語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~

2013年08月16日 | 社会
 (1)「ブラック企業」が社会問題化している。苛酷な長時間労働、賃金不払い、etc.・・・・。
 こうした中、7月31日、「ブラック企業被害対策弁護団」【注】という全国組織が結成された。

 (2)同日、厚生労働省で会見を開き、佐々木亮・同弁護団代表/弁護士が次のように語った。
 ブラック企業の狭義の定義は、「新興産業において若い労働者を採用しては使い潰す会社」だ。広義の定義は、「不当な労働を強いて労働者の心身を危険にさらす企業」だ。
 <典型例>
  (a)長時間労働(安全配慮義務違反)
  (b)残業代不払い
  (c)詐欺まがいの契約(固定残業代、直前での雇用形態変更、etc.)
  (d)管理監督者制度・裁量労働制の濫用
  (e)パワーハラスメント
  (f)過労鬱・過労自殺・過労死の隠蔽

 (3)今後の活動展開としては、被害者の法的権利実現、被害の対応策研究と情報発信、ブラック企業の実態調査、社会への問題提起、etc.。
 同弁護団には、北海道から長崎県まで50人超が名を連ねている(7月31日現在)。
 今後も規模を広げ、組織としては各都道府県に1人ぐらい、以外舎が相談できる窓口を置きたい。【佐々木代表】

 (4)会見では、実際にブラック企業の被害を受けた3組も列席し、それぞれの実体験を報告した。
 <例>エステ・マッサージ職従事者(女性、20代)・・・・深夜におよぶ重労働、朝礼で過度に叱責される現場、etc.を証言。
  「働いている間はずっと辛かった」
  「相談して気持ちが楽になった。自分と一緒に怒ってくれる人がいることが嬉しかった」
  「(同世代の被害者は)一人で悩まないで」

 【注】HP「ブラック企業被害対策弁護団

□内原英聡(本誌編集部)「「ブラック企業」は根深い問題 被害対策弁護弾が発足」(「週刊金曜日」2013年8月9日号)

 【参考】
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【図書館】運営を民間にお任せ ~アイデア~

2013年08月15日 | 社会
 図書館の運営に、企業やNPO法人が携わる動きが広がっている。民間の多用なアイデアを反映し、気軽に立ち寄れる場所として人気を集めている。観光名所にもなっている(4)のような事例もある。

(1)酒ドットコム前原図書館
 (a)場所・・・・千葉県船橋市駅前の酒店
 (b)特色・・・・高級洋酒、日本酒が並ぶ店内の一角に、500冊の小説、絵本蔵する本棚が置かれている。店の営業時間内なら誰でも無料で利用可。店にとっての副次的効果もあり、本を借りるついでに酒や菓子を買う人もいて、来店客が増えた。
 (c)開始時期・・・・2013年4月
 (d)運営・・・・NPO法人「情報ステーション」
   ①「情報ステーション」は、船橋市を中心に15ヵ所で「民間図書館」を運営。
   ②「民間図書館」の場所は、酒店のほか、団地、老人ホーム、パン店など。
   ③蔵書は、個人から贈られた本。ジャンルは幅広い。
   ④手続きや本の整理は、小学生から70代までのボランティア450人が行う。
   ⑤施設には、ラジオを流すなど、誰でも気兼ねなくおしゃべるできる工夫を凝らす。時にはイベント(<例>パソコン教室)の会場になる。
   ⑥狙いは、(学校や会社以外に)地元でつながりをつくるきっかけづくり。⇒利用者同士が親しくなり、家にこもりがちな高齢者や子育て中の主婦が一緒に喫茶したり、高齢者が小学生に宿題を教えたり、といった交流も生じた。

(2)千代田区立日比谷図書文化館
 (a)場所・・・・東京・日比谷公園の緑に囲まれた館の地下1階
 (b)特色・・・・本を持ち込めて、アルコール類や食事を楽しめるレストランがある。ビールが入ったグラスを片手にゆったりと読書できる。なお、1階にはコーヒーや軽食を出すカフェも。
 (c)開始時期・・・・2013年1月
 (d)運営委託先・・・・外食チェーン「プロントコーポレーション」(地下1階のレストランも1階のカフェも)
   ①時間帯によって利用者はさまざま。
     <例>昼間は子連れの主婦がお茶をしながら。夜は近所で働く女性が夕食を食べながら。

(3)まんのう町立図書館
 (a)場所・・・・香川県まんのう町
 (b)特色・・・・楽天の電子書籍端末を無料で借りられる。端末ごとに異なる組み合わせでお薦めのタイトルが複数入っており、利用者は1台で手軽に楽しめる。
 (c)開始時期・・・・2013年6月。
 (d)運営委託先・・・・図書館運営の受託会社「リブネット」と宮脇書店の共同企業体

(4)武雄市図書館
 (a)場所・・・・佐賀県武雄市
 (b)特色・・・・年中無休にし、開館時間を1日4時間延長。雑誌や文具販売スペースやカフェも設ける。貸し出しカードは「Tカード」を導入。本を借りてポイントがつく。【注1】
 (c)開始時期・・・・2013年4月【注2】
 (d)運営委託先・・・・レンタル大手「TSUTAYA」を展開する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」

 【注1】このくだりは、記事「波紋広げる武雄市図書館のツタヤ委託計画」(佐賀新聞2012年5月12日付け)に拠る。
 【注2】このくだりも、前掲記事に拠る。

□記事「図書館運営 民間にお任せ」(日本海新聞2013年8月7日付け)
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【旅】「古代ハスの園」

2013年08月14日 | □旅
 「伯耆古代の丘公園・白鳳の里」の一部、「「古代ハスの園」」にて。

 【紅舞妃蓮】


 【誠蓮】


 【ネール蓮】


 【粉松球】


 【鶴頂紅蓮】


 【淀姫】


 【八重茶碗蓮】


 【鼓浪小紅蓮】


 【落霞映雪】


 【鶴頂紅蓮】


 【仏座蓮】


 【白万々】


 【白繍蓮】


 【白光蓮】


 【輪王蓮】


 【端光蓮】


 【金輪蓮】


 【ネール蓮】


 【粉松球】


 【誠蓮】


 【紅舞妃蓮】


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【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~

2013年08月13日 | 社会
 (1)危険なのは、米だけではない。とりわけアサリ、エビ、ピーナッツ、漬物などが、たびたび食品衛生法違反で摘発されている。
 なぜ中国産食品は危険なのか?

 (2)山東省青島のアサリ加工工場は、アサリを大連で買い付けて養殖している。青島の海は工場排水で汚れているからだ。
 養殖場から工場へ搬入する段階で、すでに腐り始めていて、異臭を放っている。
 アサリ選別作業場では、強烈なアサリの腐敗臭が立ちこめている。パッキングする工場に持っていく前に火を入れる、と従業員はいうが、その釜には黒い泥水の下にアサリが沈み、ドブ川にまがう強烈な臭いが立ちこめる。
 これらのアサリは日本にも輸出される。

 (3)珠海市(マカオの北)にスズキやエビを日本に輸出している企業がある。
 エビは日本の安全審査が厳しいから、この企業の設備ではクリアできない。だから、全部国内向けだが、加工会社には送っている。中国国内向けのエビがフライに化けて日本に入っている。
 あるいは、一度台湾に運び、台湾産として売っている。

 (4)四川省成都の市場では、肉屋は肉を冷蔵庫に保管していない。ために腐敗臭がひどい。その臭いにハエが群がってくるのだが、店員はハエではなく肉に直接殺虫剤を撒く。
 落花生売場では、カビまみれの豆が積まれている。カビ毒のアフラトキシン・・・・
 こうした衛生観念の欠如が、「猛毒食品」を生み出す根本的要因だ。
 中国政府は、威信をかけて「食品の安全性」を強調しているが、現場の中国人はちっとも気にしていない。収入が落ちるくらいなら、どんな農薬でも使う。【地元の日本人実業家】

