神様がくれた休日 (ホッとしたい時間)


神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

役者

2024年10月20日 09時55分48秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 もう20年くらい前になるかな
中学校の同級会が行われて、100人くらい集まったんだけど、その中にK子がいた
格別の付き合いも無かったが、家は近くて親同士が昔からの友達だったからほんのりとした関係ではあった。

K子は、私とは正反対で頭が良く、美人で、積極的な人だった
高校を卒業して東京に出た。 大学へ行ったのかどうかは知らないが音信は不通になった、別に友達関係でもなかったし、意識もしてなかったが

その日の同級会で、彼女が私のところにやって来た、突然だった
なぜ私のところに来たのかは全くわからない、今もわからない
そして、久しぶりね”みたいなことを言って話し出した、それは唐突で脈絡もない話
「高校生のときね、あなたのお父さんが家に遊びに来てね、私を見て言ったのよ『**ちゃん、美人になったなあ、うちの倅の嫁になってくれたらいいのになあ』だって」
なんで突然、そんなことを言ったのだろう? それしか言わなかった
そして別の席に行ってしまった
きっと懐かしかったから話して見たかったのだろう、だけど思い出話といえば、二人の間にはそれしかなかったのだから、きっとそうだろう。

彼女は東京に出て役者になった、そこそこステージにも立っていると同級生から聞いた
でも一流にはなれなかった、でも当時40代か50前か? 役者は続けていた
それだけの話。

役者って「縫いぐるみ」かなと思う
魂が入ってない縫いぐるみ、そこに役が回ってくると縫いぐるみに魂が入って動き出す、そして芝居(映画)が終わると、魂が抜けて、また縫いぐるみに戻る

同じ体に別の魂が宿る、その都度、縫いぐるみの個性が代わる
先日、役者の西田敏行さんが亡くなった
私は、西田の芝居は臭くてあまり好きではなかった、わざとらしさが匂ってくるのだ、セリフ回しが大げさと言うのか・・・
大河「おんな太閤記」での秀吉もセリフが浮いて見えたし、「八重の桜」での西郷頼母役も、どうかなと思った。
もっとも秀吉役は老後の秀吉は迫力があって良かった、私にはどうやら「良い人」を演じる時にわざとらしさが鼻に突くようだ
その点では「釣りバカ」ははまり役だ、決して良いばかりの人ではない浜ちゃん
仕事をさぼっては釣り三昧、社長さえも弟子にして言いたい放題
上司をコケにするし、怖いものなし
どうも西田さんは、こういう役が合っていた気がする。
役とは縫いぐるみに入れる魂の事だ

「光るきみへ」の藤式部の父役の岸谷五朗さんは、今の役は気弱で真面目な役人、うまく演じている
だが「北の国から 遺言」では荒っぽい漁師(唐十郎)の息子役で、(内田有紀)の別居夫の危ない男を演じた
あのときの芝居は、「光るきみ」の役と同じ人物とは思えない怖い顔に見えた

役者は偉いと思う、本当の自分を本人はわかっているのだろうか?
一年中、自分ではない架空の人物を演じていて(人気俳優はいくつもかけもち)自分をたもてるものなのか

渥美清さんは本当にすごいと思う、私が選ぶとしたらベスト3の一人だ
渥美清か寅さんか、どっちが縫いぐるみで、どっちが魂かわからないほど一体化している、こうなればもはや名人なんだろうな。

泣いてたまるか - 渥美清






映画「PERFECT DAYS」を見た 2回目

2024年10月18日 17時47分22秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 1回目を見たのは4月初め、もう一度見たいと映画館を探しているうちに5月に緊急入院となって、今日まで映画館で2時間以上じっとしていることができない状況になったのだった。

ところが今月のWowowでは、2023年に上映された映画が相次いで放映された
この映画もそうだが、「こんにちは、母さん」「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて」、すべて見た映画だが、パーフェクトを家で見られるのはラッキーだった。

映画は予備知識なく見る1回目、そしてあらすじを知って見る2回目では感じる場所が違ってくる、そして1回目では見落とした部分が2回目では見えてくる
感じ方も違ってくる。

登場人物にも視点が行く、作者はそれぞれに何を背負わせたのか、まっさらな俳優にどんな個性を持たせて魂を吹き込んだのか
主人公平山(役所広司)、同僚の若者タカシ、ホームレス、寺の掃除のおばさん、古本屋の女主人、姪のニコ、居酒屋の親父、赤ちょうちんの女将(石川さゆり)、女将の元亭主(三浦友和)、ニコの母親、一緒に車の運転してきた男(夫? 彼? お抱え運転手?)、障害を持った青年、姿が見えないオセロの相手、タカシの彼女アヤちゃん・・・それにトイレを使ういろいろな人たちも意味を持っている、ざっとこんなところか
見終わった後で一人一人の分析をするのも楽しいが、ここでは割愛する。

