先週、西日本新聞「あなたの特命取材班ニュース」に驚くべき記事が掲載されていた。それはベトナム戦争で使用された枯葉剤の主要成分(猛毒なダイオキシンを含む)除草剤(245T)が、脊振山中に埋設されているというもの。埋設地は、坂本峠あたりの国有林の一角。九州自然歩道を蛤岳へ向かっていくとあるらしい。登山道から『立ち入り禁止 2・4・5-T剤を埋没してありますので囲い内の立ち入りや土石等の採取をしないで下さい』の看板が見えるという。記事でも指摘されているが、近くには五ヶ山ダムがある。(下地図参照)
福岡市民の水道水確保のためと、1000億円もの税金を投じてつくられた五ヶ山ダム。その近くにとんでもないものが埋められていた。当然、環境への影響が心配になる。福岡市は、ダムや周辺河川の水質検査を続けており、異常はないといっているが、市担当者は「絶対に流出しないという確証はない」と漏らしている。一方、吉野ヶ里町と那珂川町は、毎年、245Tの撤去を求める要望書を林野庁に出しているという。事実を知りながら、五ヶ山ダム建設を承諾したということなのか。
林野庁は1960年代後半、スギなどの成長を阻む雑草を枯らすため、245Tを国有林に散布。しかし、奇形を生じさせる恐れがあると問題になったため、71年4月に使用中止を決定。同11月に地中に埋設するよう全国の営林署に指示。埋設地は、九州だけで20カ所。驚くほどの数だが、今もほとんどがそのままの状態(コンクリートに固められた状態)だという。(下表参照)
岡山大の阪田憲次名誉教授(コンクリート工学)は「コンクリートは引っ張る力に弱く、水を通す性質がある。地中で亀裂が入ったり、土の中の有機物と化学変化を起こして劣化したりする可能性がある。雨水が染み込んで有害物質が周辺に出る恐れもある」と指摘している。また、ダイオキシンに詳しい長山淳哉・元九州大准教授(環境科学)は「ダイオキシンの有害性は長年にわたって残り、分解する微生物も自然環境にほとんどいない。周囲に流出し、食物連鎖を通じて濃縮されれば、人間の健康被害につながりかねない。早急に地中を掘り起こし、調査すべき」と警告している。
五ケ山ダムの水は、今後、福岡市民150万人の飲料用水として使用されるのだから、猛毒な除草剤など早急に撤去すべきだろう。今回、情報を提供された北九州市立大国際環境工学部職員の原田和明さんは、西日本豪雨で周囲に有害物質が漏れていないか心配し、西日本新聞に取材を依頼されている。林野庁も危険性を感じたのか、西日本豪雨後、現地へ確認に行っている。このままでいいわけがない。
それにしても、あの登山道はこれまで何度も通っているが、全く気付かなかった。昔から看板はあったのだろうか。とにかく、近いうちに現地へ行ってみようと思う。来週あたり、詳しい報告ができれば。
除草剤埋設地 ※9月2日現地確認をしました。詳しくはこちらで。
登山道のすぐそばに立入禁止の看板(写真は西日本新聞より)
世界遺産の屋久島の数がすごすぎる(※は撤去済み)
《関連記事》
・ 九州20ヵ所に猛毒埋設 ベトナム戦争の枯れ葉剤成分 専門家「漏出の恐れも」 地元に不安(西日本新聞 2018.8.23)
30年以上前から設置されていたのですね。
登山時、いかに見てなかったかということになるわけですが、
よもやこのような物騒なものが眠っていたとは思いもしません。
今さらですが、驚くばかりです。
「ダイオキシン類問題の第二番目として、現実の緊急問題の脊振の埋設問題についてお尋ねします。
福岡都市圏の水源地に近い佐賀営林署管内の山中に、猛毒ダイオキシンを含む2・4・5T系除草剤約945キログラムが、昭和46年───1971年に土とまぜてコンクリートで固められ、地下1.5メートルに埋めてあります。この問題については、我が党は調査団を組み、現地調査を行い、国会でも取り上げてまいりました。県議会においては榊議員が九二年十二月県議会で、国への働きかけや県の取り組みについてただしました。年二回、目視点検のみならず、水質や土壌の検査を住民に公表するよう求めたところであります。この問題について、埋設以来四半世紀を超す中で、現地は草などに覆われ、一・五メートルの高さのフェンスも周辺の登山道から既に見えにくくなっています。二カ所に分けて埋設されてありますが、どちらも中央部のくぼみが大きくなっています。特に中央部の落ち込みが四年前から大きくなっており、地中への水の浸透で除草剤はぼろぼろになっているのではないかと心配であります。」
早速、福岡県議会議事録を調べてみました。
確かに2ヵ所とあります。あと1ヵ所はどうなったのでしょう。
さらに、麻生知事の答弁に対する入江議員の発言が気になります。
「私も毎年現地を調査していって、毎年毎年穴が大きくなっていっております。そういった実態を見たときに、異常なし、異常なしがこの四年間続いているわけでございます。異常なしと言いながら、私どもが目視した限りにおいても穴は大きくなり、深くなり、そしてまたやぶはますます厳しくなっている…」と
これは確かに見逃せませんね。