今日も日中は暑くなりました。こう暑さが続くと、逆に涼しくなった時に体調を崩しそうで心配になってきます。
さて今日は、オペレッタの大家ジャック・オッフェンバックの祥月命日です。
ジャック・オッフェンバック(1819〜1880)はドイツに生まれフランスで活躍(後に帰化)した作曲家、チェリストです。音楽と喜劇との融合を果たした『オペレッタ』の原型を作ったといわれています。
オッフェンバックの作品と言えば、何と言ってもオペレッタ《天国と地獄》でしょう。特に序曲はフレンチカンカンのダンスミュージックとしても有名です。
が…
ひねくれ者のヴィオラ弾きとしては、そんなメジャーどころは紹介しません。今回紹介するのは命日に因んで、最晩年に書かれて未完に終わったオペラ《ホフマン物語》です。
《ホフマン物語》は主人公の詩人ホフマンが、歌う人形のオランピア、瀕死の歌姫アントニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタと次々に恋に落ちるものの何れも破綻する自身の失恋話を語り、最後には現在想いを寄せている歌姫ステラへの恋にも破れるという、何とも救いの無い内容のオペラです。未完のまま作曲家が死去してしまったこともあって数多くの版があり、謎の多い作品とされています。
《ホフマン物語》の中には様々な名曲があります。中でもジュリエッタとの恋の場面で歌われる『ホフマンの舟歌』がとりわけ有名ですが、これは作曲者唯一のドイツ語オペラ《ラインの妖精》からの流用です。
そして舟歌に匹敵するくらいの名曲と言われているのが、人形のオランピアが歌うアリア『森の小鳥は憧れを歌う』です。
精巧な人形が歌うアリアということで、お人形としてのカクカクした演技をしながら完璧なコロラトゥーラ・ソプラノの超絶技巧を駆使して歌い上げなければならないという難曲でもあります。
それ故、今までにオランピアを歌ったのはロバータ・ピアーズやエディタ・グルベローヴァといった当代随一といわれた一流のソプラノ歌手たちです。そんな中で、今日はルチアーナ・セッラがメトロポリタン歌劇場で歌った動画を転載してみました。
さもさも実の娘のようにホフマンや客たちに紹介する怪しげなコッペリウスや、時々ゼンマイ切れをおこしてへたり込んでしまうオランピアのネジを必死に巻き上げるスパランツィーニの慌てぶりといったオランピアの周囲の人間模様と合わせて、ルチアーナ・セッラによる絶唱をお楽しみください。