セリフを考えるのも面白い、必ず作者が伝えたい意図をもったセリフが有る筈
「こんど」「こんどっていつ」「こんどはこんどさ」「だからこんどっていつ」「こんどはこんど、いまはいま」「こんどはこんど、いまはいま」で納得してしまう姪のニコ

「伯父さんは、ママと住む世界が違うって」高級車に乗ってやって来たママ、トイレ清掃人の伯父さん、伯父さんも、かってはそちら側の人間だったが「おとうさんも、もう昔のおとうさんじゃないわ、帰ってこない」と何かの葛藤があって、ここにたどり着いたのだろう。
昼食をとりに来る神社のベンチの前に貼緑の葉を茂らせる数本の広葉樹がそびえたっている、その間からの木漏れ日はきらめき、彼は毎日それの写真を撮る「この樹は、伯父さんの友達なの?」ニコは見抜いている

同僚の若者タカシとのあまりにも大きな世代間ギャップが世相を表し、若者の彼女アヤちゃんが物足りない彼よりも昭和の中年男、平山に魅力を感じるのは、彼女の求める男性像が中年男の方により近かったということか。

孤独な女には、孤独になる理由がある、それがわかっているから男を求めるが、それをわかってくれる男は少ない
孤独な女の我儘な一人語りを、優しいまなざしで静かに聞いてくれる平山
彼女を追い掛け回し、今夜が勝負だからと、そのためにお金が必要だと云うタカシとの違いはそこにある、それは世代の違いだから仕方ないけれど
傷ついた蝶は、きらめく広葉樹に包まれて休みたい

平山のカセットテープが1万円で売れるから売りましょう、そしてお金貸してくださいと若者は言う、だが何十年も大事にしてきたテープは売る気にならず、財布から有り金全部3万円ほど若者に無言で渡す主人公
しかし、空っぽの財布、主人公はレコードショップに行って結局テープを一本売ってしまうのだ、タカシにはしられぬように、これが平山の優しさ、懐の深さなのだ

だから姪のニコが何かしらの不満を持って母のところから家出をしてきて
「家出したら行き先は伯父さんのところって決めていたの」は、アヤちゃん同様に、平山の懐の深さを知っているからに違いない。

始まりは物静かなトイレ清掃人でしかない主人公、次第に生活パターンが明かされて、休日はまた異なった姿を見せてくれる
平山の内面が次第に明かされていく、最後は赤ちょうちんの女将へのほのかな思慕
そこに訳ありの男が現れて、女将と何やら深刻に話している
男が亭主ではないかと主人公にはピンとくる、夢が壊れたと思ったが、それは7年前に別れて今は別の女と再婚した元夫と聞いて、さらに「私はガンを患っていまして」「あいつをよろしくお願いします」「いえ、そんなんじゃないんです」と否定しても、それは真実ではなく
ラストシーンでは、運転しながら平山の顔は喜びがこぼれている、そしてBGMが次第に大きく響き、その心の喜びを祝す。

平山にはぎらぎらする欲望は微塵もない、自然のままに時間と生きている
それが毎日の規則正しい生活になっている、ところがいろんな人間関係が平山の規則正しい日常を乱す
それゆえ楽しみの居酒屋での一杯の焼酎と食事が出来なかったり、仕事帰りの一番風呂にも入れなかったり、就寝前の読書時間までも奪われてしまう。
「おっと、この先を書いたらまた長くなるから、続きとする」

                             つづく

Sunny Afternoon - The Kinks lyrics



30年前に準備した老後対策

2024年07月22日 19時27分29秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 今日も朝から暑かったが結構な風が一日吹いていたので、気温も31度までだった。
おかげで夕方には散歩もできた、わりと涼やかな風が吹いていて歩いている時は汗をかかなかった。

 老後の楽しみに40代からテレビ番組をDVDに録って溜め置いた
その枚数は700枚くらいになる、三倍だと6時間だから全部見るなら4500時間くらいか、一日3時間見て1500日かかるから毎日三時間でも4年か!
78歳、メジャーリーグ、相撲、連ドラも見るから考えただけで無理なのがわかる
老後の楽しみにと録ったが、今がその時になった、要するに無職になって時間を持て余すときが私の老後だ。

