(1)6月8日、ダイエー新松戸店は、700品目の値下げに踏み切った。平均15%、なかには3割近くの値下げ商品も。菓子からパンなどの食料品から、柔軟剤や造次用品などの日用品、さらにはカーテンなどの雑貨まで。
<例1>「ブルガリアのむヨーグルト」(明治) 228円→198年(▲13%)
<例2>「熟成極み素麺」(日清フーズ) 228円→198円(▲18%)
<例3>柔軟剤「レノアプラス詰替」(P&G) 278円→228円(▲18%)
(2)輸入する小麦などの原材料、エネルギー価格が円安引き上げられ、食品メーカーが相次いで値上げを表明している中、どうして値下げなのか。
価格競争が激化しているからだ。ただでさえ消費者の財布のヒモが固くなっているなか、ドラッグストアが食料品を売り出したり、JRが商業施設「駅ナカ」をつくったりして、業態をまたいだ競争相手が一気に増えたからだ。とりわけ脅威になっているのが、コンビニエンスストアだ。
<例>「セブン-イレブン」では、総菜などの食料品の品ぞろえを強化し、これまで取り込めなかったシニアや主婦などの顧客層を獲得している。現在、取り扱い商品の5割以上が食料品だ。かくしてスーパーは、じわじわと客を奪われている。
(3)(2)のようなあおりを受け、スーパーの業績は冴えない。2012年の大手スーパーなどの国内年回販売額は12兆5,340億円だった。ピークの1997年の4分の3に、落ち込んだ。
競争が厳しいなか、値下げしないと客を奪われてしまう。【ダイエーIR広報部】
消費者の低価格志向は、非常に根強い。
そこで値下げとなるのだ。
ダイエーが昨年9月の第一弾から第四弾まで継続して値下げしたのは、1,300品目。、今回と合わせて2千品目にのぼる。今後も定期的に取り組んでいく、という。
(4)親会社のイオンも昨年6月に1千品目を値下げした。シーズンごとに商品を入れ替えているものの、値下げは現在も継続している。「値上げをせずにどうやってコストを吸収するか」はイオン内部で常に話し合っている。
(5)値下げは、もろ刃の剣だ。値下げしただけ利益が減少するので、会社の業績が悪化するリスクをはらむ。
値下げすればある程度のインパクトになり、集客数は伸びるかもしれない。だが、長期的戦略としては疑問。【東秀樹・日本総合研究所主席研究員】
値下げで現象した利益の分を納入するメーカー側に負担してもらっているのか。
商談がうまくいったか、いかないかによって価格を決めるわけではない。【ダイエーIR広報部】
(6)値下げと利益確保を両立させる「秘密」は何か。
自社で開発するプライベートブランド(PB)がヒントだ。
PBは、メーカーが製造し、スーパーが自社ブランドとして売る商品だ。大量に発注して返品しないから製造費が安い。包装やデザインが簡素だ。広告費をかけずに自社の流通網に乗せて工場から店舗に直接運ぶので、卸売会社を通すより物流費を下げることができる。
かくて、PB商品は利幅が非常に大きい。粗利益が5割に近いPB商品もある。ナショナルブランド(NB)より安く売っても利益を稼げる。
(7)ダイエーはイオンのPB「トップバリュ」の売場を増やす方針だ。
誰でも知っているNBを値下げして多数の顧客に来店してもらい、利幅の大きいPBも一緒に買ってもらう。そうすればzせんたいとして利益を確保できる、というわけだ。
大々的に打ち出すNB商品の値下げは、客寄せの役目を果たすのだ。
事実、過去の値下げで対象商品の販売数が4割伸び、PB商品の拡販につながった。【ダイエーIR広報部】
(8)以上からして、スーパーが稼ぐには、PB商品の拡充が不可欠だ。
英大手スーパー「テスコ」ではPB商品の比率が全体の40~50%に達する。日本のスーパーも、PB商品の比率がこの程度まで高まってもおかしくはない。今後はスーパーが農業や水産業にも進出し、PB商品として野菜や魚などの生鮮食品を販売することもあり得る。
ただし、質の悪いPB商品には消費者は見向きもしないから、品質管理が厳しいメーカーと組んで、安全で質の高いPB商品を開発しなければならない。
イオンのように体力がある大企業でないと難しいかもしれない。
□常冨浩太郎・竹内良介(本誌)「ダイエー700品目値下げの「秘密」」(「週刊朝日」2013年6月21日号)
