この日は担当スタッフが体調不良で休んでいたため写真がなく、このレポートも音源を元に書いておりますので、情報不足の件は何卒ご容赦ください。
桜が終わったら、ツバメがやって来ましたね…ということで、高科先生はいつも授業の始めに季節の移り変わりのことを話されます。
都会に住んでいても、家の周りを気をつけて観察していると、自然を感じることがよくあります。
忙しい毎日のなかでも、季節の花々や小さな生き物、空のすがたを見て「もののあはれ」を感じることは、文章を書くための栄養になるのではないでしょうか。
さて、この日もまずテキスト『60歳からの文章入門』(近藤勝重 著/幻冬舎新書)から、P133〜150のところを見ていきました。
●読者を惹きつける村上春樹の文章術
・若々しい文体の秘密
・村上流 性的比喩表現
・読者を眠らせないための2つのコツ
・「会話」が生むドラマ
多くの人から支持されている世界のハルキ氏ではありますが、高科先生は今に至るまであまりハマったことがないそうで、ノーベル賞が獲れないことにも納得できるとか。。
文章を書くときに比喩表現を使うことは必要なことではありますが、たとえば同人誌をやっている人とかの文章にはとても多く使われていて、目障りになることもあります。
比喩表現は、自分が思っている(書きたい)ことをより伝わりやすくする方法の一つです。ココは重要なことなので次回の授業でもう少し深く掘り下げてくださるそうですよ。
村上氏によれば「小説は、①情景描写 ②心理描写 ③会話 で成り立っている。これらをどうブレンドしていくのが作家の腕の見せどころ」だそうです。
高科先生も会話を大切にして作品を書いておられますが、会話文だけではお話が成立しないので、地の文をはさむことで会話がより生きてくるよう心がけておられるとか。
長谷川集平が『はせがわくんきらいや』(すばる書房1976、復活ドットコム2003)で注目された後、関西弁の会話文で進む作品が流行したこともありましたが、関西弁をそのまま使うのは下品になるので、徐々に廃れていった経緯もあったそうです。
●「気づき/ひらめき」脳トレ問題集
・良い文章の条件
・津村記久子『まぬけなこよみ』を読む
このコースでは何度も取り上げていますが、良い文章の条件として ①自分にしか書けないことを ②誰が読んでもわかるように書く ことです。
これは、『高校生のための文章読本』(梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博 編/ちくま学芸文庫)に出てくる言葉ですが、確かにその通りですが、それだけで良いのか?と先生は懐疑的…この2つに、誰も書いていない独自の気づきやふと頭をかすめたひらめきのある文章を含まれる、と書いてあります。
テキストでは参考文献として津村記久子『まぬけなこよみ』が紹介されていますが、先生はお気に入りの平民金子氏が朝日新聞夕刊に連載していたコラム『神戸の、その向こう』の最終回「ぶらぶらメメント・モリ」を取り上げ、皆で見ていきました。最後はちょっとしんみり。平民さん、お疲れさまでした。
その後は井上ひさし氏の『にほん語観察ノート』(中央公論)から「わからないけど」の箇所を。氏曰く、これはうんと敬意の度合いが低い半敬語法であろうとのこと。
相手に自分の意見を言う時に、緩衝材を入れて相手との関係を壊さないようにしているのではないか、というのです。
関西人の「しらんけど」は、もう少し会話の「間」を大事にするための言葉である意味合いが強くなります。
語尾をちょっと上げる半疑問形も、今では会話の緩衝材として皆意識せずに使っていますね。
さて、休憩をはさんではまたタコについてのお話。今日はついに土屋光太郎氏の『イカ・タコ ガイドブック』(阪急コミュニケーションズ)の中にあるコラムを見ていきました。
イカとタコの違いについて専門的なことが書いてあるのですが…なぜ先生がここまで何度もタコのことを取り上げるかというと、つまり、お話を書くうえで大切なのはリアルとファンタジーの加減だというのです。
子どもの本には動物が出てくるものが多いですが、動物にはその種類独自のフォルムや生態があります。それを無視してお話を作るより、ある程度リアルを取り入れた方が共感を得やすくなります。
たとえば、リスはどんぐりを頬袋に入れて運びます。頬にどんぐりをいっぱい頬張ったリスの顔は、ポコポコ膨れて見えます。この可愛らしい習性を生かしたお話と、効率的に台車に載せて運ぶようなリスの話では、全く違う性質のものになってしまいます。
旭山動物園で飼育員をしていた経歴を持つ絵本作家のあべ弘士は、動物の生態から離れたものは描かないと決めているそうです。
フィクションといえども下調べは大事です。「何か書く時は、必ず手元に辞書を」と高科先生は口癖のようにおっしゃっていますが、内容によっては今回の『イカ・タコ ガイドブック』のような、資料になる本も携えておいた方が良いでしょう。(もちろんその都度パソコン等で調べても良いわけですが)
さて、「わらう」「たつ」など動詞をテーマにした課題が続いていますが、今回は「とぶ」(飛ぶ・跳ぶ・翔ぶ)をテーマにした作品を書いてください。
とんだこと、とんでみたいこと、とぶ時のこと…etc. 「とぶ」にまつわる文章なら、創作でもエッセイでも、スタイルもボリュームも自由です。
できれば本日習った “ 村上春樹説 ” のように、①状況描写 ②心理描写 ③会話 をうまくブレンドして構成することを試しても良いかも…
比喩表現については次回もう少し深く学ぶ予定ですので、その後で実践してみてくださいね。
よろしくお願いいたします。