録画したDVDの70%は韓ドラだ、40代、50代は韓ドラにどっぷりで、NHKの韓国語講座やテキストCDで韓国語を勉強して、新潟、富山、小松から何度も韓国に飛んだ時期もあった。
キム・ハヌル チェ・ジウ イ・ヨンエ パク・ウネ イ・ビョンホン ソン.スンフォンなどのファンになり、最後はソン・イェジンにハマった。
春先に朝鮮戦争が舞台の「ロードナンバーワン」を全編見終えた、ヒョンビン キムハヌルがが主演だった。

それ以外はドキュメンタリー、緊急ニュース映像、恐竜もの、宇宙ものなどサイエンス番組、あとは野球が多い、それも記録達成の試合とか、日本シリーズとかで、あの前々回の阪神の日本シリーズも録ってあった。
最近見ているのは三陸沖地震の速報ライブや、同時多発テロの速報ライブだ

今日は、このDVDを整理して分類しようと思う、分類せずに収納したので見たいのを探すのがたいへん、すっきりさせて暇な時間に楽しもうと思う

最近は夜10時半までに寝て、朝は5時起きが定着したので夜更かしをしない
早朝からテレビを見る気にもならないから、結局食事後の2時間くらいしか見る時間はない
それでも何かで時間を過ごせれば、それは良い時間である
当時を感じながら見るのも良いだろう。





 ドラマ「老害の人」と白川和子

2024年05月11日 20時08分03秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 春のドラマのラインナップも出そろったようで、一時は15本くらいHDDに録画したので、前々の駅伝やマラソン、WBCなども録画のままなので残量がほぼなくなった。
急いで全部見たが、とてもじゃないが見きれるものではない、大谷も見なきゃいけないし、畑作業に、ドライブに、散歩に時間が足りない。

それで選考基準を厳しくして安っぽい恋愛ドラマや、謎が薄っぺらい復讐劇、ミステリー、ホームドラマを次々退場させたら、なんとか7~8本に落ち着いた
それらは後日書くとして、最近始まったNHKの「老害の人」は私にも密着したホームドラマで興味津々、伊東四朗を始めベテラン味のある出演者でなかなかの良い出来である。
そんな中に、白川和子も主役の伊東四朗の友達なのか縁者なのかの役で出ていた、流石に歳をとって、それなりの役だが、それでも若いころの色気は残っている。

 昭和45年頃の 新潟市は 駅前から まっすぐメインストリートの東大通が万代橋を通って 日本海まで 続く、そこは横田めぐみさんが拉致された寄居浜でもあった。
古町十字路には 大和デパート 小林デパート の 地方のデパートのドンが2つ、 ドンと構え ていた、今は二つとも無くなった
隣の東堀には 和光ビル、 長崎屋 、イチムラ デパートの三つが当時の高層ビルとして並んで存在感を示していた(5,6階くらいだったか)
小さな十字路の角にあった和光ビルは、細長い建物でしゃれた雰囲気の建物だった
歩道から、そのビルの地下に向かって階段があり、そこを下ると「OP劇場」という映画館になっていた、大蔵映画系のピンク映画専門館だった。

うすぐら~い生活を送っていた二十歳の私は月に何度か通って、3本建て500円の特別優待券をもらって得意になって通ったものだった。
いつも一人で見に行っていた、もちろん当時は映画が趣味だったから、ピンクはここだけでゴールドの映画も見ていた
新潟市で当時一番大きな映画館小林デパートの「グランド劇場」で「ウェストサイド物語」を月に3回見たり、]「ウッドストック」も2回見た。
また同系列の小さな劇場「名画座ライフ」では「明日に向かって撃て」とか渋い名作をいつも見ていた、東宝、テアトル、松竹で封切話題作を見て、東映パラスでは高倉健「網走番外地」、梅宮辰夫「不良番長」などのシリーズを好んで見ていた、日活もあったが、裕次郎や小林旭の時代が薄れて、ひっそりしていた。

単なる好奇心とヒマつぶしで見ていたピンクだが、そんな中にただ一人オーラを持った女優を発見して、見終わってから映画館のポスターを見て、それが白川和子だと知った。
他の女優とは全く違う雰囲気を持っていた
後に日活ロマンポルノのトップスターになるが、当時はまだマニアックなマイナー映画であった。
しかも彼女が女子大生だという記事を雑誌で見て、ますますファンになった
その後、前記のように
「団地妻」が大ブレーク、一躍、日活の救世主日活ロマンのスターになったのだから、私は自分が彼女を発掘したような優越感を覚えた。
その後はポルノ路線を離れて、テレビドラマで主婦役などで出るようになった
その彼女が、この度「老害の人」にも出演して「死にたい死にたい」という高齢者春子役で出て来た、脇役ではあるが、注目していきたいと思っている

