脊振山中に埋設されている猛毒除草剤(245T剤)問題について。林野庁による現地調査の実態が明らかになった。これは、福岡県議会高瀬菜穂子議員が、林野庁に提出を求めた(と思われる)資料から明らかになったもので、今回、その資料を北九州市立大学の原田和明氏からいただいた。(ご本人了解のもとで公表)
資料というのは、佐賀森林管理署が、毎月2回、245T剤の埋設現場で行っている調査の結果を記したもの、いわゆる点検表である。これがまるでメーカーの出荷点検表のような代物で、看板やフェンスの状態を調査したものばかり。茶番としか言いようがない。これで安全だと言っているから恐ろしい。点検表から佐賀森林管理署の調査が外からの目視であることが明らかになったが、これでは異変など見抜けないだろう。尤も、異変があった時にはもう手遅れだろうが。
問題は、この点検表を基に安全宣言をしている福岡県小川知事、それを了とする福岡市である。点検表には、水源地までの距離(3.5km)が記されているが、これはおかしい。水源地とは南畑ダムのことだろうが、埋設場所からおよそ1kmのところには、五ヶ山ダムがある。ダムはまだ運用されていないが、満水位状態を保つために水は放流されている。すでに市民の生活用水として水は使用されているのだから、水源地までの距離は約1kmということになる。福岡市は、ダムや周辺河川の水質検査を行っているが、市の担当者は「(245T剤が)絶対に流出しないという確証はない」と漏らしている。安全だという保障はないのだ。
林野庁は廃棄に際し、除草剤(245T剤)の10倍程度に当たる量の土と混ぜ、セメントで固めてコンクリート塊にした上で、水源地から離れた地中に1ヵ所300kg以内の分量で埋めるように通達を出している。しかし、脊振山中の埋設地は、このどちらにも違反している。つまり、違反状態だからきちんと調査ができないのだろう。昨年の九州北部豪雨や西日本豪雨のような土砂災害が、この埋設地で起きればどのようなことになるか。あえて語る必要はないだろう。
佐賀県森林管理署の点検結果表 これで安全?
猛毒除草剤(245T剤)埋設地と五ヶ山ダムの位置関係 距離はおよそ1km
※「2・4・5-T剤」(245T剤)とは‥‥ベトナム戦争で米軍が使った枯葉剤の成分の一つで、化学物質「2・4-D」と混合することで枯葉剤になる。不純物として含まれるダイオキシンには奇形を生じさせる強い毒性がある。
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