共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

性格が垣間見える自筆譜〜ドビュッシー《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》

2024年02月23日 18時10分18秒 | 音楽
今日は令和の天長節です。今年は4年ぶりに制限なしの皇居一般参賀も開催されていたのですが、霙混じりの冷たい雨だったことと折り紙コマの下準備のために出かけるのを断念しました。

今日もひたすら折り紙を折っていたのですが、その間にいろいろと音楽を聴いていました。今日はそんな中から《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》をとりあげてみます。



《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》(Danse sacrée et Danse profane)は、



クロード・ドビュッシー(1862〜1918)が1904年に作曲したハープ独奏と弦楽合奏のための作品です。この作品は、



ピアノメーカーとして有名なプレイエル社が開発した半音階ハープ(クロマティック・ハープ)のために作曲されました。

従来のハープが全音階に調律されて半音階にペダル操作を必要としたのに対し、半音階ハープは弦の数を増やしてクロスさせることで半音階の演奏を容易にしようとしたもので、



こんな大型のものまで製造されていました。発明当時、この半音階ハープは注目を集め、1900年にはブリュッセル王立音楽院でこの楽器の講座が開かれました。

プレイエル社は、この楽器の普及のため1904年に音楽院でのコンクールのための楽曲をドビュッシーに依頼し、それを受けてドビュッシーは、同年4月から5月にかけてこの作品を作曲しました。ただし、ドビュッシー自身は半音階ハープを特に気に入ったわけでなく、むしろペダル・ハープの方が優れていると考えていたようです(今日ではこの作品もペダル・ハープで演奏されています)。

結局この半音階ハープは奏法の煩雑さや楽器の重さなどがネックとなって普及には至りませんでした。現在ではエラール社の開発したダブル・アクション方式のペダル・ハープが、改良を重ねて用いられています。

この作品は2つの部分から出来ていて、『神聖な舞曲』は



調性の曖昧な弦楽合奏に導かれてハープが典雅なメロディを奏でます。一方、『世俗的な舞曲』は



ワルツのような軽やかな曲調で、最後にはハープによる印象的なアルペジオが華やかに演奏されます。

自筆譜を見ると、かなり繊細な線で書かれていることが分かります。そんな中にも、ドビュッシーが到達した円熟味のようなものを感じることができます。

そんなわけで、今日はドビュッシーの《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》をお聴きいただきたいと思います。かつて一世を風靡し、今では姿を消してしまった半音階ハープの存在を現代に伝える貴重な作品をお楽しみください。



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