このドラマは、コロナから時代を反映した設定になっている、これから「老害」になりつつある私や同時代の人たちに何らかの刺激を与えてくれるだろう
頑固に自分の主張を曲げたくない、それが老害につながり、ずっと使て来た言葉や態度がハラスメントで罰される現代
口を閉ざして生きていくのか、部屋に閉じこもって動かないのか
主役の伊東四朗はきっと「バカを言うんじゃないよ」とますます自我を前に出して老害を楽しんでいくのではないだろうか。 楽しみなドラマだ。




続「PERFECT DAYS」

2024年05月03日 20時19分24秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 もう一度見たいと思った「PERFECT DAYS」がGWに再上映されることになり是が非でも見ようと思っていた。
一週間足らずの上映日数であったが、私は29日からおばさんの法事、漁師の手伝い、闘病の先輩との再会、そして長野ドライブ、昨日は半日浜辺で息子にお付き合いとずっと日程が埋まっていて、とうとう今日3日を残すだけとなった。

それで行く気満々だったのだが、三か月前から慢性的に消化器系に不調が続いていて今日は行く自信が無い
それにずっと出ずっぱりの日が続いたので、気持ちを休めるためにも今日は休養が必要だった。
温かい日が続き、どうせ家にいるなら予定より三日早いが野菜の苗の植え付けをすることにした
また樹木の葉が茂りすぎているので、それらの剪定もすることにした。

 

そんなわけで気持ちだけ「PERFECT DAYS」に持って行き、考えながら作業をしたら、前回とは違う視点で見えて来た。
前回は彼の規則的な生活に目が行っていたが、今日思ったのはこうだ

彼の暮らしは実にシンプルで家財道具がほとんどなく、令和の暮らしとは思えないほどだ。
テレビ、ラジオが無い、新聞も取っていないし読まない、車に乗ってもラジオは聴かずカセットテープで60年代のポップス系を聴いているだけ。
すなわち、彼は世間のニュース、芸能、スポーツ、経済、戦争、財テクなどには全く関心を持っていないように思える。
また炊事もしない、朝は自販機のドリンクを1本、昼はコンビニ食、夕食は毎日の行きつけの食堂で一杯流し込んでから食べる。
家に帰ってからは趣味の写真の整理、仕分け、そして寝るまで本を読む
彼のウィークディの生活はこんな風にシンプルで、人との関りも仕事上で最小限にとどまっている。
休日の日曜だけが唯一、人と関わり、酒を飲んで人間的な感情を現す。


彼の生活を見て思ったのは、「貧しい」とか「倹約、質素、無関心」に見えてそうではない、あの生活は記憶がある
私が幼児だった昭和25年から32年頃までの我が家の暮らしに似ている
朝ドラで戦前の昭和から戦後33年頃までの家庭の様子が『虎に翼』『らんまん』でも描かれたが、わが家とは比べ物にならない良い暮らしぶりだ
わが町でも駅周辺の商店街の人たちの暮らしは上記の家庭に似ている

彼、平山の暮らしは一人暮らしだから、昭和20年代のわが家よりももっとシンプルだが、当時の我が家には父の手作りのラジオがあるだけで、新聞も取っていなかったし、雑誌の類もなかった
父の趣味と言えば平山同様に写真を撮ることだった、二眼レフのカメラで人ばかり撮っていた。

家財道具は母が嫁入りの時に持って来たタンスだけで、最初は仏壇も神棚もない家だった
ほんとうにそれ以外、何もない家だったのだ、『かまど』と『いろり』はあったが、水道もなく、家の外の『ポンプ井戸』で水を上げて使っていた。
乗り物は父の仕事用の自転車だけで

そこで肝心なのは、ではその生活がみじめで辛かったかと言えば、それは違う
貧しいかと問われれば、それも違う、我が家の近所の家もたいがい似たり寄ったりだったから少しも貧しいとは思わなかった
何よりも食べ物に不自由をしていなかったから、美味しいい魚を食べて、配給で不足する米も父が闇商売で魚と物々交換してきて、米だけは売るほどあったのだった。

平山の暮らしと同じく、家の中はラジオのドラマ以外聴くこともなく静かに暮らしていた
親父夫婦の他は幼児と赤子だけだから、特に話すこともなくゆったりした時間が流れていた
海辺の我が家は夏には北向きの窓から浜風がそよそよと入って来て、静かな中でいったいどれだけ昼寝をしたのだろう
あの頃の我が家の暮らしも、平山の暮らしも静けさの中にあって、静けさという幸福感が満ち溢れていた

不必要な情報、心を揺るがす情報、憎しみや優越感を得る情報、情報社会と呼ばれる現代は小学生までもがスマホやIT機器で情報を得ている
正しいことも誤ったことも、それが真実かどうかもわからず騒ぎ立てる