 (5)成都から車を1時間ほど走らせると、日本へ漬物を輸出している工場がある。
 作業場では、ニンニクを加工している隣に、タンクがある。タンクの中は汚水が溜まり、ゴミと一緒に麻袋のような白い袋が幾つも浮かんでいる。まるでゴミ溜めだ。
 ニンジンを付けているのであった。水は塩水だった。もう何年も取り替えていないから、汚水の色に変わっているのだ。
 袋は、工業製品を入れていた廃袋だった。

 (6)ひところ、発癌性のあるマラカイトグリーンによる深刻な汚染が話題になった中国産鰻は、その後どう変わったか。
 広東省深?近郊にある企業(日本向けに鰻を輸出)は、2万ムーの養鰻池を経営している。
 この7月には全部売り切れた。
 さすがにマラカイトグリーンを使用している気配はないが、発癌性のある猛毒のホルムアルデヒドを使用していた。
 「生簀に使うのであって、池には使わない」と従業員は必死に弁明したが、養殖に詳しい八竹昭夫・元獣医師によれば、「生簀を洗うのにホルムアルデヒドを使うなんて聞いたことがない」。
 養鰻場の裏には巨大な飼料会社があり、工業廃水がそのまま川に流されていた。糞尿も混ざったこの川の水と山の水を半分ずつ使って、ウナギが飼育されているのだ。
 別の養鰻場では、小屋に鶏を飼い、その糞便をそのまま池に落として、ウナギの養分にしていた。
 もっとも、衛生管理が行き届いた工場もある。そうした工場がある一方で、管理がまったくできていない工場が数多くあるために、「猛毒食品」が後を絶たない。

 (7)中国には、平準化された安全基準がない。ダブルスタンダードの存在が、問題を引き起こしているのだ。
 日本では当たり外れがあっても、食べて死ぬことはない。だが、中国では死ぬこともある。【ある中国人実業家】
 それは日本への輸出品にも当てはまる。とりわけブラックボックスといわれる加工食品は、何が起こっても不思議でない。
 中国は、川も土も空気も、日本とは比較にならないほど汚染されている。そんな国に、日本は「食」という生命線を預けている。
 中国の加工品を食べるなら、それなりの覚悟をして食べるべきだ。【高橋五郎・愛知大学教授】

 (8)中国の最も汚染が深刻な30品目
   (a)水産物・・・・ウナギ(うな丼・蒲焼き、アサリ(あさり茶碗蒸し・ボンゴレビアンコ)、エビ(海老フライ・海老天)、穴子(寿司ネタの穴子、白身魚(白身魚・さわら西京焼)、こはだ(寿司ネタのこはだ)
   (b)穀物・野菜・果実・・・・米(煎餅・チャーハン(冷凍))、茶(ペットボトルの茶)、ピーナッツ(柿ピーナッツ・ピーナッツバター)、ホウレンソウ(冷凍・外食のホウレンソウ炒め)、ブロッコリー(冷凍の茹でたブロッコリー)、きのこ(干ししいたけ・炊き込みご飯の素)、葱(フリーズドライ葱・ねぎとろ巻き)、玉葱(冷凍の玉葱みじん切り)、枝豆(冷凍・居酒屋の枝豆)、桃・苺(フルーツポンチ・冷凍イチゴ)、りんごジュース(外食のりんごジュース)、ニンニク(ペペロンチーノ・食べるラー油)、生姜(ガリ・紅生姜)、蕎麦・蕎麦粉(そば)
   (c)家禽類・・・・豚(ソーセージ)、鶏(フライドチキン・唐揚げ)、卵(かに玉・オムレツ)
   (d)その他・・・・餃子・肉まん(冷凍餃子・コンビニの肉まん)、漬物(カニ蒲鉾・魚肉ソーセージ)、魚肉加工品(蒲鉾・カニ蒲鉾・魚肉ソーセージ)、油(冷凍食品の揚げ物・炒め物.)、ドライフルーツ(干しぶどう・クランベリーミックス)、酒類(紹興酒・白酒)、即席ラーメン(カップラーメン)

□奥野修司+本誌特別取材班「「中国猛毒食品 最新版」 いま絶対食べてはいけない30品目リスト」(「週刊文春」2013年8月15・22日夏の特大号)

 【参考】
「「【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
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【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~

2013年08月12日 | 社会
 (1)東日本大震災をきっかけに、中国産米の本格的な輸入が始まった。昨年は5万トンまで増えた。今年は5月の時点で3万トン超だから、年末には昨年の輸入量を超えるのは確実だ。
 しかし、中国産米は、重金属や有機塩素による深刻な汚染が懸念されている。
 問題は、それだけではない。
 中国では、安全性が確認されていない遺伝子組み換え米(GM米)が野放図に栽培されているのだ。中国政府さえ、その実態を把握していない。
 そして、このGM米が日本人の口に入っている可能性がきわめて高いのだ。
 GM米が混入してたために、日本の検疫で摘発された中国産米の件数は、38件(2007~12年)。
 摘発された品目は、主としてビーフン・うるち米などの加工品だ。
 
 (2)GM米のDNAには、昆虫病原細菌の bt 蛋白が組み込まれている。害虫が食べると死ぬ。だから、農家は殺虫剤を使わなくて済む。
 だが、 bt 蛋白は人間にもアレルギーを誘発する。動物実験では、不妊、生殖能力の喪失、精子の減少などが指摘されている。
 かかる遺伝子組み換えを、中国では地方の研究所などが勝手に行っている。安全性がまったく確認されていない「未確認GM米」なのだ。

 (3)欧州食品安全機関は、迅速警報システム(RASFF)で中国産米への警戒を呼びかけている。
 EU圏内に輸出された中国産米製品に未確認GM米が混入していた件数は、172件(2006~13年)。今年だけでも18件にのぼる。【RASFF】
 こうした事態を受けて、EUは中国産米の検査を強化している。今年6月には、中国産米製品の輸入規制を強化する決定を下している。

 (4)なぜ中国は、主食である米にまで危険な遺伝子組み換えをするのか。
 10年ほど前、華中農業大学(湖北省)で研究していたGM米の種籾が、農民の手にわたって一気に広がった。政府は市場への流通を認めていないが、2009年にGM米に安全証明を与えたため、さらに広がった。これらは中国南部の9つの省で発見されている。あられなどの食品加工会社で見つかっている(業務用としてかなり出回っている)。
 2004年に湖北省で950~1,200トンの未承認GM米が市場に流れた。すでに浙江省で販売されている米の17%はGM米だ。浙江省の850万人がこれを食べている。【蒋高明・中国化学員植物研究所】
 農民は、遺伝子組み換えなど知らない。農薬代がいらないからすばらしい、という程度の認識で、どんどん使う。政府の米買い取り価格が低いから、農薬代の節約になるなら、大歓迎するのだ。
 昨年、中国政府の買い取り価格は2.8元/kg。5ムー(テニスコート13個分)の田んぼから2トン収穫があるとしても、わずか5,600元(9万円)。生活ができない。そこで農民は、コストを下げるためにGM米に飛びつく。
 中国政府は「販売していない」と言うが、EUで摘発された「科豊6号」(福建省)などの未承認GM米が公然と流通している。これだけ広がってしまったら、政府がいくら流通を認めないと言っても、コントロールできない。

