Go toトラベルをめぐり、いろいろと問題が生じている。先月18日、日本医師会の中川会長は記者会見で、新型コロナウイルスの感染が急拡大していることについて、政府の旅行支援策であるGo toトラベルが「きっかけになったことは間違いない」との見解を示した。これに、福岡市の高島市長が即座に反応していた。(最近、高島市長はツイッターをしないので見逃していたが)
先月19日、高島市長は公式ブログに「Go Toトラベルとコロナの相関関係」を掲載していた。内容は、Go toトラベルと福岡市の感染者数に相関関係はないというもの。Go To トラベルの開始時期、宿泊施設の稼働指数と新型コロナの陽性者数のグラフを作ってみたら関係性は見られなかったという。このブログは5,000近くシェアーされており、反響の大きさが窺える。本当に関係はないのか。
グラフを見ると、一見、関係はなさそうに見える。ところが、感染症の国際的研究者でもある、神戸大学の岩田教授は、高島市長の見解を「間違った分析」と一刀両断。なぜなら、ある介入が行われたときの効果の発動にはタイムラグが存在するからだと。感染者が感染者数にカウントされるまでには、感染→潜伏期間→発症→受診と検査→検査結果→報告と数週間かかる。さらに、Go toの効果もタイムラグが生じる。だから、高島市長の作ったグラフでは正しい解釈はできないという。その上で、岩田教授は、ある時系列における感染者数の変化が、Go toという介入でどう変わったか(変わっていなかったか)を検証するには、もっと専門的な解析が必要になるとしている。
今月1日の高島市長の記者会見を聞く限り、グラフは市が把握している数字を使って作成し、検証することなく公表したものと思われる。本人は事実を公表したと話している。確かに数字は間違いないものだろうが、それで相関関係がないとは言い切れないだろう。高島市長が「関係はない」とSNSで発信すれば、安心して動く人もいるだろう。発言は慎重にしてほしいもの。それにしても、荒瀬副市長(女性)は医師だが、助言はしなかったのだろうか?(というか、相談はしないだろうな)
現在、福岡市の感染者数は他都市のように爆発的ではないが、じわじわ増えはじめている。それこそ、タイムラグを考慮すれば、これから急激に増えるかもしれない。まだまだ気は抜けない。
高島市長が作ったとされるグラフ (高島市長公式ブログより)
12月1日の定例会見 「Go toトラベルとコロナの相関関係はなかった」と説明する高島市長(福岡チャンネルより)
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・「GoToと感染拡大相関ない」 福岡市長 定例会見で見解(2020.12.1 西日本新聞)
岩田教授の「Go Toのエビデンスがない」みたいな話が詭弁だ、という話が書かれている。
・Go Toと感染者増 「主要な原因」との証拠はなくても(2020.11.27 読売新聞・ヨミドクター)