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美術館

 塾を月・火と休みにして、私にしては年に1度か2度しかない3連休にした。その初日、一年前に若冲展に行ったのを思い出して、今年も美術館に行こうと柄にもないことを思った。新聞でモディリアーニ展が開かれているのを見たのを思い出して、行ってみようかと妻にお伺いを立てた。すると、「私は松坂屋美術館で開かれているトトロの絵のほうがいい」という返事だったので、どちらにしようと悩むよりも一度に両方行こうと、生まれて初めて美術館のはしごをしようと出かけてみた。モディリアーニ展は名古屋市美術館で開かれているので、松坂屋に車を止めて、先に松坂屋美術館を訪れてから歩いて名古屋市美術館まで行くことにした。
 

 まずは、「男鹿和雄展」。長くジブリ作品で背景を担当してきた「ジブリの絵職人」で、「トトロの森を描いた人」らしい。妻はえらく感心していたが、私は正直さほど面白くなかった。確かに細部まで丁寧に描かれていて、絵としては素晴らしい作品ばかりだ。ただ、あまりにきれい過ぎて、これだけたくさんの作品が並べられていると、きれいな風景を写した写真を見ているようで、途中から見る気が失せてしまった。楽しみにしていた妻には悪い気がしたが、私としてはわざわざ出向くまでもない展覧会かな、などと生意気な感想を持ってしまった。
 連休中だけに行楽地に出かける人が多くて、名古屋の中心は人出が少ないかなと思っていたが、かなりの人であふれていた。松坂屋美術館もアニメオタクのような若者の姿も多く見られて、彼らのコメントを漏れ聞くのも面白かった。同じように名古屋市美術館も大勢の人が訪れていた。モディリアーニは、昔よく聞いたハイ・ファイ・セットの
 ♪モディリアニの女、哀しい眼をして~♪
という歌いだしで始まる「美術館」という曲以来、ろくにその作品を見たことがないのに、私には妙に近しい画家であるように思ってきた。細面で鼻が長く描かれた独特の肖像画は、一目見ればモディリアーニの作品だと分かるものだが、その作品にじかに触れるのが、なぜか懐かしい人に会いに行くような思いで美術館に入った。


 モディリアーニのことなどほとんど知らなかった私だが、この展覧会でいくつかのことを知った。イタリアのトスカーナ地方の生まれであること、彫刻家を志していたこと、独特の画風はプリミティブ・アートの影響を受けたものであること、わずか36年の人生しか歩まなかったこと・・、かなり濃密な一生を駆け抜けた画家だったようだ。夭逝の詩人や画家に共通な破天荒な生活を送ったようだが、そんな自堕落さなど垣間見せない珠玉の作品を残すところに、豊かな天賦の才を感じずにはいられない。どだい才能が違うのだと、ダラダラ年月を重ねてきただけの己を恥ずかしく思ったりもするが、自分はこんな生き方しかできなかったのだから繰り言を重ねても仕方ない、などと開き直るしかない・・。


 いくつかの展示作品の中で私が一番いいと思ったのは、この「おさげ髪の少女」だ。現在、東京の国立博物館でもモディリアーニ展が開催されているようだが、いったいどうして展覧会が重なったりしたのだろう。私としては名古屋の展示作品だけでも十分堪能できたのだが、できればこんな事態は避けてほしかった・・。
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