「風間陽水の依頼簿（カルテ）・3」

カルテ番号　あ・28（3）

マイノリティー（少数派）はどうするか？
当然、隠す、隠れる。
人間はマイノリティーに残酷なのだ。
特に近代から現代は厳しくなった。
皆と同じでないモノは排除する。
時には滅亡まで追いやる。

人間の行為が正しいとか間違いとか言っても始まらない。
現代の人間はそういう性質なのだ。
だから、特殊な体質を持ったなら、当然隠して暮らす。
そして、極たまに同類と会うことがある。
同類は、何も言わなくても通じてしまう。

体質が特殊でも意識は様々だ。
体質からの傾向はあるが、生き方も考え方も様々だ。
お互い、知らんぷりするのが多い。
お互いも関わり合わないのが多い。
それは強い意志ではなく、気にしないという特徴からだった。
だから、常に一人きりとなる。

ところが世の中にはキマグレというのが起こる。
縁とか成り行きとか偶然とかが起きる。
風間陽水と愛田恵子は、つい気が合ってしまった。
そして、謎だらけのお互いの体質について話し合ってしまった。





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「風間陽水の依頼簿（カルテ）・2」

カルテ　あ・28番（2）

一つの種族は同じように創られている。
そんな思い込みが固定概念としてある。
圧倒的多数が絶対の真理だと思い込む。
ところが、世界は例外というヤツがあるのだ。
しかも、例外というヤツはアチコチにある。
困ったものだ・・・

陽水はあるキッカケから体質が変わった。
変えられた、といってもいいだろう。
そんな出来事は世の中には結構ある。珍しくもない。
仕掛けや発見はその先にある。
だから、どんな能力や体質でも結局は本人次第だ。
能力や体質など、それ自体は珍しくもない。

本人次第だが、努力とか研鑽は関係ない。
少しはあるか・・・
むしろ、縁とか運とかに関係する。
陽水のキッカケ後は生命に関する仕事になった。
仕事は日常になり、生き方にもなった。
そして、気付いた。
生命の仕組みは同じではない。


（登場する人物・組織・その他はフィクションです）





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「風間陽水の依頼簿（カルテ）・1」

あ・28番（1）

「センセー！　いる～？」
愛田恵子氏の声だ。相変わらずテンションが高い。
「エネルギー補充に来たよ～。ついでに温泉♪」
彼女は銀座のママさん。三年前からの知り合いだ。
銀座もクラブも風間陽水には縁が無いが、彼女とは深い縁があった。
その深い縁に気付いたのは、一瞬だった。

風間陽水は群馬県の最北に住んでいる。山の中だ。
20年前から治療院を開いている。とはいえ出張が主だ。
治療院の看板はサビで汚れて、閑な院だと誰でも判る。
本人がズボラで、経営能力に欠ける事も、誰でも判る。
彼はそんな事に興味がないのだ。
物事をすぐ忘れる癖を持っている。

治療法は少し特殊だ。
国家試験の鍼師・灸師の免状を持っているが使わない。
氣功療法と一応は紹介しているが、本当は少し違うらしい。
だが説明がメンドウなので、通りのいい氣功という名前を使っている。
人やモノの正体など、どうでもいいと思っている。
要は使えればいい、結果が喜ぶならいい、という考えらしい。

治療法は少し特殊だが、本人はかなり特殊らしい。
生物学的な人間として、かなり特殊らしい。
その事に気付いたのは10年前くらいからだ。
そして、愛田恵子氏も同類だと知った。

（登場する人物・組織・その他はフィクションです）




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「もう一つの・11」

病の回復も同じだ。
病が回復するならどんな方法でもいい。
だが、どうしても回復しない場合が往々にしてある。
悩みも同じだ。
どうしても超えられない場合が往々にしてある。

