
中国が一人っ子政策をやめた。やめたと言っても出産が自由になったわけではなさそうで、二人っ子政策になったとのこと。人権の侵害状態にはある。まあこの理由は、よくご存知の通り急速な高齢化社会の出現、それに伴う若年層人口の減少で生産者年齢層が減少、賃金は高くなるやら市民の要求レベルは高くなるやらで、いいことはない。税収や年金の問題もある。貧困層が3億人あるとも言われる中国。その中には高齢者も数多く含まれるだろう。そうするとその福祉事業費もバカにならない。医療が充実していない現実もある。
だから一人っ子政策をやめるのかといえばもっと深刻な問題がある。一人っ子政策では男子が選ばれた。伝統的に男子が喜ばれるのは日本もそうだが中国はもっとそうだ。出産前診断が一番進んでいるのは中国かもしれない。産み分けしていたのだ。結果何が起きたか。男子が多いのが中国になったのだ。本来なら女性のほうが寿命が長いので、人口の占める割合は女性のほうが多い。それが、男性が3000万人多いというのが中国だ。岩手県全部が男性で30県分。いや関東圏全部が男性という状態だろうか。なんで将来「嫁よこせ暴動」が起きるのではないのかとマジメに心配しているのだ。
これに関しては、全員殺すわけにもいかんし去勢するわけにもいかんし、全員海外に移住させたらシリア難民どころじゃないし、海外から嫁を持ってきたら、他の国で嫁不足が深刻化するだけだし、売春を合法化すると多分普通の家庭を破壊して独身者をさらに増やしてしまう、と冗談ともつかない政府批判があった。ダッチワイフを量産するという考えはないのかね。いずれそれにしても政府の責任なのは間違いがない。とはいえどうしようもない。確かに遅すぎた。2000年頃に廃止するべきだったのだ。
日本の年金問題と少子化問題も、私が小学生の時に手を打っておけばよかったのだが、こういった政策はだいたいにして偉い人が決めてしまったからひっくり返しにくいものなのだ。それにしても「嫁よこせ暴動」が起きると考える彼らの思考が少しおかしい。性が満足できない男性を放置するとみんな凶暴化するといっているのだ。それなら日本はどうするんだ?というかこの前近代的な考えがよくわからない。
兵士の英気を養うために、といいつつ強姦や暴行事件を減らすために慰安所を設置した日本軍と同じ考えじゃないか。何考えているんだと本当に思う。
アジアというのはそんなものです。

なぜ中国の国営企業改革がうまくいかないのかという問題がある。この理由は簡単だ。中国は工業生産をアップしたくて国有企業を優遇した時代があった。だがその見返りに従業員への福利厚生の充実を求めたわけだ。中国には金がなかった。共産党としては共産主義を標榜する以上、貧富の差のない社会にしたいのだがそうも言ってられない。そこで国営企業にその理想を押し付けたわけだ。なのでなんと言おうか、今でいうとグーグル本社のプアー版、工場敷地で全部生活が賄える状態、食堂や購買はもちろん床屋や病院もある。当然住居も提供される。国営企業そのものが自治体だったのだ。給料が安い分、食堂は従業員家族も利用できるとか、家族丸抱えが国営企業だった。
それが自由化になって、食堂は民間企業に置き換わったり、従業員宿舎の廃止とか分解されてゆくのだが、自治体でもあった国営企業にはまだまだぶら下がっているものが多すぎる。最悪なのは国営企業のある自治体、企業城下町になってしまったところだ。そこにはさらにぶら下がっているものがある。その自治体そのものだ。
倒産させたくともできない国営企業がいっぱいあると言われているのも、それが原因だ。資本は小さくとも潜在的な資本が巨大という例はいっぱいあるのだろう。