何もしらない世界、知ろうとしない世界で暮らすのは、ある意味、幸せなのだ
人の生活レベルと比べることもなく、自分の生活に満足できれば、こんな幸せはない
われわれは南の孤島で暮らす人たちを文明から離れた不幸な人々と思うかもしれない、だが彼らに静かな生活がある限り、我々せせこましい、あるいは常に不満と戦争を背負っている我らよりずっと幸せかもしれない。

知らない幸せ、持たない幸せ、この映画は人間として本当の幸せは何かを描きたかったのかもしれない。





映画「PERFECT DAYS」を見た

2024年04月09日 07時12分28秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 たいがいの人は、他人の生活など興味が無いし、見てほしいと言っても見たくないはず。
ところが何のへんてつもない平凡なトイレ清掃員の生活を、わざわざお金を払って見に行く
私も、その一人になった。  なぜ行ったのだろうか? それはこの映画の評判が良かったと言うことに尽きる
ごくありふれた生活ドラマだと書いてあった、だから事件だとかが映画の中でおこることは最初から思っていない
そうだ、もう一つは全編にオールデイズナンバーがかかっているという情報
これには少し心が動いたのだった。

田舎で、マニアックな映画を見るのは容易でない、いつも話題作、封切を見に行くのは総合シアターで、そこでは上映予定が無かった
金沢、富山から新潟まで上映館を探してみたら、それなりに4月まで上映している映画館はいくつかあった。
そんな中で気をひいたのは、上越市高田の映画館「高田世界館」
もちろん過去には行ったことがない、なぜここに決めたかというと、この映画館が出来たのが1911年なのだそうで、日本でも最古の映画館の一つらしい
映画もさることながら、映画館そのものを見たいと思ったからだ

さて映画に戻って。 
現役で働いている人も、現役を退いた人も、ほぼ毎日同じパターンで生活している人が大部分だろう、そして休日だけが特別な日
それを平凡と言う、だからこの映画に平凡以外を求めてはいけない
そんなワンパターンの生活の中に、時々他人が紛れ込んでくる、時には巻き込まれてしまう
それが若い女性で、昭和の遺物のカセットのオールデイズナンバーを「良い歌ね」とか「私、これ好き」などとささやかれたら、自分が言われた気になって無口な男でも、ついつい頬が緩んでしまう、それが男という者だ。
ましてや感謝のほっぺにちゅ!でもされたら舞い上がって人生を狂わせてしまうかもしれない、そうなればこのドラマはテーマを失って終わってしまう。

幸いに主人公は、そんな風にはならず、近くのスナックのママにほんのり好意をもって週一だけ通う
こんなささやかな楽しみが、単調な暮らしの男にもいくつかある
写真、木、誰かがトイレに置いていった手書きの○×ゲーム、朝一の天気、モーニングコーヒー、まだまだ探せばいっぱいある
それを自分でも、「自分の生活の中で探してみよう」と思わせてくれただけでも、この映画を見た価値はあった
あるいはブログの中で、それを既に書いているのかもしれない。

男の決まった生活サイクルの中で、令和の若者と、昭和中期若者だったおっさんとの興味深いズレが描かれている
50年の過去を持つ昭和男は同じ日常を淡々とこなし、50年の未来を持つ平成の若者の、まだ確立されていない不安定な毎日
昭和人は若い時から日常サイクルを持っていた、しかし平成人の若者の数十%は浮草のような不安定な一日を送っている
それでも1時間後が見えない外国の戦下の人たちよりは遥かに平和に生きているのだ

そして昭和が骨董価値で売れる時代が来た、だが昭和人は金よりも物を大事にして手放さない
手放せば二度と戻ってこない、売って得た金は三日と持たずに無くなる
昭和人はそれをいやと言うほど経験してきた、失ったものが戻ってこない虚しさ
金より物が大事だと知っている昭和人のブルース。
それが物だけでなく、信用や友情、過去などの見えない価値観にも言える
だから、昭和人は、それを無くさないように生きている、それが滑稽で不思議に見える現代の若者
でもこの映画では昭和人のそんなミステリアスな部分に引かれる女性も登場した
俺たちの時代は「教える」ではなく「盗んで覚えろ」だった、それはこの映画の若い女性も、そんな昭和人を見て何かを感じる
男が無口なのには様々な理由がある、だからこそ言葉が通じない若者との交流では語るより「感じろ」なのかもしれない

何に一番感動したかというと姪が家出して主人公を頼ってきて、一緒にトイレ掃除をしたシーン
令和の時代、何もかもが揃っている だが何もかもが手に入るかというと、多くの人は手に入れることができない
「金が無ければ恋もできないのかよ」と現代の若者は嘆く
昭和人は金では手に入らない、あるいは、金が無くても手に入る「実体のない幸せ」を自分の中に持っている
それを持たない令和の若者には不思議なおじさんに見えるのかもしれない

