林野庁は昨年11月から245T剤撤去に向けた調査を国土防災技術株式会社(東京)に委託し、佐賀吉野ヶ里町、熊本宇土市、高知四万十市、岐阜下呂市の4ヵ所で実施していた。その報告書が林野庁のホームページに公開されていた。と言っても、簡単に確認できたわけではない。この度、北九大の原田氏から資料(pdf)を送って頂いたのでわかったが、そうでなければ絶対に辿り着けないようなところに置いてある。この期に及んでという感じだが、林野庁の体質は相変わらずのようだ。
報告書から脊振山中・吉野ヶ里町の埋設状況が明らかになった。佐賀森林管理署からの聞き取りによるもので、埋設時期は昭和46年12月。埋設状況は縦2m、横2.5m、深さ2mの穴を2m間隔で2ヶ所堀り、ビニールを敷いた上にコンクリート塊にした245T剤945kgを置き、その上に約1mの覆土が敷設されている。また、地上に設置されたフェンス沿いに難透水層(深さ3m)のところまで鋼矢板が差し込まれている。さらに、フェンス内の深さ50㎝のところに、一面アルミ板が敷かれ、覆土が敷設されている。それなりに保管されているように思えるが、埋設量は規定(埋設地1ヵ所300kg)の3倍以上だから恐ろしい。
また、平成29年度と令和2年度に土壌調査と水質調査が実施されていた。土壌はフェンスから1m離れた2地点(九州自然道側と作業道側)で深さ5mの部分。水質は西約134m、北東約220m、北北東約302mの沢3地点。いずれもダイオキシンを含む245T剤は検出されておらず、土壌や水質への影響はないと佐賀森林管理署は結論付けている。しかし、深さ3mのところまで鋼矢板が差し込まれているにもかかわらず、それより深い5mのところで調査をしているのはどういう理由なのか?これで安心しろと言われても難しい。
報告書には試料採取や掘削処理方法も記されていた。埋設物の成分を把握するため、それぞれ埋設物の中心部からボーリングにより試料を採取して分析する。また、掘削対象範囲を確定するための土壌調査も実施される。場所は埋設箇所の周囲4方向で埋設物の中心深度及び底部より深さ50㎝~1mのところ。この時、はじめて本当の汚染状況がわかるのではないだろうか。なお、鋼矢板壁は地中に残置される。
着手時期は今のところ不明だが、試料採取から掘削工に伴う仮設テント設置まで1ヵ月以上要するとあるので、一連の作業が終了するまでには2~3ヵ月はかかるのではないだろうか。ということで、また新たな動きがあれば報告したい。
(下に資料を置いていますので、詳細はそちらでご確認下さい)
吉野ヶ里町の埋設状況想定図(以下、林野庁報告書より)
かつて、この2ヶ所が大きく陥没していた
掘削処理計画
フェンス内の全てが処理物となるが、鋼矢板壁のみ地中に残置される(図の右側に九州自然歩道がある)
試料採取および掘削処理フロー
着手はいつになるか、、
報告書が公開されたからか、地元放送局が連日、245T剤埋設問題を取り上げている。RKBは4月7日放送の「山中に埋まる枯れ葉剤~福岡と佐賀の県境で取材」の続きを5月12日に放送した。佐賀森林営林署の点検に同行し、営林署の言い分を伝えていた。また、TNCは5月13日、「豪雨崩壊なら流出も…山林に埋設された猛毒除草剤」と題し、土砂崩れで245T剤が流出する恐れがあると伝えていた。取材に同行された原田氏は、埋設から13年間調査が行われず、コンクリートも劣化していることから、すでに流出している可能性もあると指摘されていた。いずれの番組も上記の埋設状況を説明していたが、調査が5mの深さで行われていたことは触れていない。
《参考資料》
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