久しぶりに高科先生が文章クラスの教室に戻って来られました!
今期は土曜日の夜になり、生徒さんの数も昨年度より増えて、先生も嬉しそうです。
早速、最近の先生の日常についてのお話が始まりました。
最近先生が夜明け前に釣りに出かけると、明け方金星が一際明るく輝いているそうです。
夕方には土星と木星が、そして南の空にはオリオン座がかかって、冬空を彩っています。
先生が話されると、冬の野外で寒さに鼻の奥をツンとさせながら、星空を眺めている様を思い浮かべることができました。
そして、長田弘のエッセイ『小道の収集』から「最初の質問」を見ていきました。
結びの一文「あなたは言葉を信じていますか」を受けて、
「言葉の力が弱くなっている現代に、言葉の力を信じたい」と先生はおっしゃいます。
そして、先生の尊敬する二人の学者の話をされました。
一人は京大名誉教授で2010年に亡くなった森毅さん、もう一人は関大名誉教授で2009年に亡くなった鈴木祥蔵さん。
鈴木さんがいつも引用しておられたフランスのルイ・アラゴンの詩の一節に
「学ぶとは 誠実を胸に刻むこと 教えるとは 共に希望を語ること」というのがあるそうです。
教育とは上から下へものではなく、共に誠実を胸に刻んで希望を語るものです。
このクラスはそのような感じで進めていきましょうということで、今期の授業が始まりました。
まず初めに、先生が今ハマっている漫画を紹介してくれました。
須藤真澄の『どこか遠くの話をしよう』(KADOKAWA)は、
モノの言葉が分かる少女が、記憶喪失の外国人男性と出会って心を通わせるところから始まる壮大なファンタジーです。
作者は他の作品でも情景や心情をていねいに描いていて、それは文章を書く上でも重要なことだそうです。
この漫画から、人はどんな風にして言葉を発するようになったのか?という流れになり
他の人に何かを伝える方法として、最初は話し言葉しかなかったが、書き言葉が生まれ
それを何かに記すことによって側に居なくなくても、知らない人同士でも言葉を共有できるようになり
最初は単語だけだったのが、やがて文章になり、会話もできるようになった。
未来と現在を繋ぐのは言葉である、という話になりました。
今期、授業に使用する教科書は池上彰・竹内政明の対談『書く力 - 私たちはこうして文章を磨いた』(朝日新書)です。
まずはみんなで少しずつ読み進めました。
読む時の約束事として「、」で息継ぎをし、「。」でもう少し長めのブレイクを入れます。
そうすると文章のリズムが理解できて、書き手の文体が見えてくるのです。
初回の授業で見ていったところは、以下の3章です。
・まずはテーマを決める〜テーマと自分をつなぐブリッジを見つける①
・「身近な話」には魅力がある〜テーマと自分をつなぐブリッジを見つける②
・「連想ゲーム」とトレーニング〜テーマと自分をつなぐブリッジを見つける③
うまい文章や面白い話の多くは、話がどこに転がっていくか分からずに興味をそそるものになっています。
まずは「何を書くか」を明確にしましょう。
知らないことは書けないので、自分の身近なことでよく知っていることを書くと良いでしょう。
書き手にとって身近な話でも読み手が知らない話であれば、読み手はそれを面白がります。
小さなエピソードから入って壮大なテーマにつながる話は予想がつかず、魅力的なものになります。
その違う話の間の橋渡しになるもの(ブリッジ)を見つけましょう。
特に書きたいことがない場合でも、何でもいいから書き始めると、自分の考えがまとまってくるので
何か一つでも見えてくれば、それをとっかかりにして話を膨らませることができます。
例えば「三題噺」は、全く別の話を連想ゲームのように結びつけるトレーニングとして有効だそうです。
文章にはよく「起承転結」や歌舞伎でいう「序破急」が必要だと言われますが
ざっくりと「始まり(きっかけ)」「中ほど」「おしまい(締めくくり)」と考えます。
最初に読者の心を掴み、途中興味や好奇心を持続させ、最後でなるほどと思わせるのが上手い文章だとすると
リズムの強弱、聞こえの良し悪しも関係してきますので、「、」「。」の打ち方にも気を付けて
分かりやすい文章を書くことを心がけましょう。
そして、『にほんご』(安野光雅・大岡信・谷川俊太郎・松井直/編集、1979年 福音館書店)を紹介していただきました。
この本は小学1年生の国語の教科書にするべく編纂されたそうですが、実際には一度も採用されたことはないのだとか。
最初「おはよう」という日本語の挨拶から始まり、世界の言語や、手話についてまで言及さてれています。
安野さんの美しい挿絵も素晴らしく、こんな教科書で勉強したら言葉を大切にする子どもに育ちそうですね。
その後は原稿用紙の使い方についてを教わり、それをふまえて書いてみることになりました。
日本語は言葉で遊ぶこと(言葉あそび)ができる言語です。
平安時代くらいから日本人はアナグラム(文字を入れ替えて別の言葉にする)、
アクロスティック(折句:頭の文字を使って文章を作る)、回文(上から読んでも下から読んでも同じ文)を作っていたそうです。
安野光雅(あんのみつまさ)の名前の中にどんな言葉が隠れているか考えた後に
今度は自分の名前の中にある言葉を使って、何でもよいので原稿用紙に文章を書いていきました。
短い時間でしたので、全員が出来上がったわけではありませんが、書けた人から自己紹介を兼ねて発表しました。
「私の名前は○○です」から始まるのに、皆さん全く違う内容と構成で、興味深かったです。
今回のワークショップ 言葉あそび=文章を書くこと、というわけではありませんが
書くことに苦手意識を持たず自分の考えをより深く人に伝えられるように
このコース全16回の授業でいろいろ試して、少しでも身に付いていけば良いなと思います。
よろしくお願いいたします。