 (5)中国人のGM米に対する認識は、あまりにも低い。中国では、カドミウム汚染米が話題になっても、GM米はほとんど知られていない。
 スーパーで販売されている一般の米の中に未承認GM米が混入していた事例も多数報告されている。どの米にどれだけ混ざっているのか、誰も把握していない。中国は、巨大な人体実験場と化している。
 中国の市場では、4元/kg程度の安い米が溢れている。これらがGM米で占められるのは時間の問題だ。
 これまで、中国は農薬と化学肥料を大量に使いながら生産量を上げてきたが、もう限界だ。新しい薬剤耐性の害虫がどんどん出てきている。食糧自給を確保するには、通常の農業技術依存では限界で、遺伝子組み換えが必要になっている。中国は、今後も遺伝子組み換えを拡大していく算段だ。遺伝子組み換え作物は、工業製品、つまり加工品で大量に使うつもりだろう。【高橋五郎・愛知大学教授】
 食糧自給率が9割に低下した中国は、遺伝子作物なしに食糧生産は成り立たないのだ。
 加工品など米の味が直接わからないものは、一番価格の安い米を使う。だから、GM米も加工会社や外食産業で使われる可能性が高い。
 日本に入ってきている中国産米、それを加工した食品(煎餅、あられ、ビーフン、etc.)に未承認GM米が使用されている。
 日本政府は、EUとは違い、中国産米に厳しい検査を義務づけていない。国がモニタリング検査をするのはわずか3%だ。混入した未承認GM米や、それらを使用して加工された食品が検疫をすり抜けている可能性は否定できないのだ。

□奥野修司+本誌特別取材班「「中国猛毒食品 最新版」 いま絶対食べてはいけない30品目リスト」(「週刊文春」2013年8月15・22日夏の特大号)
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 【参考】
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
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【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
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【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド

【政治】自民党パワー・エリートが中、韓、沖縄と問題を起こす ~麻生ナチス発言~

2013年08月11日 | ●佐藤優
 (1)7月29日、改憲問題に関連して「ナチス政権の手口に学んだらどうか」と口走った麻生太郎・副総理兼財務相【注1】。
 この発言に、米国のユダヤ人権団体が非難声明を発表した。中国、韓国の外交当局も公式に批判した。
 麻生は、8月1日、ナチスを例として用いたことを撤回した。しかし、謝罪はしなかった【注2】。
 麻生は、翌2日、「狂騒の中でナチスが出てきた悪しき例として我々は学ばないといけないと言った」と改めて釈明。非難声明を発表した米国ユダヤ人団体に陳謝する考えは「ない」とも強調した。野党からの閣僚・議員辞職要求についても「辞職するつもりはない」と否定した【注3】。
 麻生は、悪いことをしたと思っていないので、謝罪しないのだ。

 (2)発言全体に関しては、ナチスを正当化するものではない、という認識を麻生も示している。
 しかし、ここで重要なのは、麻生がどのような文脈でこの発言を行ったかを実証的に検討することだ。
 <僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。/昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。/わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。>【注4】
 たしかに、麻生はここで、憲法改正論議を心してやらないと、という趣旨を述べている。同時に、<みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね>【注5】と述べているから、肯定的な文脈でナチスの手口に学べと麻生が主張した、と解釈される余地が十分にある。

 (3)ここで補足。麻生は「ナチス憲法」が存在している、と勘違いしているらしい。
 ナチスは、ワイマール憲法を改正していない。1933年にヒトラーに憲法を超える立法権を付与する「民族及び国家の危機を除去するための法律(全権委任法)」を採択した。しかし、法律改正は行わず、形式的にはワイマール憲法はヒトラー時代にも存続した。
 安倍政権は、内閣法制局による憲法解釈を変更することにより、集団的自衛権の行使を可能にしようとしている。このアプローチが、麻生発言によって、ナチスの全権委任法によるワイマール憲法の形骸化という「手口に学んだもの」と、国際社会から見られる可能性がある。

 (4)麻生は、さらに次のように述べている。
 <僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください>【注6】
 麻生は、上からの視線で、聴衆にヒトラーが軍事力で政権を取ったように思われているのは「全然違いますよ」、ドイツ国民がヒトラーを選んだこと「間違わないでください」と教えを垂れている。
 ヒトラーは、国会議事堂放火事件を最大限に利用し、共産主義者、社会民主主義者などに弾圧を加え、権力を掌握した。この歴史的事実を、麻生は完全に無視している。

 (5)問題を麻生の失言癖に矮小化してはならない。
 自民党国会議員で、歴史修正主義的見解を表明す人が少なからずいる。彼らの歴史的認識の特徴は、無意識のうちに独自のプリズムを通して歴史を構築していることだ。過去の出来事の一部を拡大し、別の部分を黙殺する。そして、実証性が希薄な「物語としての歴史」に固執するのだ。
 かかる歴史的認識に立つ人が権力を持っていなければ、大きな悪影響は生じない。しかし、麻生は副総理兼財務相で、現下日本の権力の中枢にいる。
 <権力(パワー)エリートは、普通一般の男女の生活している日常生活環境を超越しうるような地位を占める人々によって構成されている。すなわち、かれらは、重大な決定を下しうる地位を占めている。かれらが、そのような決定を実際に下すか下さないかということはあまり重要ではない。すなわちかれらの不作為、ないし決定回避それ自体が一つの行為であり、それは往々にして、かれらの下す決定よりもいっそう重要な結果をひき起こす。というのは、かれらは、現代社会の主要な諸秩序と諸機関を支配しているからである>【注7】

 (6)参院選後、自民党の政治家は、無意識のうちに「我々はパワー・エリートなので、国民の統制に服する必要はない」という認識を抱き始めている。
 それが麻生発言で顕在化した。
 近未来、韓国、中国、さらに沖縄との関係で、自民党パワー・エリートの実証性希薄な歴史認識が深刻な問題を引き起こすことになるであろう。

 【注1】「【政治】麻生太郎副総理“オフレコ”失言集
 【注2】記事「「麻生氏が発表したコメント全文」」(朝日デジタル2013年08月01日11時46分)
 【注3】記事「麻生氏「真意、理解してもらえた」 辞職を否定」(朝日デジタル2013年08月02日12時11分)
 【注4】記事「麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細」(朝日デジタル2013年08月01日02時18分)
 【注5】前掲記事。
 【注6】前掲記事。
 【注7】C・W・ミルズ(鵜飼信成/綿貫譲治・訳『パワー・エリート(上)』(東京大学出版会、1981)

□佐藤優「中、韓、沖縄と問題起こす麻生ナチス発言の本性 ~佐藤優の飛耳長目87~」(「週刊金曜日」2013年8月9日号)
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【政治】麻生太郎副総理“オフレコ”失言集

2013年08月10日 | 社会
 (1)憲法改正にからんで、「ナチス政権の手口に学んだらどうか」と発言した麻生太郎・副総理兼財務相。
 海外や野党から猛バッシングを受け、撤回したが、党内では「要職に起用し続けて大丈夫なのか」という声が広がっている。
 今回の失言に特にカンカンだったのは、菅義偉・官房長官だ。発言の深刻さを理解していなかった麻生に対し、電話で「大きな誤解を招いている。撤回も含めて検討してほしい」ときつい口調で迫った。
 昨年末の安部政権発足後から、菅長官は初入閣の大臣に対し、「発言には十分気をつけるように」と釘をさしていた。ところが、そんな場でも麻生は「俺を注意しなくていいのか。一番危ないぞ」と軽口をたたいていた。だから余計に菅は麻生に腹を立てた。せっかく参院選で大勝し、ねじれを解消したのに、総理経験者が足を引っ張ったからだ。

