「カイロス」とは、ギリシア語で「機会(チャンス)」を意味する男性神だそうです。その風貌には特徴があって、前髪はふさふさと長いけれど、後頭部が禿げた美少年として表されています。
「チャンスの神様には前髪しかない」ので、「好機はすぐに捉えなければ、過ぎ去ってからでは捉えることはできない」という意味なのだそうです。
このチャンスの神様のことを、作家の阿刀田高さんが1996年に新聞に書いていました。当時、私は大変印象深く感じ、記事を切り取って保管し、今も折に触れて見ています。
「チャンスの神様は、向こうから走ってくるのだが(そしてなぜか裸で走って来るらしいのだが)こちらは待ち構えていて、『えぃっ』とばかり、その前髪をつかまなければいけない。「待ってくれ」追いかけて、うしろからつかまえようとしても、そこはそれ、つるつるだから手が滑って捕らえることができない」
「チャンスがやってきたら絶対につかまえてやるぞ。その準備があってこそ、はじめてチャンスや幸運をわがものにすることができる。」
この考え方は、キャリア理論のクランボルツの「プランドハプスタンス(計画された偶発性)」に通じるところがあります。
偶然の出来事をただ待つのではなく、それを意図的に生み出すように準備し、積極的に行動する。そうすることにより、自らのキャリアを創る機会を増やすことができるという考え方です。
チャンスをつかむことも、創り出すことも、意識的に準備することが大事だということです。
私たちは、目の前のことに追われてしまうと、つい中長期の視点で考えることを怠ってしまいがちです。
しかし、目の前の準備にばかりに追われてしまうと、仮にチャンスの神様が近づいてきてくれたとしても、見過ごすことになってしまいます。
チャンスの神様をすかさずとらえられるように、常日頃から用意周到に心がけていたいものです。
ところで、皆さんはどのようなチャンスの神様をつかまえたいですか?
(写真はwikipediaより)
(人材育成社)