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<例1>「ブルガリアのむヨーグルト」(明治) 228円→198年(▲13%)
<例2>「熟成極み素麺」(日清フーズ) 228円→198円(▲18%)
<例3>柔軟剤「レノアプラス詰替」(P&G) 278円→228円(▲18%)
(2)輸入する小麦などの原材料、エネルギー価格が円安引き上げられ、食品メーカーが相次いで値上げを表明している中、どうして値下げなのか。
価格競争が激化しているからだ。ただでさえ消費者の財布のヒモが固くなっているなか、ドラッグストアが食料品を売り出したり、JRが商業施設「駅ナカ」をつくったりして、業態をまたいだ競争相手が一気に増えたからだ。とりわけ脅威になっているのが、コンビニエンスストアだ。
<例>「セブン-イレブン」では、総菜などの食料品の品ぞろえを強化し、これまで取り込めなかったシニアや主婦などの顧客層を獲得している。現在、取り扱い商品の5割以上が食料品だ。かくしてスーパーは、じわじわと客を奪われている。
(3)(2)のようなあおりを受け、スーパーの業績は冴えない。2012年の大手スーパーなどの国内年回販売額は12兆5,340億円だった。ピークの1997年の4分の3に、落ち込んだ。
競争が厳しいなか、値下げしないと客を奪われてしまう。【ダイエーIR広報部】
消費者の低価格志向は、非常に根強い。
そこで値下げとなるのだ。
ダイエーが昨年9月の第一弾から第四弾まで継続して値下げしたのは、1,300品目。、今回と合わせて2千品目にのぼる。今後も定期的に取り組んでいく、という。
(4)親会社のイオンも昨年6月に1千品目を値下げした。シーズンごとに商品を入れ替えているものの、値下げは現在も継続している。「値上げをせずにどうやってコストを吸収するか」はイオン内部で常に話し合っている。
(5)値下げは、もろ刃の剣だ。値下げしただけ利益が減少するので、会社の業績が悪化するリスクをはらむ。
値下げすればある程度のインパクトになり、集客数は伸びるかもしれない。だが、長期的戦略としては疑問。【東秀樹・日本総合研究所主席研究員】
値下げで現象した利益の分を納入するメーカー側に負担してもらっているのか。
商談がうまくいったか、いかないかによって価格を決めるわけではない。【ダイエーIR広報部】
(6)値下げと利益確保を両立させる「秘密」は何か。
自社で開発するプライベートブランド(PB)がヒントだ。
PBは、メーカーが製造し、スーパーが自社ブランドとして売る商品だ。大量に発注して返品しないから製造費が安い。包装やデザインが簡素だ。広告費をかけずに自社の流通網に乗せて工場から店舗に直接運ぶので、卸売会社を通すより物流費を下げることができる。
かくて、PB商品は利幅が非常に大きい。粗利益が5割に近いPB商品もある。ナショナルブランド(NB)より安く売っても利益を稼げる。
(7)ダイエーはイオンのPB「トップバリュ」の売場を増やす方針だ。
誰でも知っているNBを値下げして多数の顧客に来店してもらい、利幅の大きいPBも一緒に買ってもらう。そうすればzせんたいとして利益を確保できる、というわけだ。
大々的に打ち出すNB商品の値下げは、客寄せの役目を果たすのだ。
事実、過去の値下げで対象商品の販売数が4割伸び、PB商品の拡販につながった。【ダイエーIR広報部】
(8)以上からして、スーパーが稼ぐには、PB商品の拡充が不可欠だ。
英大手スーパー「テスコ」ではPB商品の比率が全体の40~50%に達する。日本のスーパーも、PB商品の比率がこの程度まで高まってもおかしくはない。今後はスーパーが農業や水産業にも進出し、PB商品として野菜や魚などの生鮮食品を販売することもあり得る。
ただし、質の悪いPB商品には消費者は見向きもしないから、品質管理が厳しいメーカーと組んで、安全で質の高いPB商品を開発しなければならない。
イオンのように体力がある大企業でないと難しいかもしれない。
□常冨浩太郎・竹内良介(本誌)「ダイエー700品目値下げの「秘密」」(「週刊朝日」2013年6月21日号)
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