 (2)麻生太郎・失言録(その1)
  (a)1983年(衆議院議員)・・・・「女性に参政権を与えたのは失敗だった」
  (b)2008年(首相)・・・・「多額の収入がありながら、(定額給付金の)『12,000円をちょうだい』と言う方はさもしい」
  (c)2008年(首相)、全国知事会議で・・・・「はっきり言って医者は社会的常識が、かなり欠落している人が多い」
  (d)2013年1月(副総理)・・・・「(終末期医療に関して)さっさと死ねるようにしてもらわないと」

 (3)麻生太郎・失言録(その2)
  (a)2011年、ある講演で・・・・「日本ほど安全で治安の良い国はない。ブサイクな人でも美人でも、夜中に平気で歩けるのだから」
  (b)「(高村正彦・自民党副総裁の仕事ぶりを)弁護士あがりの議員は口先だけの人が多いけど、高村副総裁だけは違う」・・・・ちなみに、安部内閣の3閣僚も公明党トップも弁護士出身。
  (c)2013年4月、名古屋市長選で応援した全自民党市議が河村たかしに敗れた後・・・・「名古屋人というのは民度が低い。あんな市長(河村たかし)を選んじゃうんだから」
  (d)2013年6月、東京都議選で、千代田区内で行った応援演説で・・・・「八王子や西多摩って、まだ東京都なんだなあ。奥多摩なんてえらい人が少ない。私の住んでいる筑豊のほうが、まだ人がいる」

 (4)麻生太郎・失言録(その3)【注】
  (a)長崎県諫早市での自民党長崎県連主催の講演会で・・・・「(定額給付金について)貧しい人には全世帯に渡すが、『私はそんな金をもらいたくない』という人はもらわなきゃいい。(年収が)1億円あっても、さもしく1万2000円が欲しいという人もいるかもしれない。それは哲学、矜恃(きょうじ)の問題で、それを調べて細かく(所得制限を)したら手間が大変だ」
  (b)経済財政諮問会議で・・・・「(保険制度について)たらたら飲んで、食べて、何もしない人(=患者)の分の金(=医療費)を何で私が払うんだ」  ⇒「病気になるのは本人の不摂生(自己責任)のため」と受け止められた。
  (c)金沢市における講演で・・・・「『大変だ、大変だ』と言って靖国の話をするのは基本的に中国と韓国、世界191ヵ国で2ヵ国だけだ」
  (d)2009年、首相時代に広島市における講演で・・・・「(北朝鮮がミサイルを撃ったことについて)金正日に感謝しないといけない」

 【注】このくだりは、「政治家の失言、不適切発言」に拠る。

□本誌取材班「まだまだあった麻生副総理“オフレコ”失言集」(「週刊朝日」2013年8月16・23日号)
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【消費税】第三の矢が折れる日 ~成長戦略破綻の構図~

2013年08月09日 | 社会
 (1)来春の消費増税をめぐる議論が白熱してきた。
 だが、消費税をどうするか、と同時に議論すべきもっと重要な問題がある。

 (2)アベノミクスのおかげで日本経済に急に活気が出てきた・・・・ように一見見受けられる。
 しかし、異次元の金融緩和の効果はマクロの世界の、しかも名目でのこと。これで国民生活が豊かになるわけではない。
 財政バラマキも持続可能な政策ではない。
 実質の世界で景気を本当によくするには、第三の矢(成長戦略)が放たれなければならない。
 経済音痴の日本のマスメディアは、金融緩和による円安と株高に熱狂し、構造改革に無関心だった。
 他方、欧米メディアは、当初から、アベノミクスを高く評価していた・・・・ただし、構造改革をセットで実施することを前提として。

 (3)財務省は、消費税を上げなければ日本への信頼が失われる、という。
 しかし、これは正しくない。
 消費増税だけなら、ギリシアもイタリアもスペインもやった。けれども、彼らは財政危機に陥っている。借金の額もGDP比率も、問題の本質ではない。市場に見放された原因は、彼らが経済成長のための構造改革を怠り、借金を返す能力を失ったからだ。

 (4)自民党の消費増税派の大半(麻生財務相がその筆頭)は、構造改革反対派だ。彼らにとって増税の目的は、財政再建ではなく、バラマキ原資の確保だ。
 官僚も同じだ。
 自民党の構造改革反対派と官僚は、増税による景気の腰折れ防止という名目で、さらなるバラマキをするから財政赤字は縮小しない。
 再来年の消費増税もあるから、バラマキ継続になって、結局財政再建はできない。
 この結果、さらなる増税に向かう。かくて、市場の信頼は失われる。

 (5)消費増税を先延ばしにする代わりに、無駄な歳出のカットと大胆な構造改革路線(農協・医師会・電事連の利権を剥ぎ取る)を打ち出すと、どうなるか。
 市場は、政府の強固な意志を好感し、そういう政府ならばいくらでも増税できるだろう、と予想する。稼ぐ力ができるから、増税の力もできる、と見られる。日本への信認は失われない。

 (6)増税実施の是非は本質ではない。重要なのは、既得権と闘って、痛みを伴う成長政策を実行できるか、だ。ねじれ解消後3年間選挙をしなくてすむ安部政権にはその期待がかかる。
 しかし、期待は満たされないだろう。2012年の総裁選で、石破茂に次ぐ二番手だった安倍晋三が、決選投票で逆転して総裁になれたのは、自民党の長老や派閥領袖たちが、「安倍なら無茶苦茶なことはしないだろう」と支持に回ったからだ。
 今、世界が期待しているのは、無茶苦茶なこと(これまでの自民党をとりまく既得権益層の岩盤を突き崩して痛みを伴う改革をすること)だ。
 自民党守旧派長老たちが安倍支持に回ったのは、それはできない、と読んだからだ。
 しかも、参院選比例区では、農協、郵便局、医師会、歯科医師会などの候補が軒並み上位当選した。今後は団体へのご恩返しの政治が始まる。
 その結果、成長戦略は不発に終わる。

 (7)安部政権は、この秋、投資減税で時間稼ぎを図り、「これからが本番」と称して、「守旧派と闘う総理」を演出するだろう。
 しかし、最近本気で日本ウォッチを始めた海外メディアは、日本のメディアと違い、政権のポチではない。演技は早晩見抜かれる。
 その先に待ち受けるのは、消費増税実施の如何を問わず、市場の信認を失う日本だ。

□古賀茂明「安部政権の「演技」が見抜かれる日 ~官々愕々第74回~」(「週刊現代」2013年8月17・24日号)

 【参考】
【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~
【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~
【原発】電力会社を救済する経産省の幹部たち ~利権~
【原発】電力、経産省、メディア・・・・の嘘、今も
【官僚】マイナンバーで焼け太る官僚とITゼネコン
【沖縄】 「普天間基地返還の時期明示」の欺
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【本】晴れゆく空 ~谷口ジローの異界~

2013年08月08日 | 小説・戯曲
   

 (1)7月3日0時51分、府中矢川通りにて、交通事故(ワゴン車vs.二輪車)。
 加害者:久保田和広(42歳、会社員)、被害者:小野寺卓也(17歳、高校生)。

 (2)久保田和広、7月13日深夜、意識不明のまま逝去。

 (3)小野寺卓也、同日同時刻、脳波復活(微弱)、脳幹反射復活(僅少)、脳圧低下。
 7月15日、脳波回復途上(微弱)、脳圧数値安定。
 7月21日、自発的呼吸回復。
 7月22日、経過良好(脳波・脳圧・脈拍)。
 7月25日、覚醒。ただし、覚醒したのは久保田和広の意識であった(和広の意識を以後Kと略記)。小野寺卓也の身体の中に。

