昨日何となく落ち着いていた気温も、今朝の日の出とともにグングン上昇してきました。やはりこの酷暑からは、なかなか解放されないようです…。
ところで、今日8月17日はジャズアルバム《Kind of Blue》がリリースされた日です。
《Kind of Blue》は、
ジャズ・トランペッター、マイルス・デイヴィス(1926〜1991)によるスタジオ・アルバムです。1959年3月と4月の2度にわたって録音、同年8月17日にリリースされたこのアルバムはマイルスの代表作であり、モダン・ジャズ屈指の傑作とされているアルバムでもあります。
マイルスのバンドは、『マイルストーンズ(1958年)』でアルト・サックスのキャノンボール・アダレイ(1928〜1975)を加えて
トランペット:マイルス・デイヴィス
テナー・サックス:ジョン・コルトレーン
アルト・サックス:キャノンボール・アダレイ
ピアノ:ウィントン・ケリー
ベース:ポール・チェンバース
ドラム:ジミー・コブ
の6人編成となり、従前のハード・バップ・スタイルに留まらない「モード・ジャズ」と呼ばれる新たな演奏手法に挑むようになっていきました。1958年中期からは短期間ながらピアニストのビル・エヴァンス(1929〜1980)も加え、更にモード・ジャズを発展させていきました。
後にビル・エヴァンスやジョン・コルトレーン(1926〜1967)も、マイルスの後を追うようにモード・ジャズを世に広めていきました。マイルス・ディヴィス本人は、この時期はエヴァンスの影響からラヴェルなどのクラシックの作曲家を研究していて、このアルバムにもそうした要素がどこかに入っていると語っています。
《Kind of Blue》はマイルスの最高傑作として、なおかつ、彼のその後の音楽の前衛性を強めていくことになった要因として、深い意味を見出すものとなりました。このアルバムは、これ以前のニューオリンズの古き良きジャズと、これ以後の世代のジャズの橋渡しを果たした、ジャズ史においてきわめて重要な、聴き逃がせない作品の一つといえるものとなっています。
そんなアルバム《Kind of Blue》の中から、今日は一曲目に収録されている『So What』をご紹介しようと思います。
『So What』は、当時の音楽としては非常に画期的な楽曲構成だったといえる作品です。ポール・チェンバースの温かみのあるベースの響きにのせて展開していき、ジャズの形式としてその後に普遍的なものになったコール・アンド・レスポンスも息が合っています。
このアルバムに参加しているマイルスをはじめとしたジャズの巨匠たちは、アドリブだけで曲の最後まで持っていく力量、技術、そして知見を兼ね備えています。これは空前絶後の職人技と言えるものですが、正に息つくところのない非の打ち所のない流麗なサウンドで、たおやかでありながら全体的な音はビシッと引き締まっています。
中盤ではコルトレーンのサックスとデイヴィスのトランペットの掛け合いが、自らの腕前を競うように高らかに奏でられるのが聴き所です。そして、最後はチェンバースのベースとジミー・コブのドラムの音だけで静かに終わっていきます。
そんなわけで、今日はマイルス・デイヴィスのアルバム《Kind of Blue》から『So What』をお聴きいただきたいと思います。残暑の夜に、モード・ジャズを完成させた金字塔的アルバムの冒頭を飾る名曲をお楽しみください。