神様がくれた休日 (ホッとしたい時間)


神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

思えば遠くへ来たもんだ

2024年07月13日 19時13分38秒 | 心 思い
 抗がん剤一回目 5/14
点滴の影響は少しずつ薄まって来た、指先が水にぬれても大丈夫になって来た
だが冷水はどうか? 試す必要なし。 ふくらはぎの張りもずいぶん無くなった
夜中のトイレは相変わらず同じで7時間に10回くらい起きる、だが寝不足感は無い。 食欲は相変わらず大丈夫である。


 この身は変わらず故郷にあるけれど、時空は遥か遠くに来てしまった
74年の年月は長くもあり、短くもある
様々、多くの人との接点が流れていき、縁あったのか無かったのか
別れがたい人も男女問わずあったけれど、今もこの地にある者は一人もいない
今親しく交わっている人たちは家族親戚を除けば、みな40を過ぎてから知り合い、友となった人たちだ
いったい若い時の親友とか想い人とかは、どこに行ってしまったのだろう
あの時の離れがたい切なさは何だったんだろう
私と同じように、彼らの心からは私はもはや忘れ去った幻になったのか

良き友、生涯を通じてと思った友ほど早く逝ってしまった
友の価値感は同じ時を一緒に過ごしたことにある、同じ時空で同じ課題を語り合い、討論した日々
同じ山道を前後になって歩き、同じゲレンデを前後になって滑った
同じ映画、同じ書を語り、生真面目に青春や人生を語り合ったりした
思い出せば懐かしいが、一つとしてもう戻ることは無い
その人も戻ることがない
今は近くに居てくれる人たちと人生を共に過ごしていく

過去を思えば、やはり遠くに来たもんだ。



 
パティページ ふるえて眠れ
Patti Page - "Hush, Hush, Sweet Charlotte"

「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (138) 長尾家 51

2024年07月13日 11時20分02秒 | 甲越軍記
 晴景は都から藤紫と言う女を呼び寄せて寵愛した
この藤紫は天性の艶色あり、たおやかに、媚技、顔美しく、たちまち晴景は虜となり、他の側妾には目もくれずただただ藤紫に溺れて言うがままに任せていた。

この藤紫は性質は奸悪で妬み心あり、この女によって害されるものが多かった
晴景が藤紫と共に遊行のとき道の端で平伏する者の中に、耐え切れず頭を上げた者あり、それを見た藤紫によって口にも出せぬ、残虐でおぞましい罰を与えられて殺され辱められた女は十指に足りず、諸臣これを見て眉を潜めるが、晴景は短慮故、諌して手討ちになった臣も多くいまや誰も諌めるものなし。
それがために晴景に仕える奸臣、徳山右衛門尉、棚倉備中守などが晴景の悪行を助け権力を振るうので、忠臣の者たちは一様に、長尾の滅亡も近いと嘆かぬ者は無し。

原三郎は藤紫の弟で、都より姉と共に府中にやって来た
これまた男なれども姉に似た美形で、その姿かたちの美しさに晴景は藤紫同様に寵愛しただけでなく政治にまで口を挟むことを容認したので、その地位は老臣より上のようになり、まるで大将のように見えた。

新発田(しばた)の城主、新発田尾張守は府内に館を設けて移り住んでいた
その内室、お時の方も共に在ったが、弥生の半ばここかしこに花は咲き乱れ、桜の陰を乗り物に乗り、侍女を引き連れ遊んでいたが、向こうより年のころ十八、九歳ばかりの少年が、女乗り物と見て傍らにたたずんで乗り物を見返る。

その少年の姿容姿は眉気高く色白く、髪のかかり口づきの愛らしさ
またその着衣もきらびやかで白小袖に朽葉色の中着を重ね、上には黒襦子に桃色の糸で「夢」の一文字を五所紋に縫わせ、いろいろの糸で桐の薹(とう)を縫った袴、金鍔の刀を脇に差し若党、小者に千鳥の槍を持たせている。

通り過ぎてからも輿の簾より密かに振り返り見れば、その姿にお時の方の心は妖しく波立つのであった。
花を手折らせ木の下を打ちすぎていく姿に、女房達も皆胸騒ぎをおこし
彼の少年の小者に「あの少年はいかなるお方の、御子でありましょうや」と訪ねれば、槍持ちの小者はにべもなく荒声にて「これは父母の産みたる子にて候」