 (4)7月28日、Kは事故直前を回想。納品の途中だったか。会社は人手不足、製品の生産が遅れて、残業の毎日だった。ほぼ毎日12時間労働。疲れた、もう限界だった。そして、対向車の二輪車と接触。
 Kは、卓也を見舞う家族や医者に、自分は久保田和広だ、と伝える。
 両親は医師と相談する。
 医師は、脳の障害や外傷によるものとは思われない、おそらく自伝的記憶の喪失は一時的なものだろう、という。いわく、CT検査結果は問題ないし、脳圧・脳波は正常だし、脳幹の隙間も広がってきているのだから、身体のリハビリを兼ねて、あせらず、ゆっくり治療していきましょう、云々。

 (5)8月1日、病院内を車いすで移動中、鏡に映った自分の姿を見て、Kは衝撃を受ける。
 「これはおれじゃない。どうなってるんだ」
 その数日後Kは、医師と母親の会話を盗み聞き、久保田和広が死亡したことを知る。
 
 (6)あと10日間くらいで退院可能、と医師から告げられた日、沖田華織が見舞った。カオリは卓也と、近所の幼なじみで、小学校から高等学校までずっと同級生だった。当然ながら、Kは彼女を知らない。

 (7)9月2日、退院。一家で祝う中、Kは、父親(ダイニチ建設設計企画部長)の言葉のふしぶしに複雑な事情を垣間見た。後に、入院中親身に介護した母親は生さぬ仲であったことを知る。そのことに卓也がこだわりを感じ、父親や継母が心配していたことも。
 その夜の夢に二輪が登場し、少しずつ卓也の意識が目覚め始めた。
 翌3日、学校を早退して見舞ったカオリを付き添いとして、久保田和広宅を訪問。愛犬マルは、まるでそこに肉体を持つKがいるかのようにKに飛びついてきた。マルを追ってきた一子・智美もたちまちKを認めた。だが、当然ながら、妻・美智子は信じかねた。
 誰が見ても小野寺卓也でしかない身体の中にいるK(久保田和広の意識)のことを、どう美智子に伝えればよいのか。

 (8)(1)~(7)まで、まだ本書の3分の1にも達していない。しかも、細部を端折りに端折った上でのことだ。
 この1巻の漫画、意外と奥行きが深いのである。

 (9)(7)の後、久保田和広の、彼を踏みつけにした会社には知られていない(会社が知る必要のない)和広の行動が、その家族に明らかにされ、彼の妻子にとって経済的に比較的安定した将来が約束される。
 Kが小野寺卓也にその身体を返す日が、近づいてきた。
 9月4日は、とても長い1日になった。Kが借りている身体を卓也と和広が入れ替わり立ち替わりする中、Kは妻子と再会し、別れを告げる。この日もカオリが立ち会ってくれた。そして、卓也の意識が回復した。卓也の身体の中で、Kはだんだんと存在感を薄めていった)。
 それから3日間、Kは卓也の中で生きていた。そして旅立った。
 9月7日10時57分、卓也の二輪車が宙を飛び、空に一条の軌跡が走った。
 「おれは生まれ変わって生き返った」

□谷口ジロー『晴れゆく空』(集英社文庫、2009)
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【原発】原子力ムラ復活ののろし ~経済産業省資源エネルギー庁~

2013年08月07日 | 震災・原発事故
 (1)経済産業省資源エネルギー庁が諮問機関「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」を新設し、7月17日に初会合を設けた。
 このWGの委員のうち3人が、「原発マネー」に染まっている。
  (a)関村直人・東京大学大学院教授
    原発メーカーの三菱重工、日本核燃料開発会部式会社などから、判明しているだけでも294万円を受領。ちなみに、関村教授は、3・11直後からNHKの解説者として「水素爆発はあり得ない」等、根拠のない楽観論をふり撒き、現実に爆発が起きると「爆破弁という減圧装置の作動だ」のごとき根拠のない発言をしていた。
  (b)尾本彰・東京工業大学特任教授
    元・東京電力原子力技術部長。2010年1月に原子力委員会委員に就く前の2009年11月から2012年3月まで、東電顧問として顧問料を受け取っていた。このため、今年3月、同委員の退任に追い込まれた。
  (c)山口彰・大阪大学大学院教授
    元・旧動燃(東海村)の技術者。三菱重工の関連企業、ニュ-クリア・デベロップメント(株)から3,385万円を「受託研究」の名目で受け取っていた。さらに、昨年2月に内閣府原子力委員会の「原子力大綱」を決める23人の委員の一人として選出された際、別の委員である田中知・東京大学大学院教授ら他の委員2人と共に、原発関連の企業・団体から計1,839万円の寄付を受けていたことで問題になった。

 (2)(1)-(c)の田中教授は、「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」を統括する資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会の諮問機関、原子力小委員会の現・委員長だ。

 (3)同WGの設置趣旨に、「『安全神話』と決別し」、「事業者が・・・・(原発の)安全性の向上を目指していく」とある。
 しかし、前記(1)や(2)の学者たちこそ、「安全神話」を支えてきた人々だ。

 (4)(3)の事実にもかかわらず、経済産業省(資源エネルギー庁)は、どこ吹く風だ。
 資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課の担当者いわく、「寄付金の授受は問題ではなく、委員の発言内容で判断されるべき」だ。
 いわく、「(原子力ムラの復活ではないか、という問いには)この『ワーキンググループ』は規制が目的ではなく、業界も含めて安全性を論議している場で、そうした批判はあたらない」

□成澤宗男(編集部)「経産省が原子力グループを新設 「原発マネー」人脈で構成」(「週刊金曜日」2013年8月2日号)

 【参考】
【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~
【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~
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【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~

2013年08月06日 | 震災・原発事故
 (1)7月22日、東京電力は定例会見を開き、初めて、福島第一原発で汚染水が海洋に流出していることを認めた。
 参議院選挙の翌日に、なぜ発表したのか。
 記者会見は紛糾した。

 (2)同日、分厚い資料を配付し、1時間以上にわたる冒頭説明の締めくくりで東電は結論を述べた。
 本年5月以降にNo.1観測孔で確認された汚染を含む地下水の開渠内【注】への行き来が考えられる、うんうん。
 Q:「開渠内への行き来」という表現をしているが、はっきり言ってくれ。これは海洋への漏洩を東電が認める、ということか?
 A:はい。

 (3)会見場から、非難の声が相次いだ。
 5月、地下水から高濃度の汚染が検出された。
 6月、その調査のために地下水の観測孔を作った。そのとき、海から4m付近の地下水に高濃度汚染が見つかった。
 Q:そんなに海に近い部分の地下水が汚染vされているなら、海洋にも漏れているのではないか? (1ヵ月以上繰り返した質問)
 A:海水の放射性物質の値に顕著なものは見られない(海洋への漏洩を認めない)。

 (4)7月10日(選挙期間中)、記者会見で、田中俊一・原子力規制委員会委員長は認めた。「海洋の汚染は、大なり小なり続いていると思う。事故時に一番汚染したが、その後もずっとこの2年間続いていると思う」
 それでも東電いわく、「データを蓄積しないと判断できない」。
 と・こ・ろ・が、参議院選挙で与党(自民党・公明党)の勝利が確定した翌日、記者会見で、尾野昌之・東電立地本部長代理はこれまでとは一転した発表を行った。「少なくとも5月から海洋へ汚染水が漏洩していた」
 おしどりマコ・ケンは、6月以来、潮汐と降雨と地下水の評価、地下水の水位を出してほしい、と質問していたが、この日、1月からの評価データが発表された。
 Q:質問していたデータが存在したのに、なぜ公表しなかったのか?
 A:意を尽くせてないところは申し訳なく思います。【茶番】

 (5)東電は、港湾内への漏洩を認めたが、港湾外への漏洩はまだ認めていない。
 Q:港湾内の海水の動き、潮汐などでの濃度の希釈をどう評価しているか?【昨年来の質問】
 A:評価が難しい。【無回答】