それと、いい加減で何の夢も持たないように見える若い同僚が、障害を持った青年に自然体で接している優しさ、昭和人には理解しがたい若者の生態、これは昭和人には少ない感情
この映画を見る多くは昭和を生きた人たちのようだが、平成生まれの人たちにこそ見てもらいたい映画だ
私ももう一度見れば、より深く、この映画を理解できると思う。

今日、私と一緒に見ていた観客は20人ほどで、ほとんどがシニアの男女だった
そしてスタッフとの会話から常連の映画ファンらしい
感動したのは、映画のエンドロールの辺りで2度拍手があったこと

この映画館は、新潟県で起きた2つの地震で営業をやめるまで追い込まれたらしい、それを市民有志が募金したりして、今は映画好きの市民NPOが運営していると言う。
それで、もぎりは若いお姉さんだったし、館内にも一人、お姉さんが同席していた、運営スタッフなんだろう。
10時上映の25分前に行ったら、もぎりのお姉さんが「今、暖房を入れたばかりなので、まだ少し寒いかもしれません」と申し訳なさそうに言った
それがローカルで、ビッグシアターには無い景色で嬉しくなった

館内も予約すれば見学できるらしい、ネットで見たら二階席、三階席もあるのかな? オペラ劇場みたいな感じか(オペラは見たことないけど)
登録有形文化財、近代化産業遺産に登録されているそうです。

さすがに古い映画館で、椅子も昔のあれ、座り心地は良くなかったので、別の椅子に座ったら、そこは良かった
マルチシアターとはまるっきし違う映画構成で、今度は電車で見に来て、一日この町を歩き回ろうかと考えている。


チケット(そのまま)




「さよならマエストロ」終わる

2024年03月20日 08時57分58秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 最近は記事ネタが多くて、日が過ぎてからの掲載が増えて来た
今でも1日に2記事書いているので、これ以上掲載しても分母が増えるだけで分子は変わらないので、無駄ってことになるから・・・

「さよならマエストロ」は日曜日に終わって、掲載が今日になってしまった
でも、なかなか良いドラマだった、普通オーケストラが題材のドラマは私にとっては退屈なんですが、このドラマも毎回、録画再生ボタンを押すまではなんか「見なくてもいいわ」と思ってしまうんだけど、見始めると1分で入り込んでしまう。

以前も、オーケストラが偉い人の陰謀で解散させられそうになるのがあったけど、あのドラマの何倍も、こちらの方がストーリーも、視点の広さも、キャストも全てにおいて素晴らしい。
なにか淡々と進行して行って、一人一人の悩みや苦しみが、感情の一つが完全に欠如しているマエストロのおかげで解決していく爽快感
俗物の塊である私などが、とても行きつくことができない人間性、あんな人が現実にいるのだろうか? と思うが、育ちの良い人の中にはいるらしい。

まあ、ちょっと現実的でないことを言えば、坊主頭の甲子園のエースの高校生が、突然指揮者に憧れて、親に勘当されてまで変わってしまうという設定
なんか強豪相撲部の生徒がバレーダンサーに転身みたいで笑えた。

それと私の憧れの富士山が、いつも背景にあるというのが気分良くしてくれた
キャストもフルート美人やティンパニーのお姉さん、指揮者を目指す市長の娘
まだタレント名知らないけど、毎週会うのが楽しみだった。

それと助演で良かったのは、西田敏行。 いろんなドラマで見たけど「ハマちゃん」以外の役は、「女太閤記」の秀吉役とかどれも鼻について嫌だったが、このドラマの音楽喫茶のマスター役はぴったりどん!だった。ハマちゃんだけにハマり役だった。
1年半いろんなドラマを見たけど、これは5本の指に入る名作だったと思う
感動のドラマだった
もう一度人生があれば、こんな人生も悪くないかな。




