型産業に対しても無視しえぬ影響をもたらす。

 (4)貿易赤字の拡大は、総需要を大きく押し下げる。1~3月期GDP統計にも影響するだろう。
 2割も円安が進んだにもかかわらず、実体経済はなんら改善されていない。この点からしても、日本経済が抱える本当の問題は円高でないことがわかる。
 現在日本が抱えている問題は、(a)貿易相手国(特に中国とEU)の国内事情によって、日本からの輸出量が減少していること。(b)発電用燃料をはじめとする輸入の多くは、価格弾力性が低いため、円安になっても、日本の輸入が減らないこと。

 (5)国内生産が増えないから、設備投資も増えない。中小企業の受注も増えない。雇用情勢も好転しない。賃金は上昇しない。
 その半面、円安が進めば、輸入物価が上昇し、国内の物価上昇率が高まる。賃金が上がらないので、実質賃金が下がる。 ⇒ スタグフレーション。
 他方で、金融はすでに緩和している。よって、余裕資金が株式市場と不動産市場に流れ込む。かくて、資産市場でのバブルが進行する。金融緩和の本来の目的は投資支出を増やすことなのだが、そうはならず、株価と地価を上昇させるだけの結果に終わる。 ⇒ 典型的なバブル。
 これまでの金融緩和は、マネーストックを増やさなかった。資産価格がバブルを起こしているので、マネーストックが増加する可能性はある。しかし、それは実体経済の回復ではない。
 これ以上の円安の進行はくい止めるべきだ。為替レートも資産価格なので、バブルを起こしている可能性があるからだ。
 しかし、円安進行ストップを誰も言わない。言えば株価が下落するのを知っているからだ。逆にいえば、いまの株価上昇は漠然とした期待に支えられているだけのものだ・・・・ということが認識されている証拠だ。

 (6)株価は、リーマンショック前の水準を回復した。しかし、実体経済活動は、その当時の水準に戻っていない。
 日本経済活動水準は、大まかにいえば、リーマンショック直前に比べて1~2割低下している。営業利益は、2割近く減少している。
 だから、株価も、それに見合っただけ低い水準にならざるを得ない。企業の営業利益が株価を決めるとの観点に立てば、そしてリーマンショック前の株価が正しいものと仮定すれば、現在の株価は17%ほど過大評価されている。

 (7)いま株式に投資している人の多くは、短期的な売買益を目的としているのだろう。よって、企業利益などの実体的要因には興味を持っていないのだろう。せいぜい数ヶ月先、場合によっては数日程度先しか見てないのかもしれない。
 しかし、経済の実態を離れた株価が永遠に続くことはない。どこかで破綻し、損失を被る投資家が出る。
 バブルが最終段階に近づくと、個人投資家をターゲットとした売り込みが行われるものだ。バブルが崩壊するときにババをつかまされるのは、個人投資家である。今度も同じことが繰り返されるのだろう。 

□野口悠紀雄「実体経済から見れば株価は2割程度割高 ~「超」整理日記No.653~」(「週刊ダイヤモンド」2013年3月30日号)
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【経済】円安下で深刻さを増す自動車産業の環境

2013年04月03日 | ●野口悠紀雄
 (1)春闘でボーナスが満額回答・・・・の自動車産業は、実は、それを取り巻く環境が深刻さを増している。
  (a)外需・・・・輸出台数は、円安にもかかわらず増えていない。2012年8月から対前年比がマイナスに転じた。2012年11月から円安が進展したにもかかわらず、減少が続いている。長期的にみると、2006年3月から2008年3月まで、対米乗用車輸出は月額4,000億円超だったが、2008年11月以降は2,000億円台にとどまっている。半分程度に減少した。全世界に対する乗用車輸出台数も金額も、同様の傾向だ。
  (b)内需・・・・エコカー補助金の終了によって販売台数が激減している。エコカー補助金(①2009年4月~2010年9月、②2012年4月~9月)によって需要が先食いされたから、今後は容易に復活しない。国内販売の減少を円安で補うことは不可能だ。
  (c)国内の乗用車生産・・・・外需、内需とも落ち込んでいるので、2012年1~3月期をピークに減少を続けている。

 (2)2012年の営業利益は前年より増大したが、これは2011年の落ち込みが激しかったことの反動と、エコカー補助金による。円安は、これとは無関係だ。
 そして、(1)-(a)および(b)からして、2013年は2012年より大きく落ち込む可能性が高い。

 (3)しかも、売上高営業利益率が低下している。2007年には4.5%だったが、2012年は、補助金があったにもかかわらず2.6%だ。

 (4)さらに、企業規模別にみると、中小企業のレベルでは売上げが著しく減少している。
 資本金1,000万円~2,000万円の企業では、2012年4~6月期から、売上高が前年の半分程度に激減している。このため、2012年10~12月期の営業利益はマイナスになった。この期には、2,000万~5,000万円の企業も営業利益がマイナスだ。生産が増加しないため、中小企業の受注が増えていないのだ。中小企業にとって、厳しさは増している。
 もっとも、大企業も安泰ではない。円安は販売台数を増していない。販売台数の増加のためには補助金が不可欠だ。しかし、これまでの補助金の成果は、ボーナスという形で従業員に配ってしまった。だから、再び補助金を求めるわけにはいくまい。自動車産業は、自分で自分の首を絞めてしまった。

□野口悠紀雄「円安下で深刻さを増す自動車産業の環境 ~「超」整理日記No.654~」(「週刊ダイヤモンド」2013年4月6日号)
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