 (6)港湾内の海水は、毎日44%程度入れ替わっている。【2012年、神田穰太・東京海洋大学教授の研究グループ】
 要するに、汚染された地下水は港湾内に流れ込み、潮汐により、港湾外に出ていっている。

 (7)福島第一原発の5、6号では取水口から放水口に流れがあり、今の実施計画上6,500立米/時の流れがある。つまり、5、6号機は廃炉になっていないので、冷却機能g生きている。海水による冷却が行われており、海水ポンプが働いていて、取水口からは海水が汲み上げられ、その水は放水口から放水されている。その流れが6,500トン/時なのだ。港湾内の水が5、6号機の復水器を通って放水口から外海へ放出されていた。【金城慎司・原子力規制庁東京電力福島第一原子力発電所事故対策室長、第13回特定原子力施設監視・評価検討会、6月28日】
 東電は、現在、「汚染した地下水は港湾内に漏洩しているが、汚染は港湾内にとどまっている」としているが、現時点ではまだ評価していない。

 (7)海洋へ漏洩した汚染水は、濃度しか発表されていない。
 総量、拡散の評価は一切発表されていない。
 漏洩開始時期も、「少なくとも5月から」としか発表されていない。

 (8)放射性物質の濃度が基準以下の水を海に捨てられるようにしないと、にっちもさっちもいかない。【田中委員長、7月24日】
 漁民の怒りに脂が注がれた。
 福島第一原発事故の収束はあまりに遠い。しかも、収束に至る計画はズサンだ。

 【注】開渠=福島第一原発の港湾内の取水口を囲む部分。

□おしどりマコ・ケン「福一原発で汚染水が海洋流出」(「週刊金曜日」2013年8月2日号)

 【参考】
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出
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【原発】輸出の三菱重工、「135億円」賠償トラブル

2013年08月05日 | 震災・原発事故
 (1)5月に歴訪した中東で、安部首相は豪語した。
 「日本は世界一安全な技術を提供できる」
 そのセールストークが功を奏したのか、三菱重工と仏原発大手「アレバ」の連合は、トルコで原発輸出の優先権を獲得した【注1】。

 (2)ところが7月、その三菱重工に、米電力大手「サザン・カルフォニア・エジソン(SCE)」が「紛争通知書」を送りつけた。
 サンオノフレ原発(カルフォニア州)の廃炉がもたらした欠陥のある「蒸気発生器」に関して、必ず三菱重工が責任を取る旨確認せよ・・・・。

 (3)SCEなどによれば、三菱重工製の蒸気発生器が稼働から1年足らずで配管の冷却水漏れを引き起こして緊急停止。定期点検中の別の機でも配管に摩耗が見つかった。米原子力規制委員会の調査が長引いたこともあいまって、6月に廃炉が決まった。
 SCEは、
  三菱が自社製品の欠陥を修復できなかったのは、その欠陥があまりに基本的かつ広範だったため、
  三菱重工が支払う責任上限額1億3,700万ドル(135億円)を上回る全損害額を請求、
  総額数千億円
を要求している【注2】。
 
 (4)三菱重工は、争う構えだ。
 しかし、三菱重工の蒸気発生器のシェアは、米国内でも大きい。ところが、今回は従来の蒸気発生器を2倍も大きくした。普通なら1.2倍、1.4倍・・・・と徐々に大きくする手順を踏む。いかるに今回は、軽自動車を造っているメーカーがいきなり2,000ccのベンツを造ったようなものだ。自分たちは世界一の技術を持っている、という過信があったのだろう。かかる過信は、三菱重工だけではない。米国は20年間ほど原発を生産していない。この間に三菱、日立、東芝は造っていた。だから「米国はもう造れない。実際に造っている我々が世界一」と思いがち。たしかに蒸気発生器、原子炉容器、溶接など、設計図どおりにモノを造る技術は世界一かもしれない。しかし、現実には、最も重要な原子炉の基本設計はいまだに米国のものを踏襲している。【藤原節男・元三菱重工設計関係者】
 この結果、日本にある原発は米国メーカーの改良型が多くて、オリジナルがない。

 (5)そもそもトルコへの輸出で三菱重工の相棒となるアレバの新型プラント「加圧水型軽水炉(EPR)」は、欧州において散々な評価を受けている。
 EPRは欧州で「経済のチェルノブイリ」と呼ばれている。フィンランドで建設中のEPRは、トラブル続きで完成が遅れ、コストが年々膨らんで1兆円を超えた。母国フランスで唯一建設中のEPRも、完成のめどが立たず、経済的な「被害」を拡大させている。【飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長】
 そのEPRの技術がたっぷり盛り込まれているのが、トルコに売り込む新型原発だ。

 【注1】「【原発】アレバ社が日本へMOX燃料を搬入 ~安部首相の原発セールス~
 【注2】「【原発】原賠法改正により原発にもメーカー責任を ~GE・日立・東芝・三菱重工~

□徳丸威一郎/大場弘行(本誌)「「不安だらけの原発輸出」三菱重工 「135億円」賠償トラブル」(「サンデー毎日」2013年8月11日号)
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【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~

2013年08月04日 | 社会
 (1)廃止されるはずだった公務員宿舎の生き残り作戦が本格始動した。

 (2)7月18日付け日本経済新聞東京夕刊の一面トップに、
    「公務員宿舎を保育所に」
    「待機児童解消へ転用」
 という見出しが大きく躍った。
 記事は、後追いしたマスコミ他社を含め、待機児童解消を期待する内容だった。
 廃止予定の公務員宿舎が生き残ることに関する論評はゼロだった。

 (3)公務員宿舎廃止・・・・を回避する作戦の切り札として、保育園や保育ママ事業を利用することを、財務省は3年以上前から計画していた。
 年収1,500万円以上もらう高級官僚が都心一等地の公務員宿舎に、民間相場の3分の1以下の家賃で住んでいる。
 このことに国民の批判が高まり、民主党政権がようやく削減計画をまとめたのが2011年12月。政権の余命はわずかしか残っていなかった。
 国家公務員64万人のうち、自衛隊などを除く一般職が34万人。その大半は地方出先機関で働いている。このため、全国に20万戸以上の公務員宿舎があるのだが、削減計画では、そのうち5~6万戸を廃止することになっていた。
 しかし、「霞ヶ関のレトリック」によって骨抜きにされた。

 (4)なかでも問題なのは、「廃止」がそのまま「売却」ではなかったことだ。
 なぜ官僚は公務員宿舎を廃止しても売りたくないのか。
 ほとぼりが冷めたらまた復活させたい、ということもあるが、実はそれよりももっと切実な事情が財務省にはある。
 あまり知られていないが、財務省には理財局という大きな局がある。その主要業務の一つが、各省庁舎・公務員宿舎などの運営管理業務だ。保有する大量の国有地の上にオフィスやマンションを建設し、それを各省庁や公務員に貸し出す。簡単にいえば、巨大な不動産事業者だ。
 彼らにとっt、土地を売ったら仕事がなくなり、リストラに直結する。死活問題だ。
 だから、公務員宿谷を廃止するとしても、土地だけは死守したい。そうすれば何とか生き残り策を見出せるのではないか、ということだ。

 (5)そして考えたのが、保育関連不動産賃貸業だ。財務省は、2010年6月に「新成長戦略における国有財産の有効活用」を打ち出している。その中に保育事業が入っている。
 保育所を作るとか、保育ママ事業に貸与するというと、むろん、近隣の住民は賛成する。いまや「子育て」という言葉は、誰をも納得させる神通力を持っている。
 しかし、そこには大きな誤解がある。
 本来なら、宿舎用地を売却し、民間事業者が大きなマンションなどを建ててくれれば、国の売却代金収入とは別に、毎年莫大な固定資産税収拾が自治体に入る。それを子育て予算に使って民間の保育事業者への補助を行えば、はるかに大きいな効果がある。売却の際、保育所の併設義務を課してもよい。