中国の食糧問題で、かなり面白い話を読んだ。日経ビジネスオンラインだ。日本の農業問題を考えるコラムなのだが、なぜか中国問題を取り扱った。「食糧問題から見る巨龍・中国の実像」だ。これはかなりビビットな記事だ。
中国はその巨大な人口と生産性の低い農業、流通の問題があった。それが現在では世界でも指折りの穀物輸入国でもあり生産国となっている。だがその実像はどうかといえばなかなかに凄まじい。農林中金総合研究所の阮蔚(ルアン・ウエイ)主席研究員へのインタビューだが抜粋してみよう。できれば元の記事で読んでいただきたい。
「主食のコメと小麦は97~98%自給しています。今後も90%以上を維持するでしょう。トウモロコシは輸入が増えていますが、それでも九十数%は自給しています」
「一方で、大豆やトウモロコシ、コメ、小麦などの穀物の輸入はすでに年1億トンに達しています。世界の穀物貿易量の3分の1に近い数字です。」
これが13億の実態です。ちょっと小腹が空いただけでこの数字です。
「世界の穀物在庫の約半分が中国一国にあります。コメと小麦はそれぞれ数千万トン。とくに深刻なのがトウモロコシで、1億5000万トンもあります。今年また在庫が積み上がって1億7000万トンか、悪くすると2億トンに達してしまう可能性があります。」
「2007年から2008年にかけて世界の穀物価格が暴騰しましたよね。あのとき世界各国が穀物を増産した影響で、2012年以降は価格が下がり、いまは暴騰前の価格に近づきました。低位で安定しています」
「中国も2008年から増産に走りましたが、そのときとった政策が、政府が穀物を買い入れる際の支持価格の引き上げです。農家に対するインセンティブにするためです。その結果、中国産の価格が国際価格より3割も5割も高いという状態が生じたのです」
つまり輸入量を減らすしかないのに、減らせない状態に陥っているということだ。そこで支持価格の引き下げを図っているのだが、3億人いる農民への影響が大きすぎて、部分的にしかできていない。例えばトウモロコシ農家へ10%値下げとかだ。
「もし中国が、国際価格が安いときに小麦を5000万トン輸入したとします。5000万トン輸入したって中国は国内で吸収できる。でもそんなことをしたら、国際価格が暴騰します。翌年輸入をしなければ、逆に暴落します。そんなことはできないし、やりません」
つまりこうゆうことだ。穀物は現物・先物を使って取引されている。今安いからと買いに動くわけにはいかないのだ。そしてその量が凄まじいが故に、わがままなことばかりしていると信用を失ってしまう。だから一定量輸入し続けなければいけなくなるのだ。
「世界の食料の秩序を守るには、中国もグローバルチームに入る必要があります。中国の自給率がわずか1%下がるだけでも、大変な量です。健全な世界貿易を維持することを考えれば、中国も出て行く必要がありますが、どうやって出て行けばいいのか分からないのです」
巨大すぎる悩みです。
「中国は12~13年連続で豊作なのに、海外から輸入品がどんどん入ってきています。中国中の倉庫がいっぱいになり、入りきれない分は野積みにしてビニールをかぶせている状態です。ものすごいロスになります。これまでやってきた価格支持制度は続けることができなくなり、破綻しました」
国内相場を維持するために、輸入品を野晒しにせざるを得なかったといいうのが、中国のあの爆買いだったのかと思えば、なんとも言えない気分です。

あの豚肉の需要がとか、中国人も牛を食べるようになったからとか言われていたあの穀物買い付けの裏側には、そういった変な事情があったのかと驚きました。そして輸入した穀物を屋外に放置せざるを得ないという異常な流通事情もありそうです。国が買ったから国の責任でなんとかできそうなものなのですが。飼料用のトウモロコシ等はともかくとして、輸入したものでも大豆とか小麦とかでは貧困対策に使えそうなものですが、多分役人のことだから輸入損失の責任を恐れているのでしょう。
廃油から作られた食用油は上等、下水のグリストラップから集められた油まで精製して流通していたという事実と、このよくわからない穀物のダブつきのギャップに驚きます。

巨大すぎるが故の悩みは多そうです。かといって弱いところは見せたくないのでしょう。南沙諸島でのアメリカとの対立をどうこなすのか見ものですが、私は中国と戦争したら確実に核戦争になると思っています。歴史上中国の支配者は、伝説の時代以外は国民が死ぬことを全く厭わないところがあります。
4億人の超富裕層と富裕層と中間層、9億人の貧困層、そして政府の認めている7000万の貧困層。確かに国家経営は厳しいでしょう。
だからと言って戦争の火種を作り続ける、中国のあり方は、やはり歪だ。