中世戦国期の三県を見る
この三県では越後の長尾氏(後に関東管領職を上杉氏に譲られて上杉氏となる上杉謙信の家)が圧倒的な強さを誇っている。
親の長尾為景の時から富山県へ度々攻め込んでいるが、謙信の代になって富山県をほぼ制圧して、能登、加賀まで攻め込んで織田信長と対決して大勝利を収めた。
長尾家と長野県(信州)は領土拡大野心がない謙信は攻め込むことが無かった、また北信の豪族の中には長尾家と親戚もあった。
長野県の豪族と長尾家は共存していたが、甲州から野心家の武田信玄が北上して、たちまち中信、北信を攻略した。
ついに善光寺平まで攻め込み、北信濃の豪族を圧迫した、彼らは越後の長尾氏を頼って来たので、親分肌の謙信(当時は長尾景虎などの名)は兵を挙げて川中島で、信玄相手に5度の合戦を行った。
謙信にしても、本拠地春日山(上越市)と川中島はわずか50kmほどしか離れていないから油断すればたちまち被害を被る、黙っているわけにはいかなかった。
二人の力は全国トップクラスで、まだ若手で売り出し中だった織田信長は、経験豊富で最強のこの二人を特に恐れた。
両雄の力は均衡して勝負はつかぬまま10年過ぎて痛み分けとなった。
しかし上杉の勢力範囲は長野市までで、上田の村上義清は、武田の属将となった真田氏に領地を追われ、越後根小屋城で謙信の客将となった。
北信濃は武田信玄の領地となった。
信玄に奪われる前の信州は、力が均衡した豪族が盆地ごとに勢力を張ってまとまることが無かったし、卓越した強者が出るわけでもなかった
結局、そこを武田信玄に付け込まれたのだった。
一方、越中(富山)も格別の強者が居なかったため、小競り合いがあるだけだったが、信濃から飛騨に攻め込んだ武田氏の影響で、上杉と武田の代理戦争が行われるようになった、その後、織田家も進出してきて本能寺の変のあと、豊臣秀吉が進出、謙信の養子上杉景勝のとき秀吉に臣従して優遇され五大老となる。
その後、江戸時代になると越中は加賀の前田家100万石の分領となり明治を迎える。
越後、信濃は大きいため1万石から15万石くらいの小藩に分けられた。
越後高田には一時、家康の六男松平忠輝が六十数万石で入城したが、舅の伊達政宗と謀反を起こす疑いをもたれて、改易され流罪となって生涯を終えた。
高田城址は大きな堀や石垣が残り、三重櫓が作られて春の夜桜、夏の蓮の名所となって観光名所となっている。
5kmほど北には謙信の春日山城址も観光スポットとして公開されている。
中世から江戸期の交通を考えると、富山と新潟は県境の親不知の15kmが天下の難所で一般的な交通を妨げていた。
上杉が越中を攻めるにしても、船に兵を乗せて宮崎海岸あたりに上陸するのがもっとも効率的であっただろう。
一方、上越市から北信長野市方面へは隣町の感覚で簡単に行くことが出来た
また妙高新井からは東の峠を越えて、信州飯山へ抜ける一般的な山道が幾筋もあり上杉の軍用道路にも使われた。
富山から長野へ行くには、いったん飛騨の高山近くまで南下してから東に向かう野麦峠など峠越えが一般的だった。
この道は上越地方からの塩の道街道に対して、越中の塩ぶり街道と呼ばれている。
因みに正月魚は、新潟県は鮭文化、富山県はぶり文化である。
新潟県上越地方と富山県新川地方は関東と関西の分け目である
しかし分野ごとに微妙なずれがある
フォッサマグナの西端は姫川が境で富山県側の地層は古く1~3億年前、上越側のフォッサマグナは1~2千万年前の新しい地層と言われる。
生活圏では富山県が関西圏、新潟県上越、中越地区は関東圏と一般的に考えられているが、言語的にはフォッサマグナ地層と同じく姫川から西(富山方面)が関西系のイントネーションで尻上がり、姫川の東は平らなイントネーションで関東系アクセントで話す。
電気の50Hz,60Hzの切り替え地点は更に5kmほど東に移り、糸魚川市内の中間地点にある。
そして地形編で書いたように、海の中の地層はさらに数km東、早川沖が境界で西は深い富山湾、東は佐渡から東北地方につながる遠浅の海となっている。
北信濃は関東系のアクセントだが固有の方言がある、まあ方言は上越地方も富山県も固有であるが。
「~やね」「~がよ」「~がけぇ?」「~やわ」「~(な)んよ」富山
「~づら」「~せ」「~じぃ」「~だに」「~らぁ」長野安曇郡
「おまん」「~だっちゃ」「~だすけ」「~だわね」
「(そい)やんさぁ」西頸城
「~だってばさ」「~だがね」「~せった」「~だしぇ~ね」
「~だしけ」「そいがん」「~ねかね」上越
20kmほどの隣町同士だが、山や谷が交流を遮るとこれだけ異なる。平らな広域地区(関東平野など)ではここまで違わないだろう。
隣町の方言の違い
「あんたとこのとおちゃん元気やね 風邪もひかんがけぇ? 丈夫なんやね」
「そいがやね 長生きするやろ」
富山新川郡
「おまんたとおちゃ元気だねか 風邪もひかんやん? 丈夫なんねぇ」
「そいやんだっちゃ 長生きしるわね」
新潟西頚城郡
おまけ新潟弁
「おめさんってとおちゃん、ふっとつ元気らねか 風邪もひかねぇろ? 丈夫なんらて」
「そ~なんさ 長生きするこって」