もう20年くらい前になるかな
中学校の同級会が行われて、100人くらい集まったんだけど、その中にK子がいた
格別の付き合いも無かったが、家は近くて親同士が昔からの友達だったからほんのりとした関係ではあった。
K子は、私とは正反対で頭が良く、美人で、積極的な人だった
高校を卒業して東京に出た。 大学へ行ったのかどうかは知らないが音信は不通になった、別に友達関係でもなかったし、意識もしてなかったが
その日の同級会で、彼女が私のところにやって来た、突然だった
なぜ私のところに来たのかは全くわからない、今もわからない
そして、久しぶりね”みたいなことを言って話し出した、それは唐突で脈絡もない話
「高校生のときね、あなたのお父さんが家に遊びに来てね、私を見て言ったのよ『**ちゃん、美人になったなあ、うちの倅の嫁になってくれたらいいのになあ』だって」
なんで突然、そんなことを言ったのだろう? それしか言わなかった
そして別の席に行ってしまった
きっと懐かしかったから話して見たかったのだろう、だけど思い出話といえば、二人の間にはそれしかなかったのだから、きっとそうだろう。
彼女は東京に出て役者になった、そこそこステージにも立っていると同級生から聞いた
でも一流にはなれなかった、でも当時40代か50前か? 役者は続けていた
それだけの話。
役者って「縫いぐるみ」かなと思う
魂が入ってない縫いぐるみ、そこに役が回ってくると縫いぐるみに魂が入って動き出す、そして芝居(映画)が終わると、魂が抜けて、また縫いぐるみに戻る
同じ体に別の魂が宿る、その都度、縫いぐるみの個性が代わる
先日、役者の西田敏行さんが亡くなった
私は、西田の芝居は臭くてあまり好きではなかった、わざとらしさが匂ってくるのだ、セリフ回しが大げさと言うのか・・・
大河「おんな太閤記」での秀吉もセリフが浮いて見えたし、「八重の桜」での西郷頼母役も、どうかなと思った。
もっとも秀吉役は老後の秀吉は迫力があって良かった、私にはどうやら「良い人」を演じる時にわざとらしさが鼻に突くようだ
その点では「釣りバカ」ははまり役だ、決して良いばかりの人ではない浜ちゃん
仕事をさぼっては釣り三昧、社長さえも弟子にして言いたい放題
上司をコケにするし、怖いものなし
どうも西田さんは、こういう役が合っていた気がする。
役とは縫いぐるみに入れる魂の事だ
「光るきみへ」の藤式部の父役の岸谷五朗さんは、今の役は気弱で真面目な役人、うまく演じている
だが「北の国から 遺言」では荒っぽい漁師(唐十郎)の息子役で、(内田有紀)の別居夫の危ない男を演じた
あのときの芝居は、「光るきみ」の役と同じ人物とは思えない怖い顔に見えた
役者は偉いと思う、本当の自分を本人はわかっているのだろうか?
一年中、自分ではない架空の人物を演じていて(人気俳優はいくつもかけもち)自分をたもてるものなのか
渥美清さんは本当にすごいと思う、私が選ぶとしたらベスト3の一人だ
渥美清か寅さんか、どっちが縫いぐるみで、どっちが魂かわからないほど一体化している、こうなればもはや名人なんだろうな。
泣いてたまるか - 渥美清