大相撲は11日目、予想通り大の里、尊富士に大関をぶつけて来た
優勝ライン13勝とすれば、大の里と琴ノ若は5連勝、尊富士は3勝2敗で良い
12勝なら豊昇龍、貴景勝、豪ノ山、高安、御嶽海、湘南の海が5連勝
大の里、琴ノ若4勝1敗、尊富士2勝3敗
数字では俄然、尊富士が有利、三大関は霧島が休場しなければ13日目から潰し合いが始まる。
今日の琴ノ若、尊富士戦 大の里、貴景勝戦でほぼ優勝の行方が決まりそうだ
予想では琴ノ若が尊富士に勝つ気がする、昨日は大の里はまさかの投げで自滅したが、それだけ尊富士の圧力があったということだ
だが琴ノ若は尊富士のダッシュを受け止めそうな気がする、そのあと落ち着いて寄れば琴ノ若が勝ちそうだ。
大の里、貴景勝は五分だと思う、押し合いなら貴景勝有利、先手一気の寄りなら大の里がはたき込みで勝ちそうだ。
尊富士が負ければ、来場所横綱獲りがかかる琴ノ若が俄然有利になるだろう。
明日も尊富士は大関戦になるはずだ、相手は豊昇龍ではないだろうか。






映画とドラマ

2024年03月06日 09時33分50秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 この一週間は、ずっと天気が悪くて寒い、一日おきには歩いているが、ほのぼのとしない。
その代りブログ更新とテレビでの映画、ドラマを見る回数がぐっと増えた
最大15本から始めた春ドラだが、面白くない物を削って行ったので、今は
「春よ来い」「ブギウギ」「大奥」「おっさんのパンツ・・・」
「新空港占拠」「光る君へ」「さよならマエストロ」「Eye love you」
「不適切にもほどがある」の9本になった。
そうだ「舟を編む」も見だして10本だ
病院物は3本あったが、すべて途中棄権した、先週はついに「院内警察」もやめた、謎が無い、謎が薄っぺらい、謎が支離滅裂なミステリーは飽きてしまう
残ったのはどれも面白い。

「おっさんのパンツ・・」はジェンダー問題とハラスメントを扱っている
「不適切にも・・・」ハラスメントと親子世代の時空と社会常識のズレを扱っている

最近見た映画「空気殺人」(韓国)は加湿器用殺菌剤で数千人の被害者が出た実話をもとにしたフィクション映画
製造会社の悪を暴く人権派女性弁護士の法廷もの。利益しか頭にない巨大企業、その弁護士は女性弁護士が尊敬していたベテラン弁護士であった。

「高速道路家族」(韓国)貧困ファミリーが転落していく社会問題提起
高速道SAで寸借詐欺をしてその日暮らしをしている家族、その後夫は警察に逮捕されて、残された身重の妻と二人の子は、どう生きていくのか。

「さびしんぼう」16歳の謎の少女「さびしんぼう」(富田靖子)実は16歳当時の母(藤田弓子)の化身、と主役の高校生(尾身としのり)が名付けた女子高生「さびしんぼう」(富田靖子)の青春ファンタジー
1985年作品で、若い富田靖子(おっさんのパンツ)尾身としのり(鬼平犯科帳)が初々しい。

だめヒモ夫(または同棲?)DVと貧困で売春に身を落す沖縄の17歳の子持ち少女を描いた「遠いところ」カルロヴィヴり国際映画祭出品作品

「雑魚どもよ、大志を抱け」主人公は平凡な小学生(池川侑希弥)、ヤクザな父を持つ隆造、小柄でドモリみんなにバカにされるトカゲ、東大を目指す変わった少年、映画監督を夢見る気弱な少年の5人グループが様々なトラブルに出会う青春ドラマ。
 
「散り椿」岡田准一主演の武士道映画 藩の悪に立ち向かう剣術の達人である側用人(西島秀俊)と。それを助ける脱藩浪士新兵衛(岡田准一)
この二人に愛された武家娘(麻生久美子)、その妹(黒木華)は新兵衛に想いを寄せる。
いずれも印象深い良い映画だった。




韓国映画

2024年03月04日 08時31分33秒 | 映画/ドラマ/アニメ
昨日、衛星放送録画しておいた韓国映画を見た
「高速道路家族」
「半地下・・・」「一日(ハル)」なんかもそうだが、ごく普通の人間模様で一本の優れた映画を作る技術が韓国にはあるようだ。
高速と半地下は、並の暮らしよりかなり苦しい生活者が主人公だが、そのような社会から取り残された家族が強く生きていく、そしてそれが壊れた時の脆さ
日本でも現実に貧富の差が広がり、都会と地方の収入格差や、いつ解雇になるかわからない低収入の派遣労働者、アミューズメント格差、人口問題、高齢化、医療格差も広がりつつある
いずれこのままだと、韓国映画のような題材が地方でいっぱい拾えるようになりそうだ。

投資話に騙されて借金を背負い逃げ回る家族、夫は高速道のSAで寸借詐欺を繰り返して、何とか家族を養っている・・が逮捕され
残された身重の妻と二人の子供は、訳ありの女性の家につれていかれて・・・

日本の少子化が問題視されているが、韓国はさらに上を行く少子化で50年後とかには2000万人台になると言う、北朝鮮がその頃どうなっているかはわからないが、半島もこの50年で様々な問題が出てくるだろう。

