今日も猛暑日一歩手前くらいの暑さとなりました。誰に言われなくてもこまめに水分補給していないと、さすがに具合が悪くなりそうです…。
ところで、今日7月25日は
モーツァルト(1756〜1791)の《交響曲第40番ト短調》が完成した日です。
《交響曲第40番ト短調》は、モーツァルトの交響曲作品の中でも有名なもののひとつです。モーツァルトの全交響曲のうち短調のものはこの作品と第25番の2曲しかなく、しかもその両方がト短調という調性であるため、この第40番を「大ト短調」、もう一方の交響曲第25番を「小ト短調」と呼ぶことがあります。
大ト短調は1788年7月25日にウィーンで完成された交響曲で、同じ年に作曲された第39番変ホ長調、第41番ハ長調『ジュピター』とともに「後期3大交響曲」と呼ばれています。ただ、3曲とも作曲の目的や初演の正確な日時は不明で、モーツァルトはこれらの曲の演奏を聴かずに世を去ったのではないかと推測されていました。
ところが、初演に関する記録は残されていないものの、実はこの大ト短調だけはモーツァルトの生前に演奏されていたのでは…と推測されています。というのも、初稿のほかに2本のクラリネットを含んだ木管のパートを追加した改訂版のスコアが残されていて、モーツァルトが実際に演奏する目的なしにわざわざ曲を改訂するとは考えにくいからなのです(現在の演奏では主にこの改訂版が用いられることが多いようです)。
また、第2楽章の一部には差し替え用の楽譜も残されています。この楽譜は1789年2月以前に書かれたものであることが分かっているので、恐らく1788年の演奏会のために作られたのではないかと考えられています。
モーツァルトは翌1789年にはベルリンに、1790年にはフランクフルトに演奏旅行に行っています。その時にモーツァルトは自分の交響曲の楽譜を携えていったことは確実視されていて、その作品がこの大ト短調なのではないか…といわれています。
その他にも
「1791年4月16日と17日、ウィーンの音楽家協会の演奏会でモーツァルト氏の新しい『大交響曲』がアントニオ・サリエリの指揮で演奏された」
という史料が残っています。この『大交響曲』というのが、恐らくこの大ト短調のことを指すものだろう…とも推測されていますが、モーツァルトの因縁のライバルともいわれているサリエリの指揮で演奏されていたとしたら、何とも感慨深いものです。
私はこの曲を何度も演奏したことがありますが、何度演奏しても難しいと感じています。何しろ冒頭のさざ波のような音型や第2楽章のテーマの出だしが共にヴィオラから始まるので、結構な緊張感なのです。
それでも、さすがに『後期3大交響曲』と呼ばれるだけあって、演奏する度にいい曲だな…とも思っています。憂いを帯びた主題が魅力的な第1楽章、のどかな8分音符の重なり合いと時折現れる32分音符のきびきびとした下降音型が印象的な第2楽章、変拍子のような鋭いリズムの主部と柔和な表情の中間部が対称的な第3楽章、疾走感の中で思いもよらない方向へ次から次へとジェットコースターのように目まぐるしく転調していく第4楽章、どこをとっても素晴らしい作品であることに間違いはありません。
そんなわけで、今日はモーツァルトの名作である《交響曲第40番ト短調》をお聴きいただきたいと思います。もしかしたらモーツァルト自身も聴けたのかも知れない晩年の大曲の緻密さを、楽譜動画と共にお楽しみください。