あ・28番（1）
「センセー！ いる～？」
愛田恵子氏の声だ。相変わらずテンションが高い。
「エネルギー補充に来たよ～。ついでに温泉♪」
彼女は銀座のママさん。三年前からの知り合いだ。
銀座もクラブも風間陽水には縁が無いが、彼女とは深い縁があった。
その深い縁に気付いたのは、一瞬だった。
風間陽水は群馬県の最北に住んでいる。山の中だ。
20年前から治療院を開いている。とはいえ出張が主だ。
治療院の看板はサビで汚れて、閑な院だと誰でも判る。
本人がズボラで、経営能力に欠ける事も、誰でも判る。
彼はそんな事に興味がないのだ。
物事をすぐ忘れる癖を持っている。
治療法は少し特殊だ。
国家試験の鍼師・灸師の免状を持っているが使わない。
氣功療法と一応は紹介しているが、本当は少し違うらしい。
だが説明がメンドウなので、通りのいい氣功という名前を使っている。
人やモノの正体など、どうでもいいと思っている。
要は使えればいい、結果が喜ぶならいい、という考えらしい。
治療法は少し特殊だが、本人はかなり特殊らしい。
生物学的な人間として、かなり特殊らしい。
その事に気付いたのは10年前くらいからだ。
そして、愛田恵子氏も同類だと知った。
（登場する人物・組織・その他はフィクションです）
（過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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