暑い・・・・・・・・。
昨晩、十数日ぶりに厚木市に雨が降りました。それによって一時的にですが寝苦しさから解放されていました。しかし一夜明けてしまえば、そんなものは夢幻の如く失せにけり…で、今日も厳しい暑さとなりました。
私は子どもの頃から、とにかく夏が嫌いです。それなのに、ここ数年の猛暑にあてられて、益々嫌いになっています。
実は、夏が嫌いなのは
イタリアバロックの巨匠ヴィヴァルディも同じだったようです。それが如実に表れているのが、ヴァイオリン協奏曲集《四季》の『夏』です。
《四季》の楽譜には、ソネットという短い詩が添えられています。そして『夏』に添えられたソネットは
『夏』L'ESTATE
◎第1楽章
太陽が照り付ける厳しい季節に
Sotto dura Stggion dal Sole accesa
人も羊の群れもぐったりし、松の幹も燃えるように熱い
Langue l'huom, langue 'l gregge ed arde il Pino;
よく通る声でカッコーが鳴き出すと それに合わせて
Scioglie il Cucco la Voce, e tosto intesa
キジバトとゴシキヒワが歌い出す
Canta la Tortorella e 'l gardelino
心地よくわたるそよ風を
Zeffiro dolce Spira, ma' contesa
突然立った北風が押しのけ
Muove Borea improviso al Suo vicino;
ひと荒れ来そうな嵐におびえる
E piange il Pastorel, perche Sospesa
羊飼いの子は不運に涙を流す
Teme fiera borasca, e 'l suo destino;
◎第2楽章
疲れきった体に休息を与えないのは
Toglie alle membra lasse il Suo riposo
稲光と激しい雷鳴への不安
Il timore de' lampi, e tuoni fieri
それにうるさく飛び回るハエや羽虫の群れ!
E de mosche, e mossoni il Stuol furioso!
◎第3楽章
ああ何ということか、不安は的中し
Ah che pur troppo i Suo timor Son veri
天は雷を轟かせ、閃光を放ち、雹交じりの雨は
Tuona e fulmina il Ciel e grandinoso
小麦やその他の穀物の穂をへし折る Tronca il capo alle Spiche e a' grani alteri.
という、何の救いもない内容のソネットなのです。
『春』では季節の到来を喜んで鳴き交わしていたカッコウやゴシキヒワたちが、『夏』の第1楽章では暑さから逃れようと必死になりながら鳴いています。そこに『春』の時のような喜びはなく、生きぬくことへの必死さのようなものすら感じさせられます。
そして第2楽章で轟いていた遠雷は、第3楽章で雹混じりの嵐となって襲いかかります。もしかしてヴィヴァルディは、後の世にゲリラ豪雨なるものが発生することを予期していたのでしょうか(んなわけあるかいっ…)。
そんなわけで(どんなわけぢゃ?)、今日はヴィヴァルディの『夏』をお聴きいただきたいと思います。佐藤俊介氏率いるネーデルラント・バッハ・ソサエティの演奏で、暑苦しくも凄まじいヴィヴァルディの『夏』感をお楽しみください。