韓国ドラマは最近ほとんど見ていない、貧しい家の娘と、金持ちの息子の恋愛にイリイリさせられるワンパターンには飽きた
だが映画は秀作が多い、社会問題に向き合うドラマが面白い
何でもない日常の中のちょっとした問題が映画になる、それを面白くみられる感覚は、薄味のお吸い物を頂くような感覚である
後味がいつまも脳裏に焼き付いている。




佳境に入って来た連ドラ

2024年02月19日 08時12分48秒 | 映画/ドラマ/アニメ
 連ドラも5話、6話と進んで来て、その良し悪しもはっきりした来た
ここに来て心に響くドラマは「光る君へ」「さよならマエストロ」「春になれば」「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか」この4本になった。
ここに見てはいないがブロ友のwadaさん推しの「不適切にもほどがある」を加えて最初から見ようと思う

今回の4つはどれも感動的な回であった。
「さよなら」と「おっさん」は内容もそっくりで「あらら」と思った
「さよなら」では別居中の妻が、音楽以外にまったく無神経なマエストロの夫に離婚を突き付けて自分の好きな道をどれだけ犠牲にしてきたかと責めたてる
これに愛想が尽きた息子と娘は家出、夫と妻はもともと別居で家族バラバラ
しかし両親の真を見た子供たちが戻り、妻も家に戻って何年振りかで家族4人が同じ食卓を囲んだ。
「おっさん」でも家族の為に自分がやりたかったことを全て犠牲にしてきた妻がついに爆発、それを理解したバラバラ家族の夫、娘、息子が団結して妻に感謝の形を示す、そして久しぶりに家族4人で食卓を囲む。
あまりにも似た内容でびっくりした。

もともと「おっさん」は近年取り上げられ法制化も進みだした、ジェンダーやハラスメントをテーマにしたドラマ。
原田泰造演じる主人公沖田は会社の室長で若い部下を管理している。
そもそも管理している意識が現代ではハラスメント、私より設定は若い主人公であるが、我々と同じ昭和世代の人間そのもの。
「男だろ」「男のくせに」「お茶を出すのは女の子の仕事だろ」「おれたちが若い時はなあ」「家庭より仕事の方が大事だろ」などを連発
ところが家に帰れば息子は(彼から見て)女装趣味で引きこもりの(情けない)状況、かといって強く言えず、気遣いは人一倍、腫れものに触るよう
娘はバイトで生活しながら趣味の漫画作家に没頭、しかし食えるまではいかずあきらめの境地、昭和男丸出しの父を軽蔑している。
そんな男がだんだん現代の世界に慣れてきて、ハラスメント、ジェンダーに理解を示していていくと言うドラマ。


だが、「男と女問題」「パワハラ、セクハラ問題」よりもっと身近なところに、今までの歴史の中でも本人しかわからない、周りは家族でもわからない問題が隠れていた。
今回は、そこに焦点を当てたのは作者の金星だったと思う。
ジェンダー差別の被害者である息子も、社会の底辺であがく娘も自分は被害者だと思っているが、そんな立場の人間さえ加害者だったと言う回だった。


それは母親の立場、沖田の妻(富田靖子)はいつも笑顔の良妻賢母だ
昼間は弁当屋でパートタイマー、終われば家に帰って家族の食事作り、唯一楽しみはテレビで大ファンの若手グループを見ること。
彼女が作った弁当が賞をもらった、そして家族にも食べてもらおうと張り切って帰宅、作って待っているが夫は帰りに一杯やって帰ってこない、娘も遅い
閉じこもりの息子は毎日一人部屋食で誰も部屋に入れない
ドアの前の廊下に置いた食事はそのままほったらかし、ようやく夫と娘は帰ってきて食卓に着くがおしゃべりに夢中、食べてはいるが料理そっちのけ
妻は「おいしい」の一言をもらいたくて二人の顔を見るが、二人は料理も見ないで口に運んでいるだけ
たまりかねて「どう」と言えば、夫は「うん 冷えているね」と言うだけついに妻はこれまでの我慢が爆発する
そしてようやく妻の陰の力を認識した三人は協力して、妻がファンのグループのコンサートのレアなチケットを贈るために努力する、そしてゲット
その夜、閉じこもりの息子も食卓について何年かぶりに家族全員で夕食を楽しむのだった。


この回の妻の気持ちは、たまに自信作を家族に提供する私も毎回同じ気持ちでいるからよくわかった、心の中で拍手した
と同時に、私や息子は女房殿が作る夕飯に、そういう気持ちでいたか?とも考えさせられた。