 (6)昨春、関西地域のある廃止予定の公務員宿舎で保育ママ事業が始まる、ということが大々的に発表された。
 しかし、よく見ると、預かる子どもは2人、と書かれている。
 この宿舎を売れば大きな売却収入があるし、固定資産税が入ってくれば、毎年保育ママ事業に多額の補助金を出せる。売った方がはるかによいのは明らかだ。

 (7)保育所を建てたり、保育ママ事業を公務員宿舎に入れれば、出ていけと言えなくなる。
 これにより、廃止予定の公務員宿舎も生き残れる。
 公務員宿舎温存と理財局の失業対策として、「子育て守護神に!」という財務省の高等戦術。
 次は介護だ。「俺たちは優秀。マスコミは馬鹿」と財務官僚の高笑いが聞こえる。

□古賀茂明「公務員宿舎の「守護神」 ~官々愕々第73回~」(「週刊現代」2013年8月10日号)

 【参考】
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【社会保障】医療、介護、年金・・・・怒濤の負担増 ~「後出し公約」~

2013年08月03日 | 医療・保健・福祉・介護
 政府の社会保障国民会議は8月2日、改革案を公表。この日の会合で、報告書の各論部分の原案が初めて示され、大筋で了承された。国民会議の提言は、消費増税の実現が前提。今後のスケジュールは、
  ・8月5日、最終報告書をとりまとめ
  ・8月6日、安倍晋三首相に提出
  ・8月21日まで、改革を進める手順を「プログラム法案」の要綱を閣議決定
  ・今秋の臨時国会、「プログラム法案」を提出
 なお、具体策は、(a)消費増税に合わせて「短期」で実施していくもの、(b)「中長期」の検討課題・・・・に分かれる。(a)には医療の提供体制改革などの充実策がある一方、所得の多い高齢者らに負担増を求める項目も並ぶ。
 (a)は、来年4月と2015年10月に予定される消費増税と足並みをそろえて「集中的に実施」とされる。増税を元手にした充実策として、次のものを挙げた。低所得者に配慮し、医療・介護の保険料引き下げも盛り込んだ。
  ①病院、診療所、介護施設などが連携し、患者の状態により適したサービスを提供する体制改革
  ②待機児童解消をめざした保育の新制度
  ③難病対策の拡充
 ただ、医療・介護では、高齢者も含めて所得の高い人に「痛み」を求める提案が多い。主なものは、
  ・70~74歳の医療費窓口負担や一定の所得がある介護利用者の自己負担の引き上げ
  ・要介護度が比較的低い「要支援」の介護保険から市町村事業への移管
 (b)は、団塊の世代が75歳に達し、医療・介護費用の増加に拍車がかかる25年ごろに備えて取り組む課題との位置づけ。年金分野が多い(受給開始年齢の引き上げなど)。年金にかかる公的年金等控除や遺族年金の非課税措置の縮小も、消費増税後の検討課題になる見通し。

■社会保障国民会議の報告書案のポイント
 (★は短期で実施する項目。無印は中長期の課題or時期不明のもの)

(1)医療
 ・国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移す(★17年度末まで)
 ・会社員、公務員の加入する保険が支出する高齢者医療の負担金を見直す。大企業の健保組合の負担を増やし、浮かせた国の税金を使って、国保の赤字を穴埋め(★15年度から)
 ・都道府県が中心になり医療提供体制を改革(★)
 ・紹介状なく大病院を受診する際の定額負担金の導入を検討【病院機能の再編と「かかりつけ医」(総合診療医)の普及】
 ・低所得者の国保料引き下げ(★)、高所得者の保険料は引き上げ
 ・高額療養費制度を見直し、所得に応じた負担(高所得者は負担増、低所得者は負担減)となるよう、上限額の区分を細かくする(★)
 ・70~74歳の医療費自己負担額を早期に1割から2割に引き上げ(★)
 ・難病の医療費助成の対象拡大(★)

(2)介護
 ・「要支援」向けサービスは介護保険から市町村事業に移す(★15年度から段階的に)
 ・所得の高い利用者の自己負担を1割から引き上げ(★)
 ・低所得の高齢者の保険料を軽減(★)
 ・40歳以上の勤め人が加入する保険が支出する介護納付金を見直す。大企業の社員らは負担増

(3)年金
 ・受給開始年齢の引き上げを中長期的課題として検討
 ・給付を減額調整する「マクロ経済スライド」をデフレでも実施できるよう検討
 ・高所得者の給付引き下げ、年金課税の強化を検討

(4)少子化対策
 ・保育の新制度導入(★15年度から)
 ・育児休業中の経済的支援検討

□記事「改革、消費増税が前提 社会保障国民会議、案を公表」(朝日新聞2013年8月3日付け)

   *

(1)医療
 70~74歳の医療費窓口負担は来年4月に2割に引き上げられる見通しだ。後期高齢者医療制度の廃止を求める運動の高まりの中で、2008年に1割のまま凍結されていた。来年4月といえば、消費税が5%から8%に引き上げられる時期と重なる。
 さまざまの給付減・負担増が検討、提案されている。一貫しているのは、公的医療保険の範囲を狭めて公費負担を減らすという方針だ。病気も自己責任というわけだ。一方で長期戦略と称して、医療を財界の儲けの場にしていこう、という二面性が透けて見える。
 3月に開かれた政府の産業競争力会議では、原則3割の医療費の自己負担割合を一気に上げると反発が予想されるため、風邪など軽い病気は7割、癌は3割というように病気の種類に応じて差をつける仕組みが提案された。
 窓口負担を苦にした受診抑制が進むと、病気の早期発見、早期医治療が遅れ、かえって医療費を増大させることになりかねない。
 風邪薬、湿布薬など薬局でも購入できる薬と類似する医薬品は保険から外す案も検討事項に挙がっている。 
 病院にかからないで街の薬局やコンビニ、ネットで購入させ、市場を拡大しようとしているのだ。

(2)介護
 要介護認定を受けている554万人(2012年末)のうち4分の1にあたる150万人が「要支援1or2」だ。
 「要支援1or2」を介護保険の対象から切り離す案が浮上している。今年4月、政府の社会保障制度改革国民会議が、「保険給付から市町村事業に以降すべき」と提案。「軽度切り捨て」といった見出しが新聞各紙を飾った。この案は、膨張する介護費の抑制が狙いだ。
 介護にかかる費用は、7.8兆円(2010年度)。この10年間余で2倍余に膨らんだ。
 厚労省の推計では、2025年度に21兆円に膨らみ、65歳以上が支払う保険料の全国平均は現在の月額5,000円弱から8,200円に上がる見通しだ。
 「要支援1or2」を介護保険から切り離した場合、「受け皿」に想定されているのが、厚労省が昨年4月から始めた新事業だ。要支援者らの身の回りの世話や配食サービスなどを市町村が選んで提供できる事業で、ボランティアやNPO法人を活用することで、費用の抑制が期待できる、と厚労省はいう。
 厚労省は、国民会議の結論は8月末にまとまり、その結論を踏まえて省内の社会保障審議会介護保険部会で具体論が検討されるのであって、軽度者へのサービスの見直しなどについては議論はなければ、まったく何も決まっていない、という。
 しかし、社会保障制度改革推進法は、給付範囲の適正化によるサービスの効率化・重点化をうたい、軽度者へのサービス見直しは「規定路線」との見方が介護現場には強い。これまで通りのサービスが受けられなくなるのではないか、と心配する声が高まっている。
 要支援者が利用する訪問介護や通所介護は介護状態悪化を防ぐ。認知症の重度化を防ぎもする。現行のサービスを利用できなくなったら、要介護状態が悪化するおそれがある。
 要支援1or2の介護費用は0.4兆円(2010年度)。全体の介護費用に占める割合は5%程度にすぎない。
 政府が本当に介護保険から切り離したいのは要介護1、2であり、「要支援切り」はその布石にすぎない、という見方もある。