回復する方法にこだわっていないだろうか？
同じ系統ばかり選んでいないだろうか？
全く別の方法を否定していないだろうか？
そして、諦めていないだろうか？

本当は解決策は幾つもあるのだ。
方法は幾つもあるのだ。
解決法が、たった一つなんて事はない。
たった一つは、それぞれの生命だけだ。




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「もう一つの・10」

もう一つの方法がある。
それが何だか判らなくてもいい。
ある、事を知っていればいい。
知れば、方法が勝手に近づいてくる。
通路が勝手につながるのだ。

もう一人の人がいる。
それが誰だか判らなくてもいい。
いる、事を知っていればいい。
すると、縁がつながる。
通り過ぎないで、縁がつながる。

もう一つがある、と、知る。
すると、閉ざしていた目が開く。
身近に多くの宝がある事に気付く。
理解は努力でしなくてもいいのだ。
通路がつながれば、勝手に解る。



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「もう一つの・9」

まっすぐ進むのもいい。
一つに懸けるのもいい。
一つにこだわって、何かをするのもいい。
固さが特徴なのもいい。
生き方は自由なのだ。

だが、まっすぐ進むのは自分の生き方。
他に道がある事を知るのは大切だ。
曲がって進む人もいる。
立ち止まって景色を見る人もいる。
他を認めるのは、自を認めるのと同じだ。

道の歩き方は変わらない。
だが、他の道がある事を知る。
他の歩き方がある事を知る。
すると、同じ道を歩く生命力が活性する。
同じ道でも、同じ歩き方でも大きく違うのだ。




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「もう一つの・8」

己の微小さを知る。
すると、もう一つの扉が現れる。
扉の向こうには必ず道がある。
開くのは必須条件ではない。
開けなくてもいいのだ。

自分の未熟さを知る。
すると、道の広さが観える。
両端は遥か遠くだとわかる。
未熟を知ると、世界は広がる。

自分の固さを意識する。
自分のこだわりを意識する。
形を成すには、固さやこだわりが必要だ。
だが、先に進むには固さやこだわりが足枷になる。
こだわりを知ると、やわらかさが戻る。
赤ちゃん、幼児の頃の自由さが戻る。




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「もう一つの・7」

教わった事
覚えた事。
それ以外は教わっていなかった。
それ以外は覚えてなかった。
だから、それ以外は無い、と思い込んでいた。

人が覚える事。
気付く事。
知る事。
実に微少で微狭なのだ。
しかも間違って覚え、気付き、知る事が多い。

自分の知る世界は小さく狭い。
自分の知る世界は浅く、低い。
自分だけではない。
人類の知る世界も小さく、狭く、浅く、低いのだ。
まだまだ、まだまだの生物なのだ。




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「もう一つの・6」

無いと思い込んでいた、もう一つ。
居ないと思い込んでいた、もう一人の自分。
思い込みが全ての壁。
もう一つが見つかれば、更にもう一つは簡単に見つかる。

もう一つは多数を見つける最初の扉。
最初の扉さえ開けばいい。
次に壁に出会っても、扉が付いている事がわかる。
あとは、探せばいいだけだ。
絶望する必要はない。

選択肢は多数あることに気付く。
一つだけと思い込んで進む道。
多数の選択肢から選んだ道。
それが同じ道だったとしても、大きな違いがある。
生命力が発揮するか、されないかの違いとなる。
もう一つに気付くことは、様々な扉と力になる。




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「もう一つの・5」

社会の中だけしか自分がいない。
そう思い込むと、当然ながら生命力は低下する。
もう一つの自分を消してしまうからだ。
生命は個々に宿っているのに・・・

他の意見や評価が無いと、自分で歩けない。
そう思い込むと、生命力は低下する。
どんな道でも、歩くのは自発でしかないのだ。
自動歩道も自動階段も人生には存在しない。

流されて生きている部分はあるだろう。
だが、それだけだと思い込むと生命力は低下する。
もう一つの泳ぎ方も同時にできるのに。
いつでも、同時に複数のモノが存在し可能なのだ。




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