今日は二十四節気のひとつ『小寒』です。本郭な冬の始まりを意味する日ですが、日中は日差しの温もりを感じられる陽気となっていました。
そんな中、まだまだ冬休み真っ最中の私は今のうちに行っておきたいところがいくつかあるので、学校が始まってしまう前に出かけておくことにしました。今日やって来たのは六本木の東京ミッドタウンの中にあるサントリー美術館で、こちらでは現在
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《抒情と荘厳〜京都・智積院の名宝》展が開催されています。
智積院は京都の東山七条に位置するお寺で、真言宗智山派の總本山です。末寺には成田山新勝寺や川崎大師平間寺などがあります。
こちらのお寺には、国宝に指定された有名な障壁画があります。それが、当時のナンバーワン絵師派閥の狩野派を脅かすほどの存在だった長谷川等伯(1539〜1610)と子息長谷川久蔵(1568〜1593)を筆頭とする長谷川派が手掛けた作品です。
今回の展覧会では、その中でも名品の誉れ高い『桜図』と『楓図』を始めとする障壁画が寺外で鑑賞できる貴重な機会となっています。私自身もお寺で観たのは何十年も前のことなので、楽しみにしていました。
弘法大師を始めとした尊像が居並ぶ中を進むと、先ず目に飛び込んでくるのが
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『松に秋草図(国宝)』です。金地を背景にして雄々しく立つ松の木の根本にはムクゲやススキ、萩、菊などの秋草の花が咲いていて、ダイナミックな中にも華やかな印象を受けます。
その先にあるのが
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等伯の子息久蔵が中心となって手掛けたとされる『桜図』です。
金地に映える八重桜の花は牡蠣殻を砕いた胡粉(ごふん)を幾層にも厚く盛り上げて描かれていて、近くは勿論、ある程度離れて観ていても立体感を感じることができます。桜の根本にはスミレやタンポポといった可憐な野の花が咲いていて、豪奢な中にも軽やさが演出されています。
久蔵は長谷川派最大のライバル狩野派の筆頭絵師狩野永徳(1543〜1590)亡き後、長谷川派を担う次世代リーダーとして大いに期待されていましたが、この『桜図』を描いた翌年に26歳という若さで突然亡くなってしまいました。あまりにも急に、しかも狩野派にとってあまりにも都合よく他界してしまったこともあってか、一時は狩野派による暗殺工作による死ではないかと、まことしやかに噂されたほどでした。
その『桜図』の隣りに展示されているのが
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等伯が中心となって手掛けたとされる『楓図』です。
久蔵の急死によって、等伯は失意のどん底に叩き落されることとなりましたが、その悲しみを乗り越えるかのように等伯はこの『楓図』の製作に没頭したといいます。無骨なゴツゴツした幹の楓から伸びる枝には紅葉している中にもまだ青い葉が見受けられますが、これはもしかしたら若くして世を去ってしまった子息久蔵を思って描いたものなのかも知れません。
この他にも
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長谷川派の手による襖絵『雪松図(国宝)』など、様々な障壁画も展示されていました。本来ならば智積院にはもっと沢山の長谷川派の障壁画があったのですが、昭和27年に発生した火災によって『枇杷図』を始めとしたいくつかの作品が灰燼に帰してしまったのは残念でなりません。
他にも様々な法具や経典や書、
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鎌倉時代に描かれた『孔雀明王図』などが展示されていましたが、個人的に気になったのが
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『蓮舟(れんしゅう)観音図』という仏画です。この仏画は江戸時代に描かれたものですが、画面左側の落款(らっかん)の上の署名をよく見ると
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「内大臣綱吉筆」と書いてあります。
内大臣綱吉…?
そう、実はこの観音様は徳川幕府第5代将軍
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徳川綱吉(1646〜1709)が自ら描いたものだったのです!綱吉は幕府お抱えの狩野派の絵師から絵の手解きを受けていたと言いますが、この仏画ひとつを観てもなかなかの画力の持ち主であったことがしのばれるのです。
別会場では智積院に関する動画が流され、訪れた人たちが思い思いに見入っていました。その会場の入口には
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『楓図』のパネルが置かれていて、自由に撮影できるようになっていました。
この展覧会は今月22日(日)まで、東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館で開かれています。京都に行かなくても等伯の名作が観賞できる貴重な機会となっていますので、興味をもたれた方は足を運んでみてはいかがでしょうか。