(3)年金
 10月から公的年金が段階的に引き下げられる。2000~2002年度、物価下落時に据え置かれ、本来より2.5%高い特例水準で支給されているため、この状態が3年かけて解消されるのだ。
 特例水準解消後、年金額は毎年0.9%(予定)ずつ減額されていく(「マクロ経済スライド」)。物価や賃金が1%上がっても、年金額は差し引き0.1%しか上がらない仕組みだ。
 年金受給者のうち48%が年額100万円以下で、女性の65%(4人に3人近く)は低年金者だ。【厚労省「年金制度基礎調査」(2011年度)】
 政府は、公的年金積立金の運用方法を見直し、現在は比較的リスクの低い債券類を中心に投資しているが、リスクの高い株式の割合を増やすことを検討し始めた。
 国民会議では、「支給開始年齢67、68歳」案がまた出てきた。
 国民会議の設置期限は8月21日。選挙直後に「提言」として厳しい負担増が次々突きつけられる可能性がある。

 【参考】審議会などで提案、検討されている社会保障負担増のメニュー
 (1)医療
  ・70~74歳の窓口負担を1割→2割に。【国民会議】
  ・疾病の種類によって窓口負担割合を変える(癌なら3割、風邪なら7割など)。【産業競争力会議】
  ・うがい薬、湿布薬など保険給付の対象外に。【財政審】
 (2)介護
  ・「要支援1、2」は保険給付の対象から、市町村の事業に移す。【国民会議】
  ・特別養護老人ホームは中重度者に限定化。【国民会議】
  ・介護保険の自己負担割合を重度にマッチさせる(軽度のデイサービスは全額自己負担、デイケアは3割負担など)。【産業競争力会議】
  ・特別養護老人ホーム待機者を地方へ。【都市部の高齢化対策に関する検討会】
 (3)年金
  ・受給総額見込みをメニューで示し、年金受給年齢を自由に選ぶ選択制に。【国民会議】
  ・高所得者への年金支給停止。【国民会議】
 (4)その他
  ・国民健康保険の運営を市町村から都道府県に。【国民会議】
  ・死亡時に財産から一定の税金を納める「死亡消費税」。【国民会議】
  ・マイナンバーを導入し、所得・資産によって医療・介護費の自己負担割合に差をつける。【産業競争力会議】

□藤後野里子(本誌)「介護、医療、年金・・・・怒濤の負担増 「後出し公約」を許すな! 自公政権からさっそく「請求書」が!」(「サンデー毎日」2013年8月4日号)
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【原発】環境省が復興予算を押しつけ ~ガレキ広域処理~

2013年08月02日 | 震災・原発事故
 (1)膨大な復興予算を「消化」するため、環境省が復興予算のバラマキをしている実態が、大阪府を介した堺市とのメールやりとりによって明らかになった。

 (2)環境省の、「ガレキ広域処理」を名目とした復興予算の使い道に問題があることが指摘されている。
 <例>ガレキ受け入れを検討しただけで、全国の複数の自治体に合計244億円などが交付。
 復興増税の交付額が86億円と突出している大阪府堺市には、抗議が600件余も寄せられている。その多くは、「堺市が、復興予算を騙し取るのはけしからん」というものだ。
 しかし、今回明らかになった事実からすると、「自治体が騙し取ったという構図」では必ずしもない。

 (3)メール等のやりとり。
  ●堺市、2012年1月
   2012年度交付金を「清掃工場の老朽化に伴い、通常枠及び日本再生重点化措置枠での措置」・・・・と、「通常枠」として要望。
  ●環境省、2月2日(メール)
   「復興枠」への切替を提示。
  ●堺市、その後(再三)
   「通常枠」を主張し、要望。
  ●環境省、4月6日
   堺市の「通常枠」要望を無視し、一方的に「復興枠」として内示。 
  ●堺市、内示後
   「本市の要望は通常枠か日本再生重点化措置枠なので、東日本大震災復興事業枠からの変更はできないか」
  ●環境省、回答
   「復旧・復興枠の要望として取り扱う」・・・・一方的な復興予算の押しつけ。

 (4)震災ガレキは、「発生した自治体」で処理するのが法令上の決まり。「広域処理」の大前提となる条件は、「発生自治体で努力しても処理できない」という状態だ。
 ところが、当初大量に発生したといわれるガレキの総量は、再調査の結果、当初見込みの6分の1まで減り、大幅な下方修正が行われた。「発生自治体」でえ処理できる量であることが明らかになった。事実、下方修正を受け、広域処理は次々に止まっている。

 (5)環境省はしかし、ガレキ処理として復興予算1兆円を獲得し、予算が6倍にも膨らみ、マイナーな省庁からメジャーになった。だから、どうにか予算を使い切ろうと必死になっている(らしい)。
 今後の予算獲得を目的に、「広域処理」の被梅雨がなくなった岩手、大阪の広域処理を死守しつつ、復興と関係の薄い堺市のような自治体に復興予算をバラまいた(らしい)。 
 要するに、環境省は、予算獲得目的でガレキの総量を水増しし、下方修正後に予算のバラマキを行った(らしい)。
 疑念を裏付けるように、岩手県は、2012年5月からの1年間、県内の焼却炉の運転をゴミ量不足として43回も止めている。大阪市に搬出しながら、県内の焼却炉はゴミ不足で止めているわけだ。

 (6)広域処理の正当性が揺らぐ情報は、(5)に留まらない。
 岩手県は、市民団体の情報開示請求に、環境省の指示を匂わす資料を出してきた。黒塗りの部分が透けて、「環境省案」の文字が見える資料であった。
 岩手県の内部資料に環境省案が存在している。自治体の要請を受けてきただけ、とする建前が崩れ、環境省主導で自治体に提案してきた証拠となる(はずだ)。

 (7)こうした中、大阪市は、7月17日、9月で広域処理受け入れを修了する、と発表した。ただし、先行きは不透明。
 受け入れをめぐって、同市では、反対派の市民をすでに10人以上の逮捕者を出し、逮捕の正当性が問われる事態となっている。

 (8)政府が2011年度から5年間の復興予算枠を6兆円拡大し、25兆円にする方針を出したのは今年1月末。「復興地の皆さんの不安を払拭できると思う」と安倍晋三・首相は語ったが、「名ばかり復興」が進んでいるだけなのが実態である(らしい)。

□真野きみえ(ライター)「環境省が復興予算を押しつけ 大阪・堺市とのメールやりとりで発覚」(「週刊金曜日」2013年7月26日号)
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 【参考】
【原発】ガレキ広域処理の破綻 ~復興予算のムダ遣い~
【原発】ガレキ広域処理をめぐる不透明なカネの流れ ~復興予算のバラマキ~
【原発】地権者、震災ガレキ焼却灰受け入れを拒否 ~島田市~
【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~
【原発】問題山積みの高濃度汚染ゴミ ~栃木県の最終処分場~
【原発】札幌市はなぜガレキ受け入れを拒否したのか ~内部被曝~
【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書
【原発】ガレキ処理はなぜ進まないのか ~環境省の「環境破壊行政」~
【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~
【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~
【震災】ガレキ広域処理は真の被災地支援になっているか?