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琴欧洲(2)

 今年はじめに琴欧洲についての記事を書いた。大相撲が盛況になるためには、体力に恵まれた大関・琴欧洲がもっと力を発揮しなければいけない、などと檄を飛ばす内容だったように思うが、今5月場所はやっとその思いが叶うかも、という淡い期待を持てるようになった。何と、初日から8連勝であっという間に勝ち越しを決め、最短でカド番を脱出した。それどころか万が一にも優勝を狙える位置にいるというのが嬉しくて、思わず記事にしてみようと思い立った。
 琴欧洲が序盤連勝しても、すぐに負けがこみ始め、14日目か千秋楽に何とか勝ち越しを決める・・、そんな場所がずっと続いていた。今場所が、大関昇進15場所目というのに、昇進後は低迷を続け、10勝が最高でカド番が早くも2場所目などと、ファンならずとも眉をひそめる成績しか収めていない。大関に昇進した頃の破竹の勢いは影を潜め、ただただ勝ちを欲しがる余りに相撲がずいぶん小さくなっていた。あれだけ立派な体格をしていれば、何もせずとも組み止めてぐっとまわしを引きさえすれば、たいていの相手は動けなくなってしまうのに、と彼の取り組みを見るたびに歯がゆく思ってきた。体に見合った大きな相撲をとるように心掛ければ、あれこれ考えなくとも勝ちは転がり込んでくる、そんな思いをしながら彼の相撲を見てきた。
 それが今場所は前に出る相撲が目立ち、危なげない相撲をとっている。深夜にNHKでダイジェスト放送される相撲中継を時々見ながら、少しずつ琴欧州の相撲に期待が膨らんできた。7日目の稀勢の里戦はあいにく見ることができなかったが、新聞によれば立会いに変わって左上手を取って一気に寄り切った相撲だったようで、評判はあまりよくなかった。それでも今の琴欧州には白星が何よりの薬だろうと、カド番脱出まであと1勝と迫った8日目の大関魁皇戦を楽しみにしていた。魁皇はこれまで4勝3敗と今ひとつ調子に乗れない成績であるものの、やはり地力は横綱に匹敵するものをもっているだけに、この対戦は琴欧洲の好調さが本物かどうかを見るには格好の取り組みだった。
 立会い、一度待ったをした後、立った瞬間に右上手を引いて魁皇をがっちり組みとめた琴欧洲は、間髪いれずに一気に寄り切った、完勝だ。あまりのあっけなさに私は少々戸惑ったほどだが、今場所のお互いの調子がそのまま現れたような結果だった。
 

 さあ、これから5月場所は後半を迎える。果たして琴欧洲はどれだけ勝ち星を重ねることができるだろう、そして優勝までも望めるだろうか?私なりに占ってみた。
 まず第一に問題なのは、琴欧洲の心のもちようだろう。勝ち越して大関という地位をひとまず確保したことに満足してしまったなら、多くは望めない。最終的にはいつものように10勝前後で終わってしまうだろう。もしそうなったら、琴欧洲はそれだけの力士だと思って今後注目するのはやめよう。だが、彼が現状に満足せず、横綱を目指すだけの心意気を持っていたならば、これからの取り組みはかなり楽しみだ。
 その際、どうしたって難敵になるのは白鵬、朝青龍の両横綱である。中日まで白鵬はほぼ完璧な内容できているだけに彼を倒すのは相当厳しい。勿論琴欧洲には白鵬との二大横綱になって欲しいとの私の願望があるだけに、何とか倒して欲しいライバルではあるが、今場所そこまで望むのは少しばかり酷かもしれない。だが、もう一人の横綱朝青龍ならなんとか倒せるのではないだろうか。初日に稀勢の里に力負けして以来白星を連ねているが、私の見るところ付け入る隙は十分にあるように思う。他の力士に取りこぼしをすることなく、両横綱との対戦まで全勝を続けていければ、ひょっとしたらひょっとする、そんな気がしなくもない。
 新鋭の台頭によって再び活気を取り戻しつつある大相撲、今場所は琴欧洲がその存在を大きくアピールする絶好の機会だ。ぜひとも終盤まで優勝争いの中心にいて欲しい。
 
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