今日は五節句のひとつ『重陽の節句』です。陽の数字である『九』が重なるこの日は、五節句の中でも特に縁起が良いとされています。
『重陽の節句』は別名『菊の節句』や『栗の節句」とも呼ばれています。この日は菊の花を浮かべた菊酒を飲んだり、栗を使ったごちそうを食べたりして、家族で無病息災・長寿延命を祈ります。
ただ、旧暦の九月とは違って現在の九月では菊も栗もちょっと時期的に早いので、揃えることは難しくなっています。なので、昨年もやりましたが今年も音楽の『菊』をとりあげてみようと思います。
音楽で『菊』といえば、
イタリアを代表する作曲家のひとりジャコモ・プッチーニ(1858〜1924)作曲の弦楽四重奏曲『菊』です。弦楽四重奏曲『菊』嬰ハ短調は、オペラ作曲家プッチーニの数少ない室内楽曲のひとつです。
プッチーニが自身の出世作となった歌劇《マノン・レスコー》に取り組み始めた頃である1890年1月に、プッチーニのパトロンでもあったサヴォイア家のアオスタ公アメデオ1世が急逝しました。プッチーニはアオスタ公追悼のために、一晩でこの曲を書きあげたと伝えられています。
弦楽四重奏のために書かれていますが、コントラバスを加えた弦楽合奏による演奏もしばしば行われています。コントラバスが加わることで、弦楽四重奏では薄くなりがちな中間部に低音を充実させることができるので、成立の経緯もあってバーバーの《弦楽のためのアダージョ》とともに故人の追悼に使われることがあります。
そんなわけで、重陽の節句の今日はプッチーニの《菊》を弦楽合奏版でお聴きいただきたいと思います。モルドバ室内管弦楽団の演奏で、《マノン・レスコー》の世界観にも通ずる重厚な音楽をお楽しみください。