昨日は手術後初めて映画を見てきました、だから一年ぶりですね
それも興味を引いた映画が2本あったので、2本とも見てきました。
1本目は「HERE 時を越えて」
トムハンクス主演ですが、一つの家が建ってから、そこに住んだいくつかの家族のドラマで、その一つがトムハンクス演じるリチャード家の愛憎の物語
全体を通して、この父親アルと息子リチャードの親子の二世代家庭が主軸になっている
この家庭を中心にして前後の住人たちのドラマが過去と未来を行き来して、交錯していく
さらに、この地が1億年の昔、恐竜の時代から始まり、原始人の愛の物語、アメリカの独立戦争のころの時代、アメリカがイギリスから独立を勝ち取ったのち、この家が建てられる、そして様々な家族がこの家で暮らす。
舞台は映画の始まりから終わりまで、一つのリビングだけ
それも固定カメラで定位置から撮り続ける、舞台劇のように
最初は時代が前後して、いろいろな家族が落ち着かず交代するので、退屈を感じた、でもアルとリチャードの家庭のドラマが見えてくるとストーリー性が出てきて面白くなった
若い日のアルは退役軍人で妻のローズに子供ができたと聞いて、この家を買う
やがて息子のリチャードもマーガレットと結婚して子供が生まれる
誰もが若いときには夢をもつが、人生はそうそう思い通りにはいかない
コメディでもサスペンスでもない普通のホームドラマである、だが時には笑わせて、時には泣かせてくれる
自分のこれまでの人生と重ね合わせて見ていた
人生は短いけれど、多くの思い出が中に詰まっている、楽しいことも悲しことも平等に詰まっている
見終わった後、感動と人生のはかなさが残る映画だ。

「HERE」を見終えて、いったん外に出て次の上映まで30分あったので15分間付近を散歩してから入場券を買った
劇場に入ったら、なんと80余席に客は私一人だった、最初の映画も10人くらいだったけど
始まる直前に男性一人が入ってきて2人だけのための上映
映画は「レイブンズ」これは邦画、主演は浅野忠信と瀧内公美、浅野はともかく
瀧内は「リバーサル・オーケストラ」で初めて見てからファンになった
富山県高岡市出身なのも嬉しい、この映画を見ることにしたのは瀧内が準主役だからだ。
「レイブンズ」は英語で、訳すと「ワタリカラス」のこと
このドラマは実在の、孤高の天才写真家深瀬昌久をモデルにして書かれた映画である
映画の中での彼の人生を書けば、北海道の写真館の長男に生まれ、経営者の父は昌久を跡継ぎにしたいが、昌久は芸術写真を撮りたいと言って、親を振り切って東京に出る
しかしなかなか芽は出ない、そのうちに意気投合した、現代的な娘、鰐部洋子と結婚して。彼女をモデルに写真を撮りまくる
それでもうだつがあがらず、だんだんすさんだ生活になっていく
洋子も、そんな昌久に愛想をつかすようになり、最後は家を出てしまう
一人暮らしになった昌久は奇行も多くなりなり、病的症状や乱れた生活に溺れる
そして北海道の父が経営不振で自殺する
昌久は高校生時代に突然現れた人間大のカラス(影なのか魔物なのか)に付きまとわれていたが、人生後半になってついにカラスを追い払う
それ以後、狂ったようにカラス、鳥、ネコ、町の写真、人物の一瞬の美などを撮りまくり、アメリカでも発表され、一躍写真界の大御所になる
そして、洋子を撮った写真集を発行する
洋子はすでに再婚して幸せになっていた
名声を得ても、昌久は酒におぼれ自堕落な生活を続けている
そして酒場の階段から転落して寝たきりとなって、人生を終える。

実際の深瀬昌久は同じ写真家の荒木 経惟 、森山大道らと写真家の養成活動も行った。
生涯の大半をカラスの化身に付きまとわれて(映画の中のこと)道を見失っていた昌久は、洋子との別離、彼を縛り付けていた父の死、そしてカラスの影を追い払ったことで彼は彼を取り戻す、そして一気に開花するのだったが
芸術を生むために自分をすり減らして、悲惨な最後を迎えるまでの過程は「すさまじい」としか言いようがない
凡人と異なる孤独で奇怪な感性を持った芸術家は生涯生みの苦しみにもだえ苦しむのか。