カルテ番号 む・2(5)
「あの・・・」
村木は思い切って宮司の近くまで行き、声をかけた。
40代と見える宮司は、村木の目を見て箒を止めた。
村木は、その宮司の顔を見て、困惑した。
そして、何を話せばいいのか、わからなくなった。
「何でしょう?」
通常、40歳も過ぎれば、様々なモノを背負う。
仕事が出来る、出来ないに関わらず、それが顔に現れる。
大小や深浅の違いはあっても、悩みの無い40代などいない。
いくら隠しても、顔のどこかには現れてしまう。
それが、どうだ。
この宮司は、何も無い顔をしている。
邪気のない顔、とでもいうのだろうか。
最近では、子供でも、こういう表情が少ない。
「い、いや、あの・・・、少しお話、いいですか?」
村木は、おそらく10歳以上年下の宮司に対して、あがってしまった。
「はい、時間はあります。
どんなことでしょうか?」
会社などでの話し方からすると、宮司の口調は、ずいぶんゆっくりに感じた。
そうか、ここは、会社や人間の社会とは違う空間なのかもしれない。
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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