発行日をみると、昨年の4月に初版ということなので、今更新刊というのでもなさそうですが、はじめて知りました。
その昔、こけしにハマっていた時期がありました。自分の小遣いでこけしを買ったのは小学5年生頃の夏休みなので昭和49年頃だったかと思います。場所は山形の肘折温泉。父の実家が近くの舟形町というところで夏には毎年遊びに行っていたのですが、遊んでいて虫さされがひどくて、足がじんましんのようにさされた痕だらけになってしまったので、肘折温泉から湧き出る炭酸水を汲みに行ったのです。
その頃、肘折温泉がこけしのひとつの産地だということは知らなくて、買ったこけしは肘折のものではなくて山形市内のこけしでした。
そのあとお正月にお年玉を貰うと、新春のデパートの催事でよくあった民芸品やこけしの即売に出かけたものです。どこのデパートでもこけしを売っていましたが、今ではあまり聞かなくなりました。
その当時はこけしの景気がすごかったと思います。鳴子温泉や遠刈田温泉、鎌先温泉、作並温泉、蔵王温泉、温湯温泉など、こけしの産地の温泉に泊る機会もたくさんあったのですが、いつの頃からか、こけしも下火になっていきている印象を持っていました。
まだこけしに興味を持ちはじめた頃は、町の本屋でも入手できる入門書があり、そのいくつかを読みかじったものですが、最近は普通の本屋でこけしの本が並んでいるのを見たことがなかったように思います。
昔私が読んだ本はどちらかというとまず古いこけしの名品、こけしの歴史、風土、こけしの見方集め方、その心得と人間関係みたいなことが書いてあり、ひどいのになると、こけしを作る工人さんの評価めいたことが書いてあり、「こいつは修業が足りない」とか「褌を締め直して修業しろ」なんて書かれている人もあったので、書かれる身にとってはたまりませんね。初心者の人がこれを読んだら、そのこけしを買わなくなるようなことです。何だか教祖さまの上から目線で書かれているような印象でした。
先日みつけたこの本、とても新鮮な印象をもちました。ビジュアル中心でとても気軽に眺めることができますし、むずかしいことが書かれていないのがすごく親しみやすいです。それと工人さんへの問い合わせ葉書がついているのもアイデアですね。こけしグッズというのも面白いです。
こうした新鮮なアングルの本によって、こけしの売れ行きがよくなって、どこの産地の工人さんたちも作ることで生活が成り立つようになってくれるといいなと思いました。こけしの中でも幸せなこけしと可哀そうなこけしがあると思います。同じ木から作られたとしても、一方は大事にされ、また一方はないがしろにされてしまうような、、。
すべてのこけしが幸せでいて欲しいと思います。
小学生の時からこけしといえば当然おかしな子供ですが、もっと詳しくお話すると、その導火線があったと思います。まずその頃、国鉄のディスカバー ジャパンのキャンぺーンとかNHKの新日本紀行とか歌謡曲の私の城下町とか瀬戸の花嫁とか、日本のふるさとへ行こう、といった機運があったのと、学研の科学と学習という雑誌の学習の付録に「全国都道府県のお国自慢」のような雑誌で各地の民芸品を紹介していたこと、それとうちの父は山形県出身のせいか「花笠音頭」のレコードがうちにあったことなどです。まあ、他の子供なら、それでも民芸品やこけしに興味を持つことも少ないでしょうが、その辺りはやっぱり変わった子なのでしょう。こけしへの興味と同時進行で民謡への興味→邦楽への興味→歌舞伎への興味にも広がりました。多くの子供がビートルズを通る年頃に長唄とかを聞いていたのですから我ながら不思議です。その代わり少し遅れてストーンズが好きになりましたけれど、、。
こけし以前に父の郷里が山形で、家に花笠音頭のレコードがあった、というのがはじまりだと思います。
飾りタンスの中にも、大小さまざまのこけしが並んでいました。
親戚の家でも同様でしたが、今は、何処の家でも滅多にこけしを見かけなくなりました。
我が家のこけしも、いつの間にか捨てられたか、納屋の片隅に追いやられているのでしょう。
こういう本で、こけし復活につながれば良いですね!
おっしゃるとおりですね。昔はどこの家にも一本はこけしが飾ってあったという感じだったかもしれません。大衆食堂とか中華屋さん、一杯飲み屋さんのガラスケースにもよく飾ってありましたね。案外こけし自体の歴史は土人形や張り子のだるまなどに比べると浅いようです。それと、本来のこけしは東北地方独特のもので、他に地方にはなかったようです。不思議ですね。昔農民とか農閑期に近くの湯治場に長期の療養に出かけ、自炊で泊っていると、近くの木地屋さんがロクロで挽いた製品に混じってこけしを売りに来たそうで、お客さんは湯上りにこけしで肩を叩いたり、子供の土産に求めたのがそもそものようです。私の父の実家の天井裏からも真っ黒になった鳴子温泉や肘折温泉のこけしが出てきました。東北の子供の遊び相手だったこけしも、新しい素材のおもちゃの出現で亡びるかと思われた矢先、大人の蒐集家の眼にとまってからコレクションのブームが始まり、おみやげや鑑賞の対象となって現代に至っていると聞きます。戦前以前の古い職人の作ったこけしは一本で外車一台優に買えるくらいの金額で売買されることもあるようです。反対に、現在作られているこけしは例えば同じ材料の木からできているとしても、小遣い銭でおみやげに買える手ごろな値段で作る職人さんもいれば、すっかりアーティストになって注文して何年も待たされ、お代も一本うん万円からうん十万も要求する職人もいるなど不思議な世界です。不景気のためもあって、そうしたこけしの業界の人々の暮らし向きも厳しいようで廃業する人もあるようですが、こうした職人さんたちが生活できるよう景気